第34話その3
・2025年7月25日付修正
TALES版移植に伴う修正。
成りすました通信→なりすました通信
ガーディアン神奈川支部になりすました通信がガーディアン足立支部に……という頃、ある勢力がなりすまし勢力を討伐していた。
それは足立支部が想定していたシナリオとは若干異なるが、討伐済みと言う認識に変わりはない。
確かにガーディアンも追撃を行っているが、成果を上げているのは……別の組織だった。
「まさか、このタイミングで便乗炎上勢とは、ね」
周囲を見て、若干呆れかえっているのはレインボーローズである。
SNS上の情報で、南千住辺りで炎上勢力と思わしき便乗忍者の目撃情報がある、と聞いて駆け付けた形なのだが……。
まさか、草加駅から電車で南千住まで行くことになろうとは予想外だったのもあった。
『他の個所は別のガーディアンが対応したらしい。そのほとんどは草加支部と春日部支部だが』
インカム経由の声は、春日野タロウである。
彼の方も色々とガーディアンの情報を集めてはいるのだが、他の支部は自分の場所で出現した忍者の討伐で手一杯らしい。
その中で例外ともいえる挙動で討伐したのが、草加支部と春日部支部だ。
ガーディアンのメンバー数的な意味でも、草加支部と春日部支部は地味に多い。
秋葉原本部で数百人規模なのだが、それよりも多いのだ。秋葉原本部は精鋭ぞろいとはいうのだが、それすら凌駕するのだろうか?
『どちらにしても、全体の8割は討伐済みと考えた方がいいだろう。残るは2割だが……』
話の途中だが、タロウの音声にノイズが若干混じり始め、遂には通信が途切れる。
ガーディアンの通信回線とは違い、こちらは特注のはずだが……何があったのだろうか?
「周囲にチャフグレネードが撒かれたような形跡はないけど」
周囲を見回す月坂ハルカは、急に無線が途切れた理由をチャフグレネードなどによる一時的なものと考える。
実際、長時間に及ぶジャミングだと電車の運用にも影響を及ぼし、それとは別のARゲームなどにも影響が出てしまう。
通信ジャミングであればピンポイントで手段はあるのかもしれないが、そういった技術はガーディアンも把握していて対策済みのケースが多い。
以前にあった新宿駅の運転見合わせ事件を踏まえれば、大規模なハッキングなどの類がマスコミに気づかれてしまう危険性もある。
今回のようなケースは、もしかすると新宿駅のケースを知ったうえで仕掛けたのだろうか?
しかし、忍者の姿をしてまで彼らが暴れている理由は何なのか……二人は理解できずにいる。
その若干前には何かが展開されたようなSEが流れたので、もしかすると……。
『そこの二人、ガーディアンだな?』
そんな二人の前に現れたのは、黄色の忍装束を着た男性の忍者である。
素顔に関しては隠しているようだが……目をサングラスで隠すのは、違和感しかないだろう。
持っているのは刀と言っても、実体を持った刀ではない。ARガジェットとしての刀なのは明白だ。
つまり、この周囲に展開されているのはARフィールドともいえる。すでに向こうの罠にでもはまったのだろうか?
余談になるが、どのような理由があろうと、殺傷能力のある武器を持ち歩けば銃刀法違反なのである。この世界の令和日本でも……当然だが。
したがって、彼が持っているのは殺傷能力の全くない刀という事だろう。電車移動だったら、駅の金属探知機を通ればアウトだが……。
「残念だけど、ガーディアンではないんだな、これが」
レインボーローズはARガジェットとしてのアサルトライフルを構えると、システムが起動してバトルモードに変化をしていたのである。
バトルが始まったわけではないので、引き金を引いたとしても銃弾などが発射されるわけではない。
(ガジェットのバトルモードが起動している……と言うことは?)
そして、バトルモードが起動していることに関し、何かがおかしいことにハルカは気づいた。
ARフィールドで無線のみをピンポイントで無効化出来るような技術があるのか、と。
ARガジェットの刀と言っても、刃そのものがAR映像と言うものもあれば、攻撃判定のある個所のみAR映像と言うものもある。
それを踏まえると……そういう事だろう。彼の忍装束も、アーマー部分はARアーマーなので、どこかにスポンサーのエンブレムがありそうな気配だが。
「私たちがガーディアンではない、そうだとしたらどうするつもり?」
ハルカの方も何かを察して臨戦態勢に入る。すでに黄色の忍装束の男性以外にも、複数の忍者が姿を見せ始めていた。
『ガーディアンでなくても、邪魔をする第3勢力であれば同じこと……我々の意にそぐわない勢力は、排除する!』
忍者刀を展開し、忍者は早速レインボーローズに襲い掛かろうとする。
その時だった!
