第56話その3
後半は実写版のメイキングなのだが、どこかで見覚えのある光景からスタートする。
まさかと言うか、あのエピソードで出てきたARフィールドではないか。一体、どういうことなのか?
「動画をご覧の皆様、初めまして。春日野タロウ役の……」
更に言えば、まさかの展開だった。何と、実写版メイキング動画の進行役がタロウだったのである。
厳密にはタロウ役の俳優だが、いつぞやのテレビアニメ版でやった特別編と同じく、小説ではこうした形をとる……という事と思っていただきたい。
更に言えば、テレビアニメ版でもタロウの声優を担当しており、ある意味でもダブルでタロウを演じているといえるだろうか?
この人物は、タロウ以外にも様々な特撮作品に出演歴があり、デビューから数年と言う経歴なのだが……知名度は高い人物でもある。
メタ的に言えば、実写版のガーディアン秋葉原本部の本部長と共演したことだってあるだろう。
性格に関してはタロウとは若干異なる個所があるような……と言う程度であり、タロウの方はほぼ演技なのかもしれない。
「今、自分がいるのは梅島にあるAR専用の特別スタジオになります。実際にARゲームフィールドとしても運営されているのですが、スタジオも兼ねているのです」
実写版でも出てきていたのだが、その正体はARゲームフィールドも兼ねたAR映像を制作するスタジオだったのだ。
ここでは、その他にもARゲームで使用するガジェットのグラフィック制作を行っており、それが対電忍でも使用されている……と言うことらしい。
アニメ版の足立支部のモデルは、もしかするとここかもしれないが詳細は不明だ。
「今回は、こちらで収録が行われている対電忍のメイキング番組をお送りしようと思います」
そして、メイキング番組が始まる。
あの時に登場したARゲームフィールドが実在しており、更に言えばスタジオにもなっていたとは……予想外ともいえるだろうか?
実写版のロケ地でも使われたのは、こうした縁なのだろう。
確かにクレジットにロケ協力の個所ではなく、別の場所にこのARフィールドがクレジットされていた。
それを踏まえれば、そういう事だったのか……と思う個所は多い。
途中、数分は省略し、メイキングの部分からスタートすることに。
途中はアニメ版でも言及されていたエピソードに関してなので、この辺りはざっくり割愛する。
メイキングと言いつつ、総集編も兼ねているのだろう。
「このスタジオ、かなりすごい構造になっているんですよね」
タロウの目の前にあったのは、ARパルクールで使用される人型のガジェットだった。
これを使用してパルクールフィールドを走っているのは事実だが、これは撮影で使用していたものとは異なるもの。
「これは実際にARパルクールで使用しているガジェットですね。どこかで見覚えがあるような……」
アーマーの各種部分は調整されてはいるものの、今にも動き出しそうな雰囲気がある。
色々な意味でもデザインを見ると、どこかで見覚えが……と思う部分はあるかもしれない。
しかし、見覚えがあるものだとしてもタロウは、あえて黙ることにする。この辺りは諸事情もあるのだろう。
『あのアーマーは事情もあるので、ここでは省略の方向に』
『ナレーションに関しては、この私……本部長がお送りします』
ナレーションの声は、やはりというかガーディアン秋葉原本部の男性本部長である。
しかし、あのアーマーは明らかに飛天雷皇忍将軍と似ているようにも見えたが……?
『ここは、しれっとだがVRダンジョンでも使用していたフィールドだな』
次の場面に登場したのは、巨大なLEDスクリーンがあるスタジオだった。
スクリーンに映し出されているのは、何とダンジョン神のダンジョンである。
まさか、こういう撮影方法で撮影されていたとは……驚きだろう。
なお、これは実写版の撮影方法であり、アニメ版とは異なることに関しては留意されたし。
LEDウォールに映し出されたダンジョン神のダンジョンに関して言えば、実はアニメ版と同じアセットが使われている。
こうした個所でアニメ版と連携を取り、うまい具合にシンクロさせている事こそ、実写とアニメが同時進行し、うまい具合にかみ合うという事なのだろう。
「このLEDウォールを使用した撮影自体は、他の作品でも使われていたのですが……ARガジェット各種も使えるようなスタジオは、現状ではここしかないんですよね」
「それだけ、ARガジェットに関しては運用が色々と大変と言うか、そんな気配もします」
「運用と言っても、ここの場合はARガジェットの貸し出しも容易と言うか……」
ARガジェットで言えば、草加市のようなレンタルも存在するようなケースもあれば、こうしたケースもある。
このガジェット自体、様々な意味でもオーバーテクノロジーの塊なので、仕方がないと言えば仕方がないのだが。
この辺りに関しては、あまりにも言及できる個所がないのでごまかすしかないだろう。
それも踏まえて、ARガジェット近辺の話題は大人の事情と言われがちだが……あの正体を知れば、さすがに衝撃を受ける視聴者も多いかもしれないからだ。
『ARガジェットは色々な意味でもフィクションを通り越して現実になったような物、というのが見解なので』
