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アバターシノビブレイカー_対電忍【小説家になろう版】  作者: 桜崎あかり
第38話『ダンジョン配信王決定戦』(前編)

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第38話その3

 一連のダンジョン配信王の話は、様々なダンジョン管理人の耳にも届いており、これを一種のビジネスチャンスと考える管理人もいた。


 ただし、ガーディアンが提示した条件も条件だったので、もろ手を挙げて立候補した管理人は……決して多くはない。


 その理由のひとつに、いわゆるチート対策というのもあって……この規定が色々な意味でも管理人にとっては場合によって痛手になっている。


 Aと言うダンジョンでは仕様になっているアクションも、Bと言うダンジョンではチート扱いされるケースが、その証拠だろうか。


 だからこそ、ガーディアンと距離を取っているような大手にとっては、自分たちのダンジョンを拡散するのに都合がよいはず、だった。


 しかし、この辺りの様子見をしている勢力が多く、9月6日の段階では募集が0という時間帯もあったレベルだ。


 募集は9月5日の午後6時から始まったとは言われているものの、その段階では大きな動きはない。


 ARダンジョンでは、ダンジョン配信王が決定するまでの間にガーディアンが色々と動いていたようだが……。


 最終的に9月8日の段階でARダンジョン及びVRダンジョンの予選会場も決定し、残るは……と言う状態になっていた。


 その中で起きた事件であることを踏まえ、この先をご覧いただきたい。



「黒い忍者? アレが噂の……」


 とあるVRダンジョン、それこそどこかの廃墟を思わせるような外見と内装、リアルにこれと似たような建築物もあったような……と言うダンジョンだ。


 このダンジョンは別名として『九龍城』とも呼ばれていたようだが、あくまでもSNS上であって正式に使われている呼称ではない。


 そこで祈羽(おりはね)フウマが目撃したもの、それは黒い忍者のロボットだった。


 一見するとリアルの秋葉原で目撃されたハンゾウにも似ていると思われたが、類似しているのは色しかない。


 別の第3者が二次創作の解釈違いをするかのような……そんな感じで生み出されたような忍者だったのである。


 しかも、その解釈違いとは……忍者構文だった。別の意味でも、まさかと言えるような光景がそこには展開されている。



 その黒い忍者が言葉を発することはない。それは、かつての蒼影(そうえい)とも被るような、まったく同じような特徴ではある。


 しかし、この忍者が切り捨てているのは……PK(プレイヤーキル)のような違反行為や不正ツールを使ったチートプレイヤーではない。


 何と、普通のダンジョン探検者なのである。彼らが見せた挙動を見た瞬間、この黒い忍者が該当する探検者を切り捨てた。手に持ったレーザー刀で。


 目撃した探検者によると、彼が見せた挙動はダンジョンAではチートと類するようなスキルかもしれないが、今回のダンジョンBでは公式で認められたものだ。


 ソシャゲで周回を行うにも、スキップチケットが必要なもの、チケットなしでスタミナが続く限りスキップできるもの、最初からスキップが実装されていないもの……様々だろう。


 黒い忍者は、明らかに1つの視点でしかものを見ておらず、それ以外はチートプレイヤー……と言わんばかりの視野の狭さで容赦なく探検者を切り捨てていく。


(なんてことを……)


 フウマは遠目で一連の流れを見ていたのだが、自分ではどうすることもできずにいた。


 下手にもめ事を起こせば、ARパルクールの方でエントリー解除もあり得たからである。


 この状況を黙ってみる事しかできないのか、と悔しいを思いをしながら様子を見ていた所……。



 突如として姿を見せたのは、青色の忍者ロボット……蒼影だった。これには黒色の忍者の方も、そちらを向かざるを得なかったので、ひとまず探検者狩りを止める。


 しかし、黒色の忍者は次の瞬間に大量の分身を呼び出す。まさかの展開ではあるのだが、その分身も蒼影は容易に切り落としていく。


 瞬時にポリゴンの塊にはならず、そのまま切ったら消えるという具合か? おそらく、文字通りに分身の術なのだろう。本物を切れば……と言う意味でも。


(あの忍者も喋らないのか?)


