第67話その1
【9月26日】
本編(?)開始前に、このテロップが表示される。
つまり、まだ26日から動きがない、と言うべきか。
むしろ、あれだけの出来事が26日に集約しているというべきなのかもしれないが。
『前回の、対電忍はーーー!!』
アニメ版のガンライコウがナレーションを担当……。
これって、まさかのデジャブ?
『ホップ発案により、企業VTuberであるフェア・リアルの特別配信が開始。まさかの展開を生み出します』
『何と、炎上勢力等が配信を見て戦意喪失、もしくは……と言う状態に。これで解決すればよかったんですけどね』
流れている映像はフェア・リアルの配信シーン。
この流れは、まさかの衝撃を受けた視聴者もいるかもしれない。
しかし、この配信に関して言えば……実はVTuber事務所の全面協力で撮影されていたという事実は知らないだろう。
【本作はフィクションですが、忍者構文は実在します】
対電忍のアニメ及び特撮版はフィクションである。一方で、企業VTuber事務所は実在していた。
実名で出ていたのは、全面協力を得ていたからこそ実現したものと言ってもいい。
繰り返すが、VTuber事務所は実在する一方で、この作品の内容自体はフィクション。
完全な架空事件を扱っているのかと言うと、そうでもないのだ。忍者構文は実在するもので、そこはノンフィクションである。
しかし、忍者構文に記載されていたことを完全再現したフィクション、と言うわけでもない。
『それとは別に一連の秋葉原の一件を、何と迷惑配信者がドローンを使って配信していたという事実も判明』
『更に言えば、配信していたのはAIを使用したVTuber……迷惑配信者自身が配信していなかったという事まで……』
『この配信方式って、別の意味でもデジャブを感じるのですが。更に言えば、ダンジョン神もAIアバターだった事実も判明していますし』
ここで使われている映像は、迷惑配信者が配信を行うシーンではあるのだが……彼が撃破されるシーンまでは映されていない。
カットと言うわけではないようだが、何か別の理由がある可能性も否定できないだろう。
『そういえば、皆さん……何かおかしいと思う個所があると思いませんか?』
『前回、はっきりと【秋葉原決戦、遂に決着!!】とか書いちゃっていましたよね?』
『確かに炎上勢力やお気持ち表明勢力と言ったところとは、決着はしたと思います。それは間違いないでしょう』
『しかし、そうした勢力は壊滅したとしても、まだ残っている人物はいくつかいますよね?』
『ホワイトクラッカーと言う人が、ダンジョン神のなりきりか偽者っぽいのを撃退はしたようですが』
映像では、ホワイトクラッカーとダンジョン神を名乗るアバターとのバトルが流れている。
確かに炎上勢力等との戦いは決着したかもしれないが、残っている勢力はガーディアン内でもいくつかいるし……。
『他にも便乗勢力はいくつかいますが、ARゲームが関与していない部分は警察が対処しているでしょうが……』
『とりあえず、残っているのはまだまだあります。ある意味でも、秋葉原決戦の劇場版というか特別編、もしくはディレクターズカットとか……』
『その辺りと思いつつ、今回のエピソードを見ていただければ間違いはないかと』
ガンライコウの方も色々と複雑だが、伏線は回収されつつも、引き続き本編を見てほしい、と。
『ガラハッド周りは、アニメ版と特撮版では違いがありますし、自分が言うのもアニメ版のネタバレになっちゃいますよね?』
『選定の剣に関しては……特撮版独自設定ではないのは間違いないと思いますが、スタンバンカーの設定周りも違いますからねぇ』
ここで流れたのは、先ほどは流れなかった迷惑配信者を撃破したガラハッドのシーンだ。
それに加え、ガンライコウは選定の剣に関して多くは語らない。はぐらかしている等の事情ではなく、あくまでもネタバレに配慮して言わないだけだ。
彼女はテレビアニメ版のガンライコウだ。確かに特撮版も演者は同じだが……設定は異なるだろう。
