第66話その3
『我々は、悪質な炎上行為に関してはNOと言えるようにしなくてはいけません。それは300年前の忍者構文でも言われているのです!』
この配信は様々な人物が目撃しており、反応もさまざまである。
「ガラハッド、貴様、図ったな!」
この配信に関して言えば、動画サイトだけでなく秋葉原の大型ビジョンなどでも放送されており、そちら経由でスタンバンカーは配信の内容を知るのだが……。
その反応は、別の意味でも彼の想定外であった為か、激怒しているようにも思える。
「こちらも、ある意味でイレギュラーが起きた……と思っている所なんですよ!」
イレギュラーの所までは冷静だったガラハッドも、その後からは目つきが変化する。
彼としても、フェア・リアルの行動は想定外と思っているのだ。SNS炎上勢力を無力化するという意味では、まぁ想定内だろう。
しかし、そのやり方はガーディアン経由ではなく表の顔でもある企業系VTuberとして……そこに関しては彼も考えつかなかったのだ。
「この選定の剣……それに選ばれたのは、この私だ。私を差し置いて、ここまでの事が起こるなんて」
ガラハッドも頭を抱えている。
今まで、全てが上手くいっていると思っていた一連の忍者構文のネットミーム、それがこうもたやすく冷めていく、と言う意味でも。
なお、こちらのガラハッドはガーディアン草加支部のメンバーではあるが、その一方で独自勢力と言う複雑な事情を持つ。
ある意味でも特撮版とアニメ版で設定が決定的に異なる個所、と言うべきか。
「それは選定の剣などではない。全ては黒幕に利用されていた、という事だ」
突如として、この場に姿を見せたのはガーディアン池袋支部のデンドロビウムだった。
一連の炎上勢力も無力化出来た所で、ガラハッドの反応があり、それを受けて駆け付けたのだが……。
「誰かと思えば、デンドロビウムか」
「まさか、あのタイミングで青凪を撃破したお前が……」
「全貌は、おおよそ把握できていたからな。それこそ、ある程度のコンテンツ作品を見ていれば把握出来る位には」
「なるほど。だからこそ、青凪と言うイレギュラーを排除すべきだった、と」
「そこまで知っていれば話が早い。自分はテレビアニメ版のように、日和見するようなことはしないぞ」
「それで結構。テレビアニメ版と特撮版では、何人かの設定などが異なりますからね」
そして、デンドロビウムとスタンバンカーが交戦しようとした、その時だった。
大型ビジョンに流れていたフェア・リアルの配信を聞いて、お互いに動きを止めたのである。
お互いに、その内容を把握し……。
「気が変わった。勝負は、いずれ付ける」
スタンバンカーは姿を消した。一体、どういう変化なのだろうか?
しかし、デンドロビウムには大型ビジョンで流れている内容を見れば、おおよそは把握できる。
いよいよ、忍者構文の一連の事件に幕を下ろそうというのだ。
「ガラハッド、その剣は選定の剣……で、あっているのだな?」
「そういう話ではある。それ以上でも、それ以外でもない」
デンドロビウムは、ガラハッドの持っていた剣に対して、確認をしていた。
おそらく、彼女は選定の剣も知っているし、その正体も……。
(ガラハッド、やはり自分から正体は明かさないつもりか)
デンドロビウムは、秦の黒幕をガラハッドと考えている。
その上で、ガーディアンが水面下で監視をしていた……と。
それならば、彼の動きを泳がせていたのも納得がいく。ただ、監視役が草加支部だったのは気になる所だが……。
『その炎上行為を行わせようとするような闇バイト組織も、全てをガーディアンが把握しています。炎上行為を行う『バズり』狙いのインフルエンサーは、テロリストと同義であることも……300年前から繰り返されているのです!』
フェア・リアル劇場は続き、遂にはバズり狙いのインフルエンサーを闇バイトと切り捨て、更にはその闇バイト組織もすべて把握したとまで言う。
これがフェイクなのかは分からないが、それを聞いて撤退するような人物もいる以上、事実なのは間違いない。
「こうした手段に出るとは……ガーディアンめ!」
レンタルサーバーのビル近辺で戦っているダンジョン神とホワイトクラッカーだが、ダンジョン神の様子が変わったことに、ホワイトクラッカーの方が気づく。
しかし、ダンジョン神を名乗るはずのアバターが、ここまで露骨にガーディアンに対して悪意を持つことがあるだろうか?
テレビアニメ版のダンジョン神でさえ、様々な人物を観察しつつ、敵意を向けたこともあるが……こちらは明らかに名前だけ借りたなりきりアバターかダンジョン神のなりすまし、と言った方が早い。
(ガーディアンが、この配信を?)
