第43話その2
「彼らは、日本のために戦っていた」
いきなりのナレーションに驚くが、その外見はいわゆるファンタジー系を思わせるような装備をしているハンターだ。
一体、この外見のハンターたちがどう日本とつながっているのか……と悩む視聴者は多い。
【狩りゲーがブーム的な意味か?】
【ダンジョン配信的な意味かもしれない】
【コスプレイヤーでは?】
こういった意見がSNS上でも上がっているが……。
「埼玉県某所の小売店は、一部の常連客とともに行動を起こすことになった」
「食玩、キャラクターグッズなどを高値で売りさばこうとする悪意を持った勢力……」
『彼らが狩るのは転売ヤー!』
『コンテンツ流通の正常化のため、ハンターは転売ヤーを狩猟する……』
ナレーションを聞き、まさかの衝撃を受ける者多数だろう。
最初に姿を見せたハンターたちは、何と転売ヤーを狩るのである。
もしかすると、転売ヤーをモンスターとした狩りゲーなのだろうか?
『テンバイヤ・ハンター、コミック発売中!』
何と、この作品は漫画作品という事が判明する。
当然のことだが限定版が存在し、プラスチックカードやアクリルスタンド、缶バッチなどが付属し、ある意味でも転売ヤーの餌食になりそうな感じはした。
しかし、題材が転売ヤー狩りと言うのもあって、さすがにそういった題材で転売ヤーがリアルで現れたら……と言う意味でも、この作品のグッズを転売しようという人物はほとんどいない。
中古品グッズの販売店などでは見かけるので、その辺りはちゃんと分けているのだろう。
ハンターが狩るのは、あくまでも【悪意ある】転売ヤーなのだから。
本作に関して言えばアニメ化は検討されているようだが、正式に発表されたわけではない。あくまでも噂であることに留意されたし。
『ゲームセンターで、レッツ! パルクール!』
次に流れたのは、テンバイヤ・ハンターの30秒CMよりは短いが……ゲームセンターで稼働中のパルクールゲームの様だ。
しかし、CMで流れているゲーム中の画像などを見ると……少し前に、これと同じ画面を見たことがある。
先週のエンドカード、そこで描かれていたゲームとは、この作品の事だった。
先週の放送でもCMは流れていたのだが……別の意味で驚いた視聴者もいる。
ゲーム内容は、いわゆる体感タイプのものではなく、ゲーム筐体のツインスティックで操作するタイプの様だ。
オンライン対戦も可能だが、店内でのローカルプレイに近い……いわゆる対戦格闘ゲームのような乱入のような形式も対応している様子。
フィールドに関して言えば、実は一部のVRダンジョンが本作のパルクールフィールドを許諾を得て流用しているものなのである。
『今なら、対電忍コラボ……実施中!』
ナレーションはアルストロメリアの担当声優で、同ゲームでも別キャラを担当していた。
対電忍コラボではアルストロメリアは出てこないが、祈羽フウマと一部ダンジョン配信者、浜松町支部の支部長がプレイアブルで登場する様子。
コラボに関しては、1プレイで確実に入手できるようで、いわゆるガチャキャラなどではない。
ゲームセンターで稼働している作品なので、ソシャゲなどと容量が違うのもあるかもしれないが。
『まずいことになってるよ。先ほど、うちのサーバーにハッキングを仕掛けた人間がいるみたい』
春日野タロウが経営するゲーミングパソコンショップ、その特別な配信部屋。
入り口には『関係者以外、立ち入り禁止』の札がかかっており、誰も入ってくるような様子はない。
その配信部屋で配信を行っている女性、それがスノードロップだった。
彼女は過去にブラックバッカラ事件でも活躍をしており、英雄であるレインボーローズと月坂ハルカよりは目立たないものの……と言う気配。
そんな彼女のしているヘッドフォンから聞こえてきたのは、ウェルウィッチアの声だ。
「こっちは、そういう事を考えている余裕がないんですが……」
スノードロップの方は、配信の方が色々と大変なことになっていて、手を離せそうな状態ではない。
それもそのはず。彼女の見ている画面、それはダンジョン配信王決定戦のフィールドだからである。
『そっか、そっちは決勝の会場だったか。忘れていた。じゃあ、こっちはこっちで対応しておくわ』
「それがありがたいかな」
このやり取りは向こうには流れていないが……すでに襲い掛かってきた忍者に関して言えば、討伐済みだ。
あとは、残った1名を追いかけるのみとなるだろう。距離が離れすぎているので、間に合うかどうかは微妙な情勢だが。
(さて残り1名は誰なのか……?)
