第33話その3
『これは、まさかの展開と言うべきでしょうか』
とある男性配信者の動画が想定外のバズを記録し、拡散している。
動画内容としてはVR空間のダンジョン配信であるのだが、その内容には違和感を覚える視聴者もいた。
【構造がどこかに似ているような……】
【ダンジョン自体、似たような構造の場所はいくつかあるだろう。バーチャルならばなおさらだ】
【ARでも統一規格が出てからは、一部の構造以外でルートが似たようなダンジョンが増えたという話もある】
【統一規格自体は、安全性などの部分もあるのだろう。そこは差し引いたとしても……というのはあるかもしれない】
様々なコメントが飛ぶ動画なのだが、もっと衝撃的なのはこの後である。
【えっ!? これって、まさか?】
周囲の背景や他にも冒険者がいる箇所を踏まえても、ダンジョン配信者の目の前に現れた忍者には衝撃を覚える視聴者が多い。
その正体は、何とハンゾウだったのだ。こちらはリアルの方で目撃事例はあったものの、バーチャル側のダンジョンでは目撃事例が一切ないのである。
それが何故に、このタイミングで現れたのかは予想できずにいた。それ位に、衝撃展開……と言わざるを得ない。
カラーリングに関しても、黒ベースとなっているが……デザインは明らかに秋葉原に現れたものと同じだ。つまり……そういう事になる。
(偽物のハンゾウにしては、デザインがあちらに似すぎている。まさか、本物か?)
該当動画を視聴していた新宿支部長ことシノビ仮面は、明らかにそっくりすぎるハンゾウを見て驚きを隠せずにいた。
足立支部にはないという情報をすでにつかんでおり、どこに消えたのか気になってはいたのだが、ああいう形で利用されていたとは予想外である。
「まさか、ああいう形で運用されるとは……」
この動画を見ていたのは新宿支部だけではない。足立支部長も動画を視聴し、ハンゾウの姿を見て驚いていたのだ。
更に言えば、ダンジョンサバイバーと言うSNSで拡散したワードも独り歩きし、様々な場所で使用されている。
(新宿支部にもない、渋谷支部にもない、可能な範囲で探らせてはいるが……)
足立支部には独自権限があり、それを使用しての調査はしているが……いまだに発見に至っていない。
(そうなってくると、あの2か所しかないか)
あの2か所、彼の言う2か所とは片方は秋葉原本部。もう片方は……群馬支部である。
群馬支部は最近できたばかりで本部がなく、やっていることも群馬の防衛、独自ルールも「群馬県に不利益となる行為の禁止」のみ。
ハンゾウを転用したとなれば、群馬県の不利益以前の問題となるだろう。
あの男性配信者が炎上系インフルエンサーなどで有れば、話は別になるのだが。
ハンゾウ自体は蒼影の違法コスプレデータをベースにして制作した経緯があるため、違法コスプレを使用してハンゾウっぽくしているだけの炎上勢力の自作自演という路線もゼロではない。
そうなってくると、なおさら予測は難しくなっていくのだが……。
『返却したい? どういうことでしょう』
「額面通りの意味だ。これ以上、何を望む?」
草加支部長であるアルストロメリアは、とある場所へと連絡を取っていた。
それは、何と足立支部である。この段階で、応対しているガーディアンメンバーは足立支部長に連絡はしておらず……。
「こちらとしては、想定していた作戦が失敗したという都合もあるが……どこかに悪用されている可能性のあるものが、こういう形で返却されるのは、願ってもいないチャンスではないのかな?」
『……今、支部長に連絡を取る』
「支部長には伝える必要性はない。向こうも、おそらくは何かの動画を見て、ハンゾウが他所のガーディアンに使われているのでは……と思っている所だからな」
『確かにハンゾウは他のガーディアンへも所在確認をしている所、その路線もあるか』
その後、いくつかのやり取りもあったが、地下のレール経由でハンゾウを足立支部へと転送する準備を行い、即座に返却された。
「本当に良かったのか?」
これに関して、やや消極的なのは春日部支部のホップである。彼女は、さすがにガーディアンの制服で草加支部にやってきたのだが……。
「これ位のことはしておかないと、後々に影響する。ガーディアンは、まだ何かを残しているからな」
アルストロメリアの視線には、とある動画……ハンゾウがバーチャルダンジョンに現れた動画が見えている。
つまり、これを行っているのが草加支部ではない、それを証明するための返却でもあるのだ。
(あの動画は、十中八九、忍者構文に対するアンチ勢力なのは目に見えている。彼らは迷惑系インフルエンサーを神としている人物たちだ。目を覚まさせないと、いずれは日本が終わる)
彼らの使っているダンジョンサバイバーと言うワードも、調べたところ、まさかのWeb小説のタイトルと被っており、明らかに炎上勢力のやりそうなことだからである。
こうしたコンテンツ炎上を考える炎上勢力は、日本から一掃して……それこそ完全消滅させなくてはいけないのだ。
なかった事にするのは簡単だろうが、なかった事にしても似たような勢力が現れて同じことの繰り返し……それこそシリーズ物の特撮やアニメのような展開になるのであれば、どこかで止めなくてはいけないだろう。
「これは、どういうことだ?」
しばらくして、ハンゾウが足立支部に戻ってきた際、足立支部長がそれを見て驚く。
驚くだけでなく、どこで発見した、とも発言する。当然と言えば当然の反応だが。
「先ほど、ガーディアンが回収していたので返却する、と」
通話に出ていたガーディアンメンバーが若干の個所を省略して説明する。
それで納得するかどうか……と思われたが、支部長は予想外の反応をした。
「返却されず、そのまま悪用されているのでは……と思っていただけに、これは驚きだ」
「どの支部かは知らないが、感謝するぞ」
明らかに別の意味でも衝撃的な一言を彼は放っている。
彼としては新宿支部や渋谷支部にも独自権限を使用しているので、ある意味でも手詰まり状態になっていた。
更に言えば、秋葉原本部にある可能性さえ疑っていたのもあり、こうやって手元に戻ってきたのは歓迎するべきことだったのである