ホワイトクラッカーは、別の意味でもその配信内容に困惑をしている。映し出されているのはフェア・リアル一人だけではない。
他にも様々な企業系VTuberが出ており、彼らの発言によって、様々な炎上勢力が降伏をしていたのである。
「しかし、これで君の正体は分かった。AIアバターやAIVTuber、その辺りを考えていたが……」
ホワイトクラッカーが展開したARガジェット、それはまさかの……。
「偽者の自称かみよ、バラバラになるがいい!」
ホワイトクラッカーが振り下ろしたもの、それはARガジェットのチェーンソーだった。
つまり、ダンジョン神は二度だけでなく、三度も……同じパターンで撃破されることになった。
ある意味でも天丼と言えなくもないが……ダンジョン神を名乗ろうとした人物にとっては、お似合いのさいごだろう。
ホワイトクラッカーの目の前にいたダンジョン神を名乗る偽物は、真っ二つとなって消滅する。
そこから別人が現れることもなく、そのまま消滅したので……いわゆるAIVTuberのなりきりだったか、それとも……。
「さて、と。これで秋葉原の方は決着か……?」
ダンジョン神をバラバラにし、消滅したのを確認したホワイトクラッカーだったが、大型ビジョンの方では……。
「ヒーローショーか。まさかの展開だな」
別ルートで炎上勢力等と戦い、他の場所へ向かっていたはずのビスマルクだったが、ダンジョン神の出現で予定は狂い、ガーディアン秋葉原本部の前にまで来ていた。
そして、大型ビジョンで流れるフェア・リアルの配信を見て、別の意味でも驚くしかなかったのだ。
すでにエンディングテーマが流れているので、ここでラストと言う具合だが。
『それこそまさか、まさかの展開だよ』
ビスマルクの目の前に姿を見せた人物は、ある意味でもヒャクニチソウを思わせるような忍者スーツの人物だった。
ノイズが発生しているような個所はなく、アバターと言うわけではないだろう。声の方も女性の声だ。
一方で、ビスマルクの方はノイズもいくつか発生しているので、今の『外装』は限界が来ている、と言うべきかもしれないが。
「貴様、何が言いたい?」
ビスマルクは別の大剣を構えるのだが、その腕もノイズが発生しており、何かが見えかけている状態だ。
一体、これはどういうことなのか?
『ビスマルク、いい加減正体を見せたらどうだ? その姿は、元々ホワイトクラッカーの代役をするために取っている外装なのだろう?』
忍者スーツの人物は、CGで構成された苦無を投げつけ、ビスマルクのARガジェットに命中させた。
厳密に言えば、ビスマルクは苦無を弾き飛ばすためにガジェットを振るったというべきなのだが……。
『次回、アバターシノビブレイカー、対電忍は……』
ナレーションは秋葉原本部の本部長の男性だ。何度も言うが、テレビアニメ版のガンライコウとは違う人物である。
エンディングテーマは引き続き流れており……。
【ビスマルクの真の姿が明らかに!?】
(世界は変わるべきなんだ。そのためにも……!?)
テロップが表示されているシーンでは、ビスマルクが苦戦し、炎上勢力のアバターに不意打ちをされそうになっている。
その、次の瞬間……。
『ビスマルク、あなた、まさか……?』
姿を見せたのは、まさかの蒼影である。しかも、そこにはハルカが搭乗していた。
蒼影の姿は、DX玩具でも再現されていたフルアーマー仕様の蒼影なのだが、どういうことだろうか?
「何となく、アバターのシステム自体、察していたみたいだけど……」
ビスマルクの方は顔に若干のノイズが発生しており、もしかするとビスマルク自身もアバターだったのか……と。
「名前は、もう少し考えるべきだったかな」
そして、次の瞬間には先ほどまでの男性声が、女性声になっており……。
【まだまだ続く、フェア・リアル劇場】
このテロップが表示されているシーンでは、別のVRダンジョンと思わしきシーンが映し出されている。
更に言えば、視聴者的にも、このダンジョンには見覚えがあるだろう。そのダンジョンとは、ダンジョン神のダンジョンだった。
『なるほどね。これが、全ての元凶……』
月城アサギは、飛天雷皇忍将軍に搭乗し、ダンジョン内で探し物をしていたのだ。
それは、ある意味でもフェア・リアルの作戦でもあり……。
【次回:ビスマルクの正体! 決着の向こう側へ】
このテロップが表示されている段階でも、飛天雷皇忍将軍のバトルシーンが流れており、もしや……と言う具合だ。
これが意味するものとは?
【ビスマルクの正体、それは一体……?】
【名前が同じ、別のビスマルクと同一人物なのか?】
提供テロップが別の意味でもメタ発言を展開している。
春日野タロウは別の意味でも『ハッキングオブウォーゲーム』の登場人物であるのだが、ここには該当しない。
その一方で、続編関係もないような作品の登場人物がゲストで登場している展開もあり、まさか……と思う個所がある。
もしかすると、あのビスマルクの正体は……?
【次回もお楽しみに】