 フウマは蒼影を見て、ふと疑問に思う。確か、喋っている場面もあったはず、と。


 しかし、それらは実際に言えば月坂(つきさか)ハルカが搭乗していたケースであり、無人パターンでは喋らないのだ。


 ある意味でもAIが独自の思考で動かしていた、というのが蒼影の無人だった真相で間違いないだろう。

 


 蒼影が現れ、そこから数分間はにらみ合いが続く状況となり、その間に他の冒険者や探検者などが避難をしていた。


 分身に切られそうになった人物もいたが、何とか無事にログアウトは出来た様子。


 それを見極めてから、蒼影は本格的に動き出す。その動きは、正に忍者と言っても過言ではないような早業だったという。


 黒い忍者もそれに応じて攻撃をするのだが、蒼影に傷ひとつ付けることはできず、黒い忍者はあっさりと敗北した。


 所詮はコピーであり、偽物と言えるのかもしれない。以前にコスプレ用の忍者が出回ったという話もあるが、それとも比べると数段劣る。


 忍者構文を完コピしたつもりが、実はコピーしきれずに空振りに終わったというべきなのか? もしくは、これも百を承知でSNS炎上を狙っていたのか……。


 その真相は明らかにはなっていない。ここで言えることは、少なくとも蒼影に黒い忍者が負けるという事は、想定の範囲内だった、という事だ。



『そうか。黒い忍者の正体は……』


「そういう事ですね。すでに犯人は判明済み、拘束も完了したという話です」


 とある人物とリモートで連絡を取っていたのは、ガーディアン渋谷支部の支部長であるリーガルリリーだ。


 今回は、エンディングテーマが流れず、劇中の楽曲が流れる状態でスタッフクレジットが表示されている。


 場所は渋谷支部なのは確定だが、支部長室でもなければ、事務室でもない。どうやら、休憩室の一画の様だ。


 リモートの相手はサウンドオンリー、男性声に聞こえるがボイチェンの疑いがある。


『忍者構文が300年前のものだったというのは嘘で間違いないが、どのタイミングなのかは……』


「そこは不明のままですね。引き続き、調査させておきます」


『制作委員会は、もう1クール延長させて決着を図るつもりらしい』


「つまり、9月30日がラストではない、と?」


『そういう意味なのか、9月30日までの話を第4クール以降に入れるか……』


 2人がどのような話をしているかは不明だが、黒い忍者関係なのは間違いない。


 その一方で、忍者構文に関しても話をしているように聞こえるが……?


「どちらにしても、ガーディアンにとっては厳しいでしょうね」


『……別のダンジョンも確認されたらしいが、あちらはあちらで調査が行われるという情報もある』


「別のダンジョン? こちらでは調べているのですが、それっぽいのは確認できていません」


『噂の範囲だが、そちらには伝えておこうとは思う』


「噂? それは気になりますね」


 相変わらずだが、リーガルリリーはARメットをかぶっており、その素顔を見ることはできない。


 稀に渋谷支部のメンバーがリーガルリリーの前を通り過ぎるような場面もあるのだが、それに対し何らかのリアクションを取ることはない。


 スルーとは違うのだが、認知されているという事だろうか?


『ダンジョン(しん)のダンジョン、あのダンジョンは……』


「なるほど。それを踏まえれば、ダンジョン神がどのような行動を次にとるのか……何となくわかる気はします」


『ブラックバッカラをはじめとした高性能AIアバター、その存在を認めない勢力が炎上させていることを踏まえれば、まぁ、わかる話ではあるが』


「どちらにしても、ダンジョン神を生み出したのはキサラギのスタンバンカーとは違う、と」


『スタンバンカー? その情報ソース、どこで手に入れた?』


 スタンバンカーと言うワードを聞いたサウンドオンリーの人物が動揺をする。まさか、そことそこが繋がっているのか……と言う意味でも。


 この人物にとっては、情報ソースがフェイクであれば信用はしないのだが……リーガルリリーなので、信じているという具合か?