『あとは、蒼影と言うか、月坂ハルカの目撃した忍者ロボット。あれも特撮版経由だと、アニメ版の直球ネタバレ踏みますからねぇ……』
『ああいう形で中途半端にざっくり終わったのは、そういう事情です。特撮版だけで進めたり、アニメ版だけで進めていれば……こういう流れにはならなかったとは思いますが』
次に流れたのは、蒼影に乗った月坂ハルカのシーンである。ある意味でも断片的に本編映像が使われていた。
『それでは、本編の方をどうぞ!』
尺を若干取ったようだが、オープニングトークが終わる。
『それこそまさか、まさかの展開だよ』
ビスマルクの目の前に姿を見せた人物は、ある意味でもヒャクニチソウを思わせるような忍者スーツの人物。
前回のエンディングテーマが流れていたシーンでもあった。つまり、今回はあのシーンからの続き、という事にもなるだろう。
ビスマルクの方はノイズもいくつか発生しているので、今の『外装』は限界の様子。
その中で、彼女が放ったもの、それはCGの苦無だった。つまり、ARゲームで使われるような武器だろうか。
『ビスマルク、いい加減正体を見せたらどうだ? その姿は、元々ホワイトクラッカーの代役をするために取っている外装なのだろう?』
忍者スーツの人物は、投げた苦無をビスマルクのARガジェットに命中させた。
明らかに、この人物はビスマルクに向かって投げたのは事実だが……急所を狙ったわけでもない。
おそらくは、弾き飛ばされるのを想定していたのである。
【本作はフィクションですが、忍者構文は実在します】
このシーンで、まさかのテロップだった。つまり、先ほどの……。
更に言えば、このシーンは特殊な演出が行われており、下段ではキャストテロップが表示されている。
一部メンバーのみのテロップで、メインキャラだけにも思えるだろう。
一体、どういう意図の演出なのか?
『あえて黙っているのであれば、それでもいい。こちらとしては……』
忍者スーツの人物が展開したビームブレードを構えるのだが、それを見た別の炎上勢力がビスマルクに襲い掛かる。
向こうも想定していなかったような挙動を見ている所からすると、あの炎上勢力の正体は……。
(世界は変わるべきなんだ。そのためにも……!?)
突如出てきた炎上勢力に対しビスマルクが苦戦、ある意味でも炎上勢力のアバターに不意打ちをされそうになっていた。
バトルシーンも流れており、その場面でもクレジットは未だに流れている状態である。
そして、ある人物のクレジットが表示された、次の瞬間……。
『ビスマルク、あなた、まさか……?』
炎上勢力を撃破しつつ、姿を見せたのは蒼影である。
しかも、そこには月坂ハルカが搭乗しているおまけつきだ。
このシーンで、表示されている演者はデンドロビウムの演者でもある。つまり……。
「何となく、アバターのシステム自体、察していたみたいだけど……」
ビスマルクの方は顔に若干のノイズが発生しており、もしかするとビスマルク自身もアバターだったのか……と。
アバターと言うよりは『ヴァーチャルレインボーファンタジー』において言及された、AR映像で作られた着ぐるみ……そのアバター版と言えるだろう。
アバターの耐久力も限界らしく、ノイズの消滅と共に……。
「名前は、もう少し考えるべきだったかな」
次の瞬間には先ほどまでの男性声が、女性声になっており……更に言えば、その顔もどこかで見覚えのあるような顔が現れる。
彼女は、しれっと今回の友情出演と言うわけではない。すでに、前回の配信の段階で名前自体はクレジットされていた人物だ。
その人物とは、あの作品のビスマルクを担当している声優でもあったのである。
彼女自身、別の特撮番組経由で声優デビューをしているので、元々のデビュー作品は特撮だが、アニメなどの声優活動もしている、と言うべきか。
【ビスマルクの正体! 決着の向こう側へ】
ここでサブタイトルが表示され、ビスマルクだという事がようやく分かった。
しかし、このビスマルクはどちらかと言うと……。




