第55話その3
リーガルリリーのシーンから一転、次のシーンでは途中からコースに復帰したと思われるデンドロビウムが祈羽フウマを追跡していた。
距離にして数百メートル程度かもしれないが、順位の方に関して言えば3位表示だった。つまり、まだ上位入賞はあり得る状態と言える。
(まさか、こういう展開になるとは……)
ARガジェットを操作するデンドロビウムも、若干の焦りはあるかもしれないが……その焦りが判断ミスを招きかねないので、その辺りは理解しているつもりだ。
「最終エリアは……!?」
デンドロビウムは残る最終エリアへと足を運ぶのだが、その目の前に会った光景を見て絶句する。
トップのはずの祈羽フウマでさえ半分を突破できておらず、2番手のプレイヤーは第1関門で足止めされていた。
最終エリアは3つに分けられているのだが、第1関門はガジェットを駆使すれば何とかなるような高い壁がそびえるゾーン。
壁と言っても直角の壁ではない。厳密には60度くらいの坂と言った方が正しいだろうか? 人型ARガジェットを駆使すれば、何とかなるゾーンでもある。
(これはまずいな……)
フウマは第2関門で足止めされているのだが、人型ガジェットを使えば難易度は下がる。それを、あえて人力で進んでいるので……と言う展開だった。
第2関門は橋であるのだが、橋の下にも道はある。どちらのルートを通ればよいのかは個人の判断にゆだねられるだろう。
フウマは、橋の大きさを踏まえ、橋ルートで進んでいた。人型ガジェットの場合は下のルートを行った方が早いが……トラップを踏まえると、そういう事だ。
その後も別の意味でデッドヒートは展開され、最終関門は思わぬイベントが展開することになった。
(この流れならば……何とかなる!)
最終関門は2つのルートがある。どちらを通るかは……。別の意味でも迷路になっており、ガジェットのマップ機能などを駆使することが前提となっていた。
フウマは第六感で正しいルートを発見していき、何とか追いついたデンドロビウムはガジェットを駆使しての迷路突入と対照的である。
迷路の構造を踏まえると、別の意味でもダンジョンを思わせる箇所もあり、もしかすると……これがARパルクールの新たな可能性だったのかもしれない。
「結果は同着か。どちらにしても、こうなる可能性はあったが」
フードを深くかぶった人物が、ARパルクールの配信を一通りチェックしていた。
身長170前半位で、スマートな体系にも見えるが……フード付きの上着の影響もあるかもしれない。
彼は、いわゆるガーディアンと言うわけではない。装備こそは太刀タイプのARガジェットを持っているのだが……。
このタイミングで、すでにエンディングテーマは流れている。つまり、そういう事かもしれない。
なお、今回のレースはリタイヤなしの全員完走となり、これによってSNS炎上勢力の作戦は失敗したといえるだろう。
3位以降のメンバーは順位が確定しているが、1位と2位は同着だった。
パフォーマンスなどはスコアにカウントしないので、今回は純粋な速度レースだった、のかもしれない。
「貴様もガーディアンか?」
彼が数歩位は歩き、梅島駅に到着したところで……自称正義の配信者と思われる忍者アバターが姿を見せた。
明らかにモデリングなどがモブ系なので、倒されるのは……確実だが。
単独行動なので、おそらくは西新井へ向かう組とは別の便乗勢力の可能性は高い。
「ガーディアン? ああ、彼らの事か」
ガーディアンと言うワードを聞いてもピンとこなかったので、梅島駅にあるデジタルサイネージの方角を振り向き、そこでガーディアンのメンバー募集告知を見た。
内容を見てもあまり自分と同じジャンルには思えないが、何となくは察する。
「その装備はARガジェットの中でも、ガーディアンが持つ特注品。おまえを倒せば、ガーディアンのアンチ勢力を盛り上げる要素に……」
何かを言おうとしていた自称正義の配信者は、彼の地雷ワードを踏み抜いたことで、一刀両断にされた。
その後はポリゴンの塊となって消滅する。
「アンチ勢力と言う便乗勢も、自分にとっては悪と言う認識しかない。悪と言うワードはフィクション上や、それこそ戦国時代以前に存在したワードでしか過ぎないのだ」
太刀型のARガジェットは後に消滅するが、使い捨てのガジェットではなく、レンタルガジェットだった様子。
別のコンテナに収納し、それをそのまま別のレンタル店舗に返却したのだろう。
その原理は別の意味でも地下にレールが展開されているようなもので、これがネット通販で運用されれば、世紀の大発明と言われるかもしれない。
(300年前から存在する、忍者の一族……彼らの知る秘密を見つけなければいけない)
彼は、忍者構文で言及されている300年前に存在する忍者を……探しているのかもしれないだろう。
『次回、アバターシノビブレイカー、対電忍は……』
ナレーションが秋葉原本部本部長である。こちらは実写版の男性本部長なのだが。
エンディングテーマの流れたまま、そのまま次回予告の方へと移行するのも実写版の仕様のようである。
【蒼影と似た謎の忍者の正体とは?】
このテロップが表示されるとともに、該当のシーンでは蒼影が別の忍者と戦っている場面が映し出されていた。
両方ともCGという事もあってか、アニメ版と言えばアニメ版と錯覚してしまいそうな雰囲気はある。
アニメ版を知っている人物であれば、この忍者のデザインを含めて見覚えがあるかもしれないが……?
