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アバターシノビブレイカー_対電忍【小説家になろう版】  作者: 桜崎あかり
第36話『ARダンジョン、ジャミング計画《プロジェクト》』

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第36話その2

 9月5日、アレの日まで残り25日。渋谷区某所のARゲームセンターには、臨時休業を示す立て看板が入り口に設置されていた。


【本日、機器整備メンテナンスの為、臨時休業となっております。明日の来店、もしくは……】


 入り口にある電子掲示板でも臨時休業を表示しており、新宿もしくは別エリアのARゲームセンターの地図も表示していた。おそらく、こちらの店舗は営業中なのでご利用の場合はこちらへ……という事なのだろう。


 機器整備メンテナンス自体、ARゲームの場合は24時間営業の類ではないので、閉店中に毎日行われるケースが多い。


 それとは別に緊急メンテで休止と言うケースもゼロではないのだが、かなりの異例事態と言えるだろうか。


 この時にはガーディアンが様々なARゲーム施設で訓練を行っているため、その訓練も兼ねてメンテナンスを行っているのかもしれない。


 表向きはハロウィン暴走などの対応や防災という位置づけだが、実際は別にある。


 訓練を行ったのは新宿、渋谷、浜松町、秋葉原、高田馬場の5か所。高田馬場にはガーディアンの支部がないので、近場の支部から出張することになったが。


『まさか、ARダンジョンの配信王決定戦という流れになるとは』


「こちらとて、色々と信じられない箇所はあります。しかし、表向きに協力ショップの審査という事にして……という事は出来ますし」


 ガーディアン渋谷支部長及び渋谷支部のメンバーも、若干は半信半疑である。


 これを提案したのが自分たちではないという意味もあるかもしれないが……。



 時間を少し巻き戻し、9月4日。この日はある人物から予想外の提案が出されることとなった。


『ダンジョン配信王決定戦?』


『そうです。ダンジョン配信は動画サイト上でもトレンドになることもあるので、ある意味でもガーディアンの宣伝材料に出来るかと』


 定例会議に急遽姿を見せたのは、春日部支部のホップである。テレワーク参戦ではあるのだが……。


 その一方で、不在の支部がいるのかと言うと……まだ組織としては出来ていないという気配の群馬支部、新規参戦の浜松町支部位である。


 彼女が提案したもの、それはダンジョン配信のチャンピオンを決めるダンジョン配信王決定戦だった。


『確かに動画サイトでは、ダンジョン配信はブームだ。ARゲームでもダンジョン物はいくつか開発され、すでにロケテスト中のものもある』


『しかし、ダンジョン配信はリアルダンジョンで炎上行為があった関係もあって、あまり良い印象はない』


『そういった関係もあって、リアルダンジョンは衰退し、今はARダンジョンがブームになっていると聞く。確かにありと言えばありだな』


 一部の支部は反対はしつつも、プレゼン資料を見て質問をぶつけているような気配である。


『配信王決定戦? これを容易に賛同できるとは、他の支部もおもっていないでしょう?』


 それでも異論を唱えるのは、何と渋谷支部だ。普通であれば、新宿支部辺りが反論しそうなものだが……。


 渋谷支部としてはプレゼン資料にも目を通したうえでの反対意見である。


 全く資料を見ないで反対意見を出すようであれば、ガーディアンもそれまで……とホップが考えているのかは不明だが。


『確かに、ある勢力が企んでいるハッキング計画(プロジェクト)が事実であれば、それをカムフラージュする意味でも何かの手を打つのは必要ですが……もっと別のものを題材に出来なかったのですか?』


 渋谷支部もハッキング計画(プロジェクト)を阻止したいというのはある様子。それでも、ARゲームを題材にするというのは……向こうにも作戦を阻止すると明言しているようなもの、と感じていた。


『しかし、ハッキング計画自体はSNSのつぶやきやまとめサイト経由ではないソース経由のもの。有力な情報ソースなのは間違いない』


『近年はAIソフトを使用したフェイクニュースを使い、特定政党を炎上させようという炎上行為も存在したという話だ』


『そういったサイト経由ではない以上、その情報を信用に値する』


 他の支部は、ホップの提案に難色を示してはいるようだが、ハッキング計画の部分だけは信用していた。


『情報ソースに関しては、情報提供者との契約で名前をあかせませんが……信用できるソースなのは間違いないです』


 ホップの言う情報ソース、それは誰も指摘こそしないが、間違いなく春日野(かすがの)タロウなのは間違いない認識のようだ。


 渋谷支部が反対している理由は、もしかすると……そちらが関係あるのだろうか?


