第50話その3
「正体が分かってしまえば、所詮はたかが知れている、という事か」
ダンジョン神は、自身のダンジョンで遂にゴールに到達した冒険者が現れたことに驚いていた。
しかし、その人物の正体を看破し、別の意味でも想定していた人物が来たわけではない事には、ため息を漏らす。
そして、彼はゴールにたどり着いた冒険者に対し、刃を向けていたのである。
この光景には、別の意味でも驚く人物は多いだろう。実際、ある人物に対しての反応を踏まえると……。
「忍者構文を調べてみれば、300年前から存在しているのは嘘だった。我々は騙されていたのだ」
そして、ダンジョン神は指をパチンを鳴らしたと同時に放った剣で冒険者たちを瞬時にポリゴンの塊にしていく。
このシーンだけで数分、それだけダンジョンの奥深くに入ってきた冒険者が増えたというべきなのだろうか?
「だからこそだ。我々は……」
次の瞬間、黒バックになる。一体、何が起こったのか……それは誰にも分からない。
唯一分かるのは、ダンジョン神が到達した冒険者の中に、自分の望んでいる人物がいなかった、事だけだろう。
冒険者たちは悲鳴を上げる間もなく、瞬時で消滅させられているので、それを踏まえると明らかか。
数十人規模でたどり着いたものがいたという事は、ダンジョン神のダンジョンの攻略ルートが確立された証拠かもしれない。
一体どのタイミングで……と言われると、その詳細は不明だが。
「やっぱり、そういうからくりだったのか……」
ARマントを装備したままでは電車には乗れないため、マントは解除し、ARガジェットも収納形態で仕舞っている状態で電車に乗る、池袋支部支部長ことデンドロビウム。
上野駅から池袋へ向かうのに、本来ならば電車一本で行けそうな予感はするが、万が一の襲撃を考え……乗り換えを駆使しての池袋経由となった。
「さすがに、そこまで知ったうえで動いていたとは……考えたくないけど」
ただし、メイド服はARスーツではないのでそのまま着用したまま電車に乗ることにはなるだろう。
コスプレと認定されそうだが、メイド服位ならば……まぁ、問題ないかもしれない。実際、草加駅周辺などではコスプレが認められたエリアが存在する。
東京都にも、そうしたARスーツのまま歩けるようなエリアは複数あるのだ。着替え専用スペースもあるのだが……混雑していた場合は、やむ得ないという意味でも。
デンドロビウムは、上野駅で電車に乗る際も一部勢力の襲撃を受けていた。
そのたびにARフィールドが展開し、実況と解説もセットで配信されているのは……向こうが狙っているとしか思えなかったが。
撃破したのも、そのほとんどがARメット及びガジェットを装備していないと認知できないような、遠隔プレイヤーのアバターがほとんどである。
一体、これはどういうことなのか? ちなみに、このバトルシーンだけでも上野駅から池袋にたどり着くまでに何度か発生している。
気が付くと、本編の半分以上の時間が過ぎ……。
『何か発見したのか?』
デンドロビウムの耳に装着しているインカム経由から聞こえる声は、シノビ仮面の声だった。
まさか、新宿支部長が池袋の新支部長に用があるとは……と言う風にも感じ取れるが。
「先ほど、ダミーの忍者を討伐した辺りかな。イースポーツ勢に気づかれたのは想定外だけど」
ドローンの正体は、ARゲーム側の運営……イースポーツ勢でもあった。企業的なイースポーツ勢ではなく、個人運営レベルだろう。
個人運営でも、規模によっては企業以上のものがあるのだが。
『なるほど。それが……ダミー忍者の正体、と』
「それは違うかな。ダミー忍者はSNS炎上勢力、それに加えてインプレスパムとか承認欲求とか、万バズ狙いとか……その辺り」
『まるで忍者構文だな』
「忍者構文? 300年前に存在していたのは嘘だというのは分かっているけど、まさか……」
デンドロビウムは若干思い当たる節があった。
その辺りでエンディングテーマなしで通常BGMの流れたままに、スタッフ及びキャストクレジットが始まる。
『忍者構文自体、実は2つあるらしいという情報を発見した。我々が認知しているのは、混ざったもの……と言えるだろう』
