第60話その2
【忍者構文の正体が判明する!?】
【一族が隠し続けていた秘密とは……】
提供の上下にあるスペースでは、上に最初のテロップ、下には次の……と言う具合。
忍者構文の正体が判明するのは衝撃ともいえる。
【『祈羽一族の秘密』】
オープニングと提供テロップ後、そのままサブタイが表示される。
そして、サブタイのバックに表示されているシーンはガーディアン池袋支部だった。
その支部長室で、とある情報をチェックしていたのは池袋支部の支部長、デンドロビウムだったのである。
(この情報が事実だとすれば……)
彼女がパソコン経由で発見したもの、それは忍者構文に関する新情報だった。
フェイクニュースの類かと思われたが、それも違う。しかし、忍者構文は複数あるのだが……。
「読めた。全ては……?」
この記事の内容を確認後、唐突にガーディアン専用のARガジェットからコールが入る。
ガジェットからコールという事は、同じガジェットを所有する支部長からであるのは明らかだ。
『少し、小耳にはさんでおきたいことがある』
コールに出たデンドロビウムも、声の主には驚くしかない。まさかのガーディアン新宿支部の男性支部長だからである。
彼としては、忍者構文は追っているが……目的はそちらではない。あくまでもSNS炎上勢力の根絶が彼の目的だからだ。
そのため、ダンジョン配信に関してもダンジョン配信王決定戦で炎上勢力を一網打尽出来れば……と言う気配だろう。
実際、全てがうまくいった訳ではないものの、炎上勢力はある程度の撃破は出来た。
「こちらは、それどころじゃないの。忍者構文で……」
『その忍者構文絡みとしたらどうする?』
新宿支部長の話を聞いたデンドロビウムは、さすがに黙り込んだ。
一体、彼は何を知っているのか、と。
仮に真相だとしたら、それはそれで重要だろう。
「どういうことなの?」
『こちらも真相は不明だが、忍者構文に関して重大な配信を行う人物がいるらしい。しかも、大手だ』
「大手? それって、いわゆる個人の炎上勢じゃなくて……」
『その通りだ。企業勢のVTuberで忍者構文の配信を行うという人物がいるらしい』
話をしていくうちに、その人物が企業勢のVTuberであることも判明するが、彼女としては疑問が浮かび上がる。
個人勢であれば忍者構文の解説を行う人物も心当たりがあるのだが……企業勢と聞き、別の意味でも言葉が出なくなった。
(企業勢って、何者なの……)
新宿支部長でも誰なのかは掴んでおらず、あくまで企業勢の誰か、とだけ。下手に噂を流しても……という事かもしれないが。
彼女の方でも気になる人物は当たるつもりだが……。
結局、ヒントすら見つけることもできず、数時間が経過する。
午後2時頃、デンドロビウムのARガジェットにコールが入った。
その人物とは、春日部支部のホップである。一体、どういうことか?
『ちょっと大変なことが起きたのよ』
「大変って? こちらも少し忙しいの」
『池袋近辺で炎上勢力による襲撃者の情報があって、それが忍者構文絡みらしいのだけど……』
「忍者構文!? それって、どういうこと?」
情報を調べていたデンドロビウムにとっては、まさかの流れとも言えた。
池袋近辺で襲撃者の目撃情報があり、その目的が忍者構文と言うのである。
何故にピンポイントで忍者構文を狙っているのは分からないが……。
その後、わずか5分弱で目的地に到着するのだが、その場所は何と池袋駅前だった。
すでに複数の炎上勢力と思わしき男性が暴れており、ガーディアンが対処中と言える。
他の支部に救援を要請することはなく、池袋支部のメンバーで対処できるという事なのだが……すでに半数以上は討伐済みだ。
ギャラリーもガーディアンが関係しているという事で、わずかに散見される程度と言うレベル。
後に思わぬ来客と共にギャラリーは増えていくのだが……。
「忍者構文関係の勢力と言う話を聞いているが……」
デンドロビウムが他のメンバーに尋ねるが、応答する人物がいない。現状では対応中……という事なのか?
彼女が周囲を見回しても、それっぽい敵はいない。その上に、アバターが出現していたような情報もなかった。
ただの誤報と言うには、ホップからの情報なのでフェイクとも考えづらい。
ガーディアンのガジェット経由でもセキュリティ強化の関係で、なりすましの悪用もあり得いないだろう。
『炎上勢力を名乗ったなりすましは、すでに警察に引き渡し済み。どうやら、FX投資詐欺とか、その部類みたいね』
デンドロビウムの前に姿を見せたのは、ARメットを装着し、更に言えばARスーツの着ていた渋谷支部の支部長ことリーガルリリーだ。
彼女としても渋谷で類似案件が発生し、そちらの鎮圧をしていた所で池袋でも同時に発生したことで……と言うことらしい。
デンドロビウムも何が何だか……と言う表情だが、リーガルリリーはARメットを装着しているので表情の確認は不能だ。
「じゃあ、あとは……」
次の瞬間だった。何者かの出現したようなSEが鳴り、明らかに魔法的な何かとは違うような人物が姿を見せたのは。
『初めまして、と言った方がいいのかな。むしろ、この姿を見ても知っている人物は少なそうだけど』
周囲とは全く違うような存在、SFチックなスーツにウイングが合体したようなアーマーを装着している人物が、二人の目の前にいる。
しかし、この人物は二人にしか見えないわけではない。他のギャラリーにも姿は見えていたのだ。
更に言えば、この声は女性の声で……リーガルリリーにとっては聞き覚えがある。
(ブラックバッカラ……!)
ノイズの混ざったようなアバターの人物、ノイズ交じりの一部個所にはARスーツは装着されておらず、それこそ部分で肌が見えているようにも思えた。
ただし、それでも素顔は不明であり……メットの関係で表情も読み取れない。
体格を踏まえると女性なのは明らかだが、アバターの彼女にそういった概念があるのか?
リーガルリリーも同じようなものかもしれないが、手で拳を作り、いかにも……と言う行動をしているあたり、そういう事なのだろう。
『忍者構文と言うのがどういうものなのか、それを話している人物に教えてもらおうとしたら……ご覧のありさまだよ』
まさか、この炎上系配信者を全て討伐したのは……ブラックバッカラなのか? 彼女としては情報収集のつもりで、接触を行ったようだが……失敗したらしい。
彼女がアバターという事もあって、いわゆる当たり判定があるかと言われると疑問はある。
ただし、アバターとはいえ、他のガジェットをハッキングしたりすることは可能だろうし、他にも何かしらの手段はあるだろう。
しゃべり方に感情の起伏があるかと言われると、そういったものは感じ取れない。
オリジナルのブラックバッカラは、あの時に……レインボーローズと月坂ハルカに倒されたはずなのだから。
「まさか、あなたが全て……」
『100人いたとして、100人全員を倒したわけではない。まぁ、リーダー格の人物を倒したのは事実だけどね』
「悲劇を繰り返すつもりなの? ブラックバッカラ」
『一連の事件では、死者0人が公式発表だよ。リーダー格の人物も気絶させただけに過ぎない。警察に引き渡す際、怪我をしたかもしれないけどね』
まさかの発言に、デンドロビウムは耳を疑った。あの事件の公式発表ではけが人が最低でも数百人規模、最大で数万人はいるとされていた。
そんな事件だったのに、死者が0人なのは……ガーディアンとしてもいまだに信じられないものである。
いわゆるカバーストーリーを疑う個所もあり、本当は公表できない数人が消されているのでは、と思う個所だってあったのだ。




