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アバターシノビブレイカー_対電忍【小説家になろう版】  作者: 桜崎あかり
第54話『デンドロビウムの戦い』

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第54話その3

 後半パートでは、ある配信者がARパルクールを観戦しているシーンから始まった。


 その場所は、西新井にあるネット喫茶である。一般的なネット喫茶と言うよりは、ARゲームやイースポーツに特化したカフェと言う雰囲気に近い。


「ARパルクールか。過去には『パルクール・サバイバー』の聖地巡礼で盛り上がっていたが……」


 入り口に近い席でコーヒータンブラーを片手に外の景色も確認する男性、彼はいわゆる炎上系配信者ではない。


 観戦しているといっても、外の方からARパルクールの中継が見えるわけではないだろう。彼の視線に合ったのは、外に設置された街頭モニターだ。


 そこに今回のARパルクールの中継映像が表示されている。店内でも視聴できるのだが、モニターは他のエリアを中継しており、彼が目当てとするエリアの中継はない。


「ARゲームのトレンドが変化するという事は……そういう事なのだろう」

 

 彼が有名なインフルエンサーなのは事実なのだが、今回の忍者構文に関してはノータッチなのだ。


 何故かと言うと、彼は今回の一言のセリフだけの為にゲスト出演した、実在するインフルエンサーだからである。


 いわゆるガンライコウと同じゲスト出演枠だが、ガンライコウとも違うのはテレビアニメ版未登場の、本当の意味で芸能人枠のゲストだからだ。


 そして、彼はコーヒーを飲み終わったところで店を出ていく。



「このルートで問題はないはず。ルート外の道を行こうとすれば……」


 人型ARガジェットのコクピット内でマップをチェックしていたデンドロビウムは、ふとマップ外で反応があることに疑問を持つ。


 ARパルクールの場合、指定ルート外を走ることは禁止されている。これはARゲームの安全上の事情もあるのだが……。


 これに関して言えば、他のARパルクールのルートで走っている選手も反応しているというパターンもあり得た。


 しかし、反応を示す点の色を踏まえると、自分の参加しているレースの物とは異なる。実際は、そういう事なのかもしれない。



「ターゲットとは違うが、ここでレースを中止に追い込めば、ARパルクールを炎上させることができる!」


 後方のランナーをピンポイントで狙おうとしている忍者アバターが数人確認された。


 台詞的にも、明らかに忍者構文のフラグを立てたのは明らかで、デザインなどもモブキャラのそれなのは分かる。


 運営も妨害があれば、万が一に備えて詳細を把握し、場合によってはレースの中断を指示することもあり得る。


「やっぱり、そういう事だったのか」


 ルートを引き返し、該当する反応のエリアにやってきたのはデンドロビウムだった。


 まさかの展開に、忍者アバターの配信者は言葉も出なかったのは確実だろう。


「ここからが、反撃のターンだ!」


 彼女がパネルに表示されたインフォメーションメッセージに対し、YESを即座に押す。


 次の瞬間には、道路の一部が変形したではないか。それに加えて、レースフィールドに姿を見せたもの、それは……。


『大型ARガジェットの起動を確認しました。安全のため、バリアフィールドより前には出ないでください』


『バリアフィールドの強化が行われています。バリアフィールドより前には絶対に出ないでください。怪我をする恐れがあります』


 AI音声にも聞こえるような女性の声で警告音と共にアナウンスが流れ、レースフィールドと思われた場所が唐突に開く。


 そして、次の瞬間には全長5メートルにも及ぶようなコンテナが姿を見せ、それが開くと同時に彼らは言葉を失うことになる。


(大型ガジェット……FPSなどでは見るが、ARパルクールにもあるのかよ……)