「混ざったという事は、300年前の部分と……」
『そういう事だ。ややこしい話ではあったが』
「以前にテレビのアトラクション番組で見たけど、祈羽フウマ、彼の一族とSNS上のネットミームが混ざった結果……」
『そう受け取ってもらっていいだろう』
「やっぱり、そういう個所なのか」
デンドロビウムも、思い当たる部分があり、やっぱりか……と言う表情で反応する。
シノビ仮面も、祈羽一族の事を他のメンバーに指摘され、それを調べなかったら、このからくりには気づかなかっただろう。
まるで、シノビ仮面としてはガーディアン秋葉原本部のトリックと暴いた時のアレを思い出す。
「そうなると、一つ大変な事件が起きたみたいだから報告しておく」
デンドロビウムは、電車が到着したタイミングでタブレットをチェックし、その内容を伝える。
「そろそろ電車に乗るから、ガーディアンの回線でも、おそらくは使えなくなるし」
そして、ブックマークしていた、とあるサイトのページをスクショし、それをシノビ仮面の方にも転送した。
「ダンジョン神、もしかするとなりきりの可能性があるわね。本物がいるのは確かだし、ダンジョンを生み出す力も……事実」
『どういうことだ? このまとめに書かれている内容は本当なのか?』
デンドロビウムの転送したスクショを見て、シノビ仮面の方が逆に動揺していた。
向こうは、そうした意図がないのに……まさかの展開となっている。
ここで、脚本担当と演出担当のクレジットが表示された。
「ええ。間違いなく、ダンジョン神は二人いる」
そのデンドロビウムの一言とともに……。
「忍者構文自体、いわゆる特撮番組におけるテンプレのようなもの。いわゆるモチーフ?」
【第50話『忍者構文の正体』】
次の場面では、サブタイが表示される。そして、デンドロビウムは……。
「一連の事件が、全てSNSの炎上案件などをすべて一掃するために用意された、テレビ番組の企画だったとしたら……」
デンドロビウムのこの発言がラストとなり、CMに入った。
果たして、この発言の真意とは……?
『次回、アバターシノビブレイカー、対電忍。ダンジョン神、炎上の果てに』
CM明けに次回予告のロゴが表示された。そのタイトルには別の意味でも衝撃を受けた。
この手のネタバレ次回予告の場合、明らかにダンジョン神が退場するような気配しかしない。
それ位に直球なネタバレタイトルと言えるだろう。更に言えばバック画像なしが決定的だ。
対電忍の場合、次回予告で30秒取るようなパターンではなく『別バージョンはWEBで』のような形式でもない。
つまり、フェイクでもなんでもなくダンジョン神は次回退場という事になるだろう。
アニメ雑誌などでも対電忍のネタバレは記載されておらず、掲載された情報から推測するにしても……と言う気配はする。
果たして、文字通りにダンジョン神が次回退場と受け取っていいのか? それとも、オープニングにいたバージョン2として再登場するのか?
全ては次回の放送を見なければ分からない、という事だろう。
忍者構文と言う存在には一つの決着が図られた一方で、ダンジョン配信をはじめとして未解決案件はいくつかある。
それがどうなるかも含め、次回を待とう。
ナレーション担当は、春日野タロウである。
まさか、今回のあのシーンで出てきたのは……?
今回のエンドカードは、池袋支部支部長ことデンドロビウム。引き続きである。
その彼女が、連続してのエンドカード登場だ。こちらは人気を受けて……なのだろう。スケジュール的にも。
今回の服装はガーディアンの制服である。胸に関しては……言わなくてもいいか。
ARガジェットは装着しておらず、右手にカバンを持っている。その中にガジェットを収納しているのかもしれない。
バックの背景は秋葉原駅。場所やデジタルサイネージなどを踏まえると、いつもの場所とは若干異なりそうだ。
エンドカード担当は『パルクール・サバイバー』のイラストチームで、今回はゲスト参戦の様子。
そういえば、続編が決まっていたようなCMが流れた気配もするが……。
【次回をお楽しみに】