『この話題は、これ以上やると複雑化しちゃうので、ここまで。ここからはLEDスクリーンを使った撮影に関して解説していきます』
ナレーションの方でもARガジェットの話題は、早々に切り上げていた。様々な事情もあるが、その中でもARガジェットはブラックボックスの個所が多すぎるのである。
何度も対電忍本編で言及された『忍者構文は実在します』の部分は、そういう事になるだろう。
どういった意味で実在するというのかは、ここでもぼかされることになるが。アニメ版と同様に。
「最後は、特殊なCGスタジオを紹介します。見た限り、どこかで似たようなものを……?」
こちらの動画の方もざっくり省略だが、最後に登場したスタジオには明らかに既視感がある。
おそらく、我々は似たようなものをテレビアニメ版で見たことがあるからだ。
『これは、秋葉原本部にもあるスタジオですね。まさか……?』
「実はですね、このスタジオ……ガーディアン秋葉原本部のあの場所なんです」
タロウから明らかにされたのは、まさかのガーディアン秋葉原本部のあの場所である。
新宿支部長が一連のトリックを言及した、あの場所だ。実写特撮版及びテレビアニメ版でも、名場面となったあの場所……。
「さらに厳密に言えば、秋葉原本部にも実は同じようなVTuberスタジオは存在するのですが、広さ的にもロケと言う意味では難しいので、ここを使っているという事です」
ガーディアン秋葉原本部、その正体はVTuber事務所のスタジオだったのである。
VTuberというガーディアンメンバーもいたのはは、こういう事情があったのだろうか? そこはあえて突っ込むべきなのか、そうではないのか……判断に困る所。
「撮影をするにしても、ある程度の機材は持ち込む必要性があるのですが、それも可能なスタジオと言うのが……このARゲームフィールド内にあるVTuber用の配信スタジオだったのです」
「こういった合わせ技なテクニックを駆使して、対電忍の撮影は今も続いているのです」
他にもいくつか解説していた場所もあったが……ネタバレ的な意味でも詳細はざっくりカットされている。
結局、後半の動画にしても流れたのは放送用に調整されたハイライト版だったというオチなのだが。
それでも、内容としては15分くらいにはまとめられている。本来の内容は30分あったらしい。本当にメイキングだけで30分やるつもりだった様子。
気が付けば、このスタジオを説明しているあたりでエンディングテーマが流れていた。つまり、そういう事だろう。
『次回、アバターシノビブレイカー、対電忍は……』
ナレーションは秋葉原本部本部長。つまり、先ほどのナレーションと同じ人物が引き続き担当、と言える。
エンディングテーマは引き続き流れているので……。
【9月21日、ARダンジョンでダンジョン配信者による事件が発生】
このテロップが表示されるとともに、該当のシーンでは別のダンジョン配信者がトラブルを起こしているように見えた。
外見的には男性に見えるが、主要人物と言うよりはリアルのダンジョン配信者がゲスト出演のようなケースかもしれない。
「一体、これはどういうことだ? 自分は雪華ツバキではない!」
この人物はビスマルクとも違うので、もしかすると……?
トラブルの内容の詳細は不明だが、話のもめ方的には別の炎上勢力勢力との衝突にも見えるだろう。
更に言えば、彼は雪華ツバキと誤認識され、炎上勢力に目を付けられた……のかもしれない。
【この事件の正体を探るため、ガーディアンからダンジョン配信者が出向くことに?】
このシーンで登場した女性は、明らかにアニメ版で見覚えのある人物が映し出されていた。
その正体は、北千住支部長であるパフィオペディルムだったのである。
何故、彼女がリアルダンジョンの調査をすることになったのか? その真相は次回に分かるだろうか?
【忍者構文の正体が明かされ、ダンジョン配信は思わぬ方向へ?】
このテロップが出たシーンでは、ある炎上系配信者がレインボーローズと月坂ハルカに追い詰められていた。
このようなシーンを、どこかで見覚えもあるのだが……どこだっただろうか?
「忍者構文、やはりSNSと深く結びついていたとは……」
この声は、まさかと言える春日野タロウだ。どうやら、別所から二人の行動をモニタリングしているようである。
「忍者構文、見破ったり」
最後の一言は、炎上配信者の男性だ。一体、何を彼は見破ったのか?
ただのインフルエンサーで終わらない、承認欲求を満たすためにフェイクで炎上させようというのか?
【次回:『野望の渦巻くリアルダンジョン』】
次回のサブタイテロップは画面下、対電忍はダンジョン配信物でもあるのだが……まさかのサブタイでもある。
このテロップの出ているシーンでは、先ほどとは違い、リーガルリリーとデンドロビウムが走り出しているシーンが映し出されていた。
もしかして、二人も同じ場面に遭遇していたのだろうか?
【忍者構文の正体、遂に明らかに!!】
【炎上勢力のフェイク発言が、思わぬ展開を生み出すことになる】
提供の上下にあるスペースでは、その内容に驚きを隠せない気配もした。
何と忍者構文の正体が判明するというのだ。意図的に隠された個所、メタ発言にも何かの伏線があったのだろうか?
次回は小説版で言うところの第9章に当たるパートだが……?