「あくまでも憶測ですよ、ダンジョン神のダンジョンが実は最初から別作品で流用する予定だった設定であれば、その設定を利用して制作委員会の裏をかこうとする……」


 そして、リーガルリリーは手で持っていたタンブラーの飲み物に口を付けようと考えるが、ARメットが邪魔で飲めない事実も判明する。


 メットの形状としてはフルフェイス型に近いので、飲み物を飲むのも食べ物を食べるのも、メットを解除してから出ないといけないのだ。


『憶測か……。制作委員会に聞かれたり、今回のように二次創作者が炎上させるようなことがないようにしてほしいもの……』


 そう言い残し、サウンドオンリーの人物は通信を切る。それから数秒後、劇中曲が終わるタイミングでリーガルリリーはタンブラーの飲み物に口をつけた。


 ARメットも解除しているのだが、今回も角度の関係で目は見えない。メカクレと言うわけではないようだが……? 



『次回、アバターシノビブレイカー、対電忍! ダンジョン配信王決定戦(後編)』


 やはりというか、今回もCM明けに次回予告のロゴが表示されている。後編という事で前編とサブタイもロゴも一緒だが……。


 バックに映し出されているのは、月華ツバキと……まさかともいえるアヤネだった。


 アヤネ自身は以前に顔見せに近い状態で登場したことはあるのだが、かなり久々に見えるだろう。


 そういえば、アヤネを題材としたスピンオフコミカライズもWEBサイトで掲載されているというのを踏まえると、もしかして……?


 お互いに忍装束なので、次回はVR側のダンジョン配信で……と思われる。


 両者ともに武器を未所持なのは、ネタバレ配慮なのか、それとも……と言う個所はあるかもしれない。


 第3クールラストというのもあり、いくつかの個所に決着が図られるのは確実だが……ダンジョン神を含め、まだ解決していない箇所はある。


 まだ、時系列も9月30日には若干の余裕があるので、そこまでには……かもしれないが。


 第3クールラストと言っても、本作は第4クールまであるという話もある。本当なのか? まぁ、その辺は……。


 ナレーション担当は、前回に続いてレインボーローズと月坂ハルカ。


 二人そろって「せーのっ!」みたいな掛け声が入りそうなテンションで……今回は入った。真剣に読み上げるはずのシーンなのに、と思われるが後編だけは真剣に読んだ様子。


 後編の部分はハルカが読み上げた。アフレコ中に突っ込みが入ったのかどうかは定かではない。



 今回のエンドカードは、ガーディアン新宿支部の支部長ことシノビ仮面。


 ガーディアンの支部単位では草加支部や足立支部も出ているようだが、新宿支部は今まで出番がなかったので、待望の……かもしれない。


 その背後には、様々な外見の人物がおり、その一部はパワードスーツであるアバターシノビも含まれていた。数十人単位ではなく、こちらも草加支部と同様に数人単位。


 実働部隊が数人と言う解釈もできるが、詳細は不明である。ゲーセンを数人単位で回すなんて……無茶ともいえるからだ。


 それ以外のメンバーは、特に名前のあるような人物が見当たらないので、もしかするとモブキャラと言う可能性も否定できないが。


 1名だけ、春日部支部のホップにも似たようなメイド服にツインテールと言う女性の姿があった。


 彼女のメイド服に名札があるわけではないので、イメージで書き加えた感じも……否定できないが、この作品なので何かあるだろう。


 バックにある背景、それはゲームセンターである。しかも、大手。さすがに名前はフィクションなので変えてあるような感じだが。


 新宿支部は表向きにはゲーセンを運営しているアミューズメント施設であり、新宿支部とは言っても複数のゲーセンがある為……そういう事かもしれない。


 前編では出番がなかったような新宿支部がエンドカード担当だったのには、何か意図があるのだろうか?


 別の意味でも波乱の展開があるのは……一種のフラグかもしれない。



【次回をお楽しみに】


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