『なんだ、ARバトルが始まったのはわかるが……このBGMは!?』
『隊長、こちらも何かが強制的に割り込みを入れています。これは明らかに……』
周囲の忍者が動揺をし始め、一部の忍者はすぐに倒れてしまう。
それと同時に、無の空間から姿を見せたのは、数メートルという全長の忍者ロボである蒼影だった。
しかも、こちらはハルカが呼んだわけではない。おそらくは、あの秋葉原の時と一緒でピンチに駆けつけたのである。
それを踏まえると、相手の忍者の様子が変化したのは……そういう事なのだろう。
(もしかして、そういう事?)
レインボーローズもインカムにBGMが流れていることに関して、もしかして……と思う。
これは、いわゆる処刑用BGMと呼ばれるようなものだ。
この曲自体は忍者をイメージしたトランスというジャンルの楽曲らしいが……明らかに蒼影を想定して作られたものではなかったのである。
もしかすると、別の忍者……それこそ、新宿支部が発見した、あの忍者なのかもしれない。
蒼影がある程度の忍者を撃破したのち、ハルカの前に駆けつけた。そして、コクピット各種がオープン、ハルカはそれに乗り込む。
(私もああいうのほしいけど、ないものねだり……かな)
ハルカが蒼影に乗り込み終わると、オープンとなっていたハッチなどが閉まり、再起動体制に入った。
それを見て、レインボーローズは少し退屈そうな表情をするが、さすがに同じようなものが二体は無理な話だろう。
さすがに、蒼影が量産されていれば……それこそバランスブレイカーの極致である。
『馬鹿な……忍者構文は我々の味方のはず。何故、ああいった連中に力を貸す?』
黄色の忍者は震えながら刀を構えるのだが、その構えを踏まえると……明らかに負けフラグなのは明白か。
『忍者とはありとあらゆる炎上を阻止するために存在する、対電脳の刀。忍者とは悪意ある闇の全てを斬る存在でなければならない……』
蒼影に乗り込んだハルカは、忍者構文の一文を言及し始める。つまり、そういう事なのだ。
この場に蒼影が現れたことが意味するもの、それを目の前の忍者はわかっていなかったのである。
「彼らが斬るのはあくまでも悪意ある炎上であり、それ以外のものを切り捨ててはならない……だっけ? つまり、あなたたちは悪意ある炎上の方、という事ね」
そして、レインボーローズは蒼影に乗り込んだハルカからあるデータを受け取る。そして、それに合わせるかのように続きの一文を読み始め……。
『その中で、人々は願った。SNS炎上を続ける悪意ある勢力の根絶を。そして、彼は現れた。SNS炎上を根絶するために……』
その後もハルカが別の忍者構文を続ける。
そして、そこでエンディングテーマが流れた。
『次回、アバターシノビブレイカー、対電忍……。復活! 蒼影・黄龍双剣』
前回は予告がないアニメ作品、公式SNSなどでWEB限定次回予告を配信するタイプの展開だったが、今回は次回予告のロゴが表示された。
そのバックにいるのは、蒼影なのは間違いない。一部で黄龍と思われるアーマーなどが装着されているようだが……。
ナレーション担当はタロウである。普段の声を踏まえて、普通に読み上げた程度かもしれない。
今回のエンドカードは、ガーディアン草加支部とゆかいな仲間たちの一部が飾る。支部長が中央にいるわけではなく、メンバーの方が目立っているのは気のせいか?
書かれているのは女性支部長であるアルストロメリア、喋り方が特徴的な商業VTuberの女性配信者、ブラックバッカラの影武者を演じた個人勢の女性配信者、それにメイド服姿にツインテールの春日部支部長ホップだった。
バックにあるのは、なぜかコンビニ。実は、草加支部の仮の姿がコンビニなのである。
新宿支部がゲーセン、ある支部はレトロゲームショップ、大宮支部は鉄道資料館とグッズ販売のショップ……と言う具合に。
男性陣は省かれたように見えるが……気にしたら負けだろう。この辺りはエンドカードの発注時に決まっていた、と言うべきか。
【次回をお楽しみに】




