第46話その3
「なんだこいつは……」
その頃、ダンジョン神のダンジョンの方では麒麟と戦うダンジョン配信者が苦戦を強いられている。
この麒麟は、外見だけを見ると昔話や神話などで有名な麒麟であり、動物の方のキリンではない。
更に言えば蒼影のサポートメカである麒麟ともデザインは異なっていた。
実際、DX玩具になっている麒麟と比較すればデザインの違いは明らかだが……。
「あの電撃を避けられれば……」
放つ電撃は追尾性能もあり、ほぼ一撃で安易な『バズり』を目的としたダンジョン配信者を瞬時に入り口送りにする。
防御をすればダメージ軽減は出来るだろうが、装備が万全ではないダンジョン配信者にとってはレイドボスに挑むこと自体が無謀なのだ。
懐に潜ってそこから攻撃しようにも、今度は踏みつけ攻撃で削られていく。パターンとしては、これだけなのに高い確率で詰みとなるのである。
入り口送りになったとしても、大きなデメリットがあるわけではない。敗北したという光景が配信されるだけだ。
実際、一般的なVRダンジョンとは異なり、ダンジョン神のダンジョンではスコアの概念はあるのだが、そこまで厳密ではない。
装備に関してもダンジョン内で入手できるコインなどで購入、素材で作ることは出来るが……なければ倒せないようなバランスでもなかった。
「なんだ、あれは?」
ある配信者が発見した忍者、それは明らかに蒼影である。
何故、このタイミングで蒼影が姿を見せるのか……謎は多い。
あのBGMが流れ、麒麟に対して種子島ライフルを放つ姿は、あの麒麟が偽物、もしくは……と言う光景を思わせるものだった。
「間違いない! あの姿は……」
ダンジョン配信者たちは、それぞれに思う。蒼影の出現は救いなのではないか、もしくは麒麟を撃破後は自分たちか……と。
蒼影と麒麟とのバトルは数分ほど展開されるが、サポートメカは使用していない。
つまり、あの麒麟に対して単独で戦っている計算になるだろう。それ位に圧倒的な蒼影の能力は……周囲の配信者でさえ不安にさせるレベルだ。
「やはり、そういう事と見るべきか。あの麒麟は……偽物、と」
エンディングテーマが流れ出し、そのタイミングでダンジョン神は一連のバトルを見て何かを思っていた。
すでにスタッフクレジットも流れており……そういう事なのだろう。
「だが、他のダンジョンに姿を見せた麒麟には反応を見せず、ここだけに姿を見せた……?」
ダンジョン神は、ふとそういう事なのか、と把握する。
いよいよ、全てを明らかにする時が来たのか、と。
この忍者構文が作られたものであり、このダンジョンでさえも第3者によって生み出された存在であることを。
ダンジョン神も、所詮はコンテンツ的にもラスボスとして設計され、それを高性能AIが演じていたにすぎなかったのだ。
神なのは間違いないだろう。その力は、あの時に現れた配信者すら瞬時に消滅させたのだから。
「俺がダンジョン神を倒し、このダンジョンの神になるんだ!」
そう叫び、自分に変わってダンジョン神になろうとした配信者はある意味でもかませ犬かのように倒される。
むしろ、どこかで見覚えがあるようなあっけない幕切れを見せたことに、ダンジョン神も何かを察していた。
「お前は選ばれたものではない。ネガティブ配信者ではないが、実力が足りないのだ」
あの時の回想シーンが流れ、ダンジョン神のセリフも再び流れる。
確かに、彼はここでネガティブ配信者というワードに言及していた。
つまり、目の前に姿を見せた配信者は、麒麟に一撃を与える事さえ出来なかった『バズり』勢力と変わりなかったのである。
その一方で、あの時に出会った配信者はどうだろう? 今はかなりの実力者になっていると聞く。
彼の名前は何だったのだろう? 思い出せずにいるダンジョン神だったが……それはどうでもよかったかもしれない。
「このダンジョンも、そろそろ幕引きとしようか……」
ダンジョン神のダンジョンが唐突にサービス終了告知を出すことになったのは、その翌日だったという。
ここで、脚本担当と演出担当のテロップが出てくる。脚本担当を見て「やはりか」という視聴者もいるだろうが……。
「世界に必要なのは、やはり……」
第5エリアが解放されたこと、それはダンジョン神にとってはダンジョン配信者を増やすためにも必要なことだったのだろう。
しかし、SNS炎上を意図的に行い、承認欲求を得ようとするような『バズり』勢力に悪用され、麒麟の偽物が仕向けられていた。
そうしたこともダンジョン神はすべて把握し、それこそ制作委員会のスケジュール圧縮などの影響……とも考えていた。
実際、そうした事件の数々は制作委員会の思惑があったのだろうか? もしかすると、この状況をダンジョン神は望んでいたのかもしれないのでは、と。
「今こそ、神を裁つための剣が必要なのだ」
この台詞だけは、ダンジョン神の声ではない。感情が出ているような台詞ではないのは明らかだが……。
声は男性声なので、そういう事なのだろう……とは思われる。
更に言えば、キャストクレジットにこの台詞を喋る人物がクレジットされていたわけでもない様子。
1人2役のようなキャスティングもあるかもしれないが、その路線もないような声である。対電忍では初めて聞く。
もしかすると、ノンクレジットのキャストかもしれない。
もしくは、バラエティー番組であるような他番組の宣伝枠で呼ばれるゲストみたいなポジションとか。
一体、この声の正体とは……?