スノードロップがデータをチェックすると、そこには意外な名前が出てくることとなった。
この名前に関しては聞き覚えがないものの、別経由で目撃した忍者ロボット……それに関係するのだろうか?
「やっぱり向こうには頼れないか」
自身のノートパソコンの前で、頭を抱えているのはウェルウィッチアなのだが……。
(向こうに頼れば、強力なハッキングで上書きできると思ったのに……)
向こうとはスノードロップの事なのだが、彼女はダンジョン配信王決定戦もあって余裕がない。
だからと言って、他のバイトを引っ張り出すには向こうのクラッカーも強力らしく、単独ではどうしようもなかった。
打つ手なし……と思ったウェルウィッチアだが、頼れる助っ人は別の所から呼ぶことにする。
『それは本気で言っているのか?』
「頼みますよ、リリーちゃん。少し前に協力した仲じゃないですか」
『確かに池袋支部の支部長を引きずり下ろすのには成功した。しかし、それはそっちの別件も含めての事』
「そのおかげでARチャフグレネードの件は、色々と進みましたが……」
ウェルウィッチアが助っ人として呼ぼうとしていた人物、それは何とガーディアン渋谷支部の支部長ことリーガルリリーだ。
かつて、リーガルリリーはウェルウィッチアと同じネットガーディアン所属だった時期もある。
それが後にガーディアン秋葉原本部所属となり、現在の渋谷支部長となっていた。
池袋支部の支部長に裏があるとはリーガルリリーも考えていたが、その証拠はない。
そのためにリーガルリリーが頼ったのは、過去に上司だったウェルウィッチアだ。一応、借りはあるのだろうか? いつのかは知らないが。
ちなみに、ガーディアン専用の回線は知らないので、プライベートの番号で呼び出していたのだが……実際に出来たのは彼女も驚いている。
『さすがにガーディアンがダンジョン配信王決定戦の舞台で騒動を起こすのは、提案者的な関係で同意は出来ん』
「確かに、提案者が春日部支部のホップと言う話はありますが……向こうも元々はネットガーディアンでしょう?」
『そこは否定しないが、頼むにしても順序が違うのではないか?』
「ホップに頼むのは、ねぇ……」
春日部支部長ことホップに頼み込むのは、さすがに彼女としても難色を示す。
頼んでも問題はないかもしれないが、ホップの場合は……。
『言いたいことはわかる。それこそ、そちらのマスター経由で話を通さないといけないことも』
「そうなんですよー。特にホップとアルストロメリアの場合は、それが……」
ウェルウィッチアも別の意味で頭を抱える状態で、スノードロップを頼れない状況では、リーガルリリーしかいない。
別の意味でも強力なクラッカーに対して、ホワイトハッカーを連れてくるしかないのだが、かなりの実力を持っているのがリーガルリリーなのだ。
草加支部長でもあるアルストロメリアは、どちらかと言うとホワイトハッカーではない。現地に乗り込んでクラッカーごと確保するタイプの人間である。
なおのこと、そっちに頼んだら頼んだで後が怖いというのはある。
自分が手を下したら、あるクラッカーの勢力が丸ごと消えてしまい、それはそれでやばい事になるのは目に見えていたからだ。実際、過去にそれをやってしまっている以上は……。