(まさか、飛天雷皇忍将軍?)
このシーンをテレビで視聴している人物の声が流れたのだが、この声は明らかに春日野タロウだ。
そういえば、タロウの担当声優は特撮作品にも出演経験がある人物だったので、もしかすると……と言う気配はする。
そして、ここで蒼影が戦っている忍者の正体が飛天雷皇忍将軍であることが判明するが、実写版では敵扱いなのだろうか?
あの蒼影に関して言えば、自称正義の配信者と戦っていた際の蒼影とはデザインが違い、まるで別の造形デザイナーが担当したのでは……と言うレベルでデザインが似ていない。
もしかすると、その路線か?
【その中で起きたオープン予定だったARダンジョンの事件……】
次のテロップでは、オープン予定だったが中止になったという放置されたARダンジョンが映し出され、そこに足を運ぶ人物の姿があった。
後姿を見る限りでは、ガーディアンのメンバーにも見えるが……どういうことだろうか?
【忍者は再び、コンテンツ流通を妨害していくのだろうか?】
このテロップが出たシーンでは、様々な忍者アバターが飛天雷皇忍将軍に襲い掛かっているようにも見えた。
もしかして、あのシーンにいた忍者もいるのでは……と画面を見ても、その忍者はいない。他の忍者ばかりなのは、いわゆるネタバレ防止の観点か?
次に出てきた場所、それは春日部駅だった。その春日部駅では、様々なコスプレイヤーの姿もあり、イベントが行われるところだった様子。
その中で、まさかの蒼影にも似たようなコスプレイヤーの姿が目撃された。蒼影は忍者ロボットのはずで、コスプレできるような外見ではないと思うのだが……?
こちらのカラーリングは、ほぼアニメ版のトレースだが、過去にアニメ版では偽物のコスプレが流出したというような事件があったはず。
その際のコスプレを流用しているのではないか、というSNS上の声もある一方で、その真相は予告では語られない。
果たして、その真相とは……?
「蒼影のダミーが出現するとは……予想外にもほどがある」
この声は草加支部長ことアルストロメリアだ。まさか、あの時の出番は……?
【次回:『全てはひとつに《オールフォーワン》』】
次回のサブタイテロップは画面下、タイトルだけでは内容が分かりづらいが、そういえば……?
このテロップの出ているシーンでは、各種サポートメカと合体した蒼影の姿もある。まさかと思うが、実写版でもこちらの出番があるのだろうか。
実際、忍者構文でサポートメカと蒼影が合体できたという記述はないという話も拡散している。
そのため、一説にはこの合体形態は商業的に追加されたのではないか、と言う説があった。
果たして、忍者構文に何があるというのか?
【9月19日の真実の一端が明らかに?】
【アニメ劇場版の内容を先取りする、もう一つのアナザーストーリー】
提供の上下にあるスペースでは、その内容に驚きを隠せない気配もした。
次回が9月19日に言及される一方で、まさかのアニメ劇場版に関しての宣伝回という衝撃展開でもある。
それを踏まえ、あのサブタイトルのフリガナは『オールフォーワン』と記されていた。
まさか、対電忍はアニメ版と実写版で内容を共有し、両方チェックしていることを前提とした話なのだろうか?
実写版にはエンドカードは存在しないが、ここで先日公開された劇場アニメ版のビジュアルアートを紹介したい。
内容はアニメ版でもさっくり言及されたのみの9月19日、ARパルクールのレースも終了し、ダンジョン神も消滅したことで放置されたARダンジョンが舞台となる。
このダンジョンに仕掛けられたプログラム、それを解除するために祈羽フウマと雪華ツバキがダンジョンへ向かう……と言うものらしい。
コンセプトアートでは、フウマとツバキがアニメ版とは若干異なるARガジェットとアーマーを装備しているように見えるが、今回の劇場版ではアニメーション制作会社が異なる。
その一方で、フルCGアニメであることは確定なのだが、それ以外にパワードスーツ姿の人物がいるのが気になる所。
敵ではないと思うが、この人物がフウマとツバキと共に事件を解決していくのだろうか?
どちらにしても謎は多い。映画の公開は12月を予定しているらしいので、もしかすると劇場版とアニメ新シリーズが繋がるのでは……と言う声も散見された。
しかし、劇場版のアニメーション制作会社が違うのに話だけが地続きというのも……というのはあるだろう。
その真相は……劇場版の公開が12月と言うが、そこまで待つ必要があるのだろうか。もしくは、次回で一部が判明するのか?
メインキャラで描かれているのは、この他にもレインボーローズと月坂ハルカ、春日野タロウ、ガンライコウ辺りである。
実写版で若干出番があると思われるメンバーは、このイメージボードにはない。例えば、デンドロビウム、リーガルリリー辺りだろうか?
しかし、フウマとツバキがメインなのに、実写版ではもう少し出番がありそうな描写もある。これが意味するものとは……。