『次回、アバターシノビブレイカー、ハッキングオブダンジョン』
CM明けに次回予告のロゴが表示されるが、またもや特殊フォントである。
しかも、このフォントは『ハッキングオブウォーゲーム』で使用されていたフォントを使用し、その当時のタイトルロゴをご丁寧に再現したものだ。
ダンジョンがハッキングされるという事は、まさかの展開もあるのだろうか……と。
バックに表示されているのは、とあるARダンジョンの入場口ではある。
ここが舞台なのかは不明だが……何を示しているのだろうか?
ナレーション担当は、今回もブラックローズである。
やはりというか、前回と同様にサブタイトルを読む。
今回のエンドカードは、秋葉原本部長なのだが……その隣にいるのは渋谷支部長のリーガルリリーだ。
何故に秋葉原本部長なのか、と分かるのか? 答えは簡単だ。支部長の制服が秋葉原本部のものになっているからである。
ガーディアン専用のインカム付き帽子を深く被っているため、秋葉原本部長の目は判別できない、が……?
この支部長、目以外の見た目は何と浜松町支部の女性支部長と似ている。もしかして、姉妹という事なのだろうか?
バックは秋葉原駅、そのガーディアン募集告知を行っているデジタルサイネージの前で撮影されているもの。
、一体、これが何を意味するのかは定かではない。撮影者は、もしかすると秋葉原本部のメンバーかもしれないが……。
一方で、視聴者は断片的にガンライコウと言うワードを耳にしており、この人物こそがガンライコウなのでは……と察する視聴者もいるだろう。
雑誌のフライング情報などで炎上するケースも存在するため、今までの前例のようにエンドカードでネタバレを先に出すという手法は何度かあった。
これも、それに該当するかはエンドカードの担当者のみぞ知る……かもしれない。
エンドカード担当は前回と同様に対電忍のCGアニメーションチームによるものであり、イラストレーターによるゲスト寄稿などのケースではない。
対電忍もいよいよ終盤に近付くが、その中で様々な伏線や残る謎は多い。
ダンジョン神との決着は重要なのに加え、ラスボスと思わしき人物さえも姿を見せていないのだ。
もしかすると、ダンジョン神がラスボスなのは事実なのだろう。
一方で、それを操る黒幕にも視線は向けられている。制作委員会なのか、やはりSNS炎上勢力なのか?
その答えは、もうすぐ出るだろう。
仮に第5クールへ突入する展開になったとしても、第4クールで何かの区切りをつけてくるのは確実なのだから。
【次回をお楽しみに】
SNS上でとある疑問を持っている人物がいる。そのつぶやきが思わぬ箇所で拡散し、一種の祭り状態になっていた。
【青凪の伏線は回収されたのか?】
実は、この点に関して思わぬ箇所で伏線が回収されている。
青凪がスタンバンカーと交戦した際、この時に青凪は敗北していたのは覚えているだろう。
この回の後に、一部の回想シーン以外では既に収録が終わっており、ある意味でもオールアップの状態になっていた。
対電忍では公式ブログなどでオールアップ報告が言及されるのだが、その第1号が青凪だったのである。
この個所から、青凪に関してはいわゆる路線変更のあおりを受けたように見えて、演じたキャストのスケジュールによる事情があったのかもしれない。
ちなみに、青凪を演じていたのは特撮などでも有名な俳優で、もしかしたら別のドラマの収録の合間に出演していただけた……と言えるだろうか。