「そういえば、渋谷支部は過去に何度かネットガーディアンと小競り合いをしていたという話があったな。今回の反対理由に個人的感情を持ち出すようであれば、渋谷支部の権限レベルを下げざるを得ないだろう」


 渋谷支部が審議妨害するようなことをすれば、以前の草加支部や春日部支部のように会議への出入り禁止も辞さない……とも受け取れるような発言を秋葉原支部長が行う。


 これは明らかに釘を刺しているのだろう……と、思われる。


『確かに、春日部支部がネットガーディアンをベースにしたガーディアンというのも理由かもしれませんが、それは当支部の前任者による個人的にな恨みによるもの。今の支部長は、そういった個人の損得では動きません』


「では、それ以外に反対理由がある、と?」


『当然です。ハッキング計画が百歩譲って現実としましょう。しかし、ダンジョン(しん)は? 忍者構文は? それらを放置して配信王決定戦は、明らかに順序が逆でしょう』


 渋谷支部が反対する理由は他にもあった。ハッキング計画が事実だとしても、ガーディアンが対処すべき案件は他にもある。


 その中には、ダンジョン神や忍者構文も入っていたのだが、忍者構文は新宿支部がアバターシノビを投入することで、何とかできる形にはなりつつある。


『……これ以上やっても平行線と言うのであれば、結果だけを知りたい。こちらも、色々と作業の都合があるので』


 渋谷支部のワンマン演説を聞きに来たわけではない新宿支部のシノビ仮面だが、確かに彼のいう事には一理あるだろう。


 他の支部は新宿支部のように切り札があるわけではない。春日部支部の提案に便乗し、時間稼ぎをするという手もある……と言う考えの支部もいるだろう。


 

「結論は出たようだな。それでは、ダンジョン配信王決定戦に関しては賛成と言う方向で」


 秋葉原本部長は、結果を見てダンジョン配信王決定戦に関して採用することを決めた。


 反対したのは……まさかの渋谷支部のみである。神奈川支部と新宿支部、足立支部、池袋支部は投票を棄権することに。


 残る支部は全て賛成に回ったことになるのだが、その中には草加支部、さいたま支部、大宮支部、北千住支部の名前もあった。


 秋葉原本部は投票に参加していないが、棄権と言うわけではなく別の事情もあったのかもしれない。


(ホップは明らかに情報ソースを隠していた。周囲は春日野タロウと思っているようだが、あの情報は別だ……明らかに)


 渋谷支部は制作委員会とは別の存在が、今回の情報を利用して何かをコントロールしている、そういう風に見えていた。


 だからこそ反対に回ったのだが……現実は非情である。


 会議の全容はガーディアン限定で動画公開はされるだろうが……個人で視聴できるかどうかは定かではない。



 再び9月5日に戻る。


 投票の結果に渋谷支部は納得をしていないが、秋葉原本部長が認めた以上は意見に反論すれば、支部の活動資金などの停止だけでなく、渋谷支部が解体される危険性さえあった。


 ハロウィン暴走などに対応するためにもガーディアンが、このタイミングで解体されてしまうのは危険が伴う。


 この件に関しては、会議後の電話で渋谷区長からも「ガーディアンがこのタイミングでなくなるのは、避けてほしい」と忠告を受けた。


(バーチャルハロウィンへの完全移行を受け入れられるほど、市民もリアルイベントはあきらめていないという事だろう。炎上勢力がハロウィンを悪用して暴走しようという意味でも)


(一方で、ガーディアンに関して風当たりが悪い状態なのもこちらはわかっている。くれぐれも、ガーディアンと渋谷区が繋がっているという事は悟られないようにしてもらいたい)


 渋谷支部としては、バーチャルハロウィンへ完全移行し、それこそリアルダンジョンが完全消滅したようなことをハロウィンでも実行したい。


 その為の準備も万全にしているのだ。そのタイミングで出てきたジャミング計画(プロジェクト)は、渋谷支部にとっても、寝耳に水だった。


 渋谷区長からはバーチャルハロウィンに関しての技術供与の一件で色々とあったとはいえ、ガーディアンが繋がっているとはマスコミに騒がれたくない、と言うのがあるのだろう。


「分かっていますよ、渋谷区長。あなたの言いたいことも……」


 渋谷支部の支部長室、そこで渋谷の光景を眺めていたのは渋谷支部の支部長の男性である。


 しかし、このトーンとして女性声優が演じているような男声……と言うべきか。


 彼はガーディアンの制服は着用しつつも、どこかの個人VTuberのような特殊なARメットを装着していた。


 ある意味でも正体を悟られたくない、という事なのだろうか? その形状は、ブラックローズが着用しているものとは若干異なりそうだ。


 一種のゲーミング用ARメットと言うべきなのか、細部のデザインとは別にスポンサーのロゴも確認できる。


「ただ、こちらとしては制作委員会の都合に利用されたくはないのですがね」


 そして、次の瞬間にはARメットの機能を解除し、ガーディアンのコートのみを脱ぐ。



「世界は、戦争のようなもので変えられるような時代ではなくなったのですよ。それこそ、コンテンツ流通こそが……全てだ」


 このセリフは明らかに場面的な意味でも渋谷支部長の声なのだが……その声のトーンは明らかに女性の声だ。


 更に言えば、ゴリ押ししているようなトーンでもなければ、それこそ何か恐怖を感じるようなトーンでもない。


 まるで、ホビアニなどにおける「お約束」などと同じようなトーンである。


【アバターシノビブレイカー 対電忍】


 彼女の「全てだ」の発言の後に、タイトルロゴが右下に表示された。


 しかし、彼女の顔が明らかになっているようなカットは、この場面にはなかった。コートを脱いだ体格に関しても、それっぽいものを確認はできない。


 後半パートで判明するのだろうか?

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