 彼らは思った。敵に回すべきではない存在を敵に回してしまった、と。


 こうして、いわゆる炎上をさせて利益を得ようとしていた炎上系ユーザーは……次々とコンテナから姿を見せた腕に吹き飛ばされていく。


 その数は数百にも及んだ。インプレスパムが大量発生する法則と同じように増殖しているので、そういう事なのだろう。


「これがARガジェット、デンドロビウムの真の姿……! コードネームはアガートラーム!」


 ケルト神話でも言及され、様々なゲームやアニメでも語られるアガートラーム、対電忍でも例外ではない。


 それに加えて、とある作品ではありとあらゆるチートをアガートラームの一撃だけで消滅させることができるのだ。


 その作品とは『不正破壊者(チートブレイカー)我侭姫(デンドロビウム)』であり、池袋支部長であるデンドロビウムの……。


 実際、デンドロビウムのバトルシーンは、後半の5分ほどを占めていたのである。本編の比重としては間違っていないだろう。



 次々とアカウントを凍結しても増殖するスパムアカウントのように現れる忍者アバターを、デンドロビウムは銀の腕の一振りで瞬時に一掃していった。


 それでも一掃できない場合には、背中の大型ブラスターキャノンや脚部のホーミングレーザーも使用し、片づけていく。


 実写作品なのに、CGをバリバリに使っていって、予算がそこで尽きないかも心配だが……。 


 しばらくすると、バトルシーンの途中で実写版のエンディングテーマが流れ始めた。


 この段階で、モブのインフルエンサーは即時退場すると認識していた視聴者は多い。


 エンディングテーマが、いわゆる処刑用BGMとしてもネット上で有名だったというのもあるが……。



「ここにきて、そういった手段を使うのか」


 トップを独走し、最終エリアに向かう寸前だった祈羽(おりはね)フウマは、背後で何が起きているのか困惑をしていた。


 しかし、後ろを振り返ってもペナルティはないと思うが、最終エリアを残してデンドロビウムの救援に向かうのは……と言う気配がする。


(しかし、ここでリタイヤをすれば……それはそれで危険か)


 そして、フウマはある決断をすることに……。



『次回、アバターシノビブレイカー、対電忍は……』


 ナレーションが秋葉原本部本部長である。確認のために言及するが、実写版の男性本部長なのでお間違いなく。


 ガンライコウも登場したが、実写版ではガーディアンのメンバーでもない。ある意味でも逆輸入でのゲスト出演だ。


 エンディングテーマの流れたまま、そのまま次回予告の方へと移行するのも実写版の仕様のようである。


【レースは遂にクライマックスに!】


 このテロップが表示されるとともに、該当のシーンではデンドロビウムとフウマが最終エリアへ向かっているシーンが出てきた。


 最終エリアはいわゆる障害物コースではないように見える一方で、ゴールに待ち受ける影の存在が見えた。影の正体は何者なのか?


 残りのメンバーの描写はないが、順位速報が表示されるシーンではリタイヤ記述はない。完走ルートをたどりそうな予感はする。


【自称正義の配信者を名乗る人物の出現に、蒼影が遂に姿を見せる!】


 何と、このテロップが表示されたシーンでは、まさかの蒼影(そうえい)が姿を見せているのだ。


 場所は西新井のコースではなく、五反野近辺……おそらくは西新井へ向かっていた正義の配信者を阻止するべく現れたというべきか?


 蒼影のデザインは、アニメ版も実写版も一緒であり、カラーリングに若干の差異がある位だろう。


 アニメ版ベースのDX玩具が出ているので、その辺りを配慮したか……もしくは実写版でも出す予定があるのか? 真相は謎に包まれている。


 バトルシーンでは、蒼影が正義の配信者が使うさすまたを刀で受け止めているようだが……果たして?


「あなたたちに正義はない。正義を騙るだけの悪、そのもの! ガーディアンは、必要悪でさえも許さない……悪と言う存在をフィクションのみにするために、我々は戦わなくてはならない!」


 この声はリーガルリリーで、蒼影が交戦している人物とは別の正義の配信者と戦っていた。


 果たして、この台詞の真意とは……?


【次回:『新たなるパルクールフィールド』】


 次回のサブタイテロップは画面下、その内容はARパルクールの決着回……と思われるが、真相は不明である。


 その一方で、フードを深くかぶった謎の人物がある場所に現れた自称正義の配信者を一刀両断にしているが……確実にアレはアバターだろう。


 そうでなければ、明らかにオーバーキルだからだ。それに、いわゆるロスト退場に該当するような人物は対電忍で登場はしていない。


 あのダンジョン(しん)でさえも消滅と言う結末であり、現段階で誰一人としてロストはしていないのである。



【デンドロビウム対フウマ、遂に決着!】


【この決着が、新たなバトルを予感させる】


 提供の上下にあるスペースでは、上に最初のテロップ、下には次の……と言う具合。


 次回が決着回なのは間違いない様子。


 その一方で、新たなバトルとは……どういうことなのか?


 予告を見る限りではそのような伏線になりそうなシーンはないように見えるが、果たして……と言う具合かもしれない。


 ここでアニメ版でも詳細が描かれていなかった19日の内容に突入するのか、もしくは……。


 まずは、レースの結果がどうなるのかが気になる所である。


 週一放送枠だと、実際には三週使うような展開になるのだが……。


 ネット配信では数話単位で一括なので、ネタバレが怖い所だろう。1クール一括配信などの場合、話題になりにくいのはこういう事情もあるのかもしれない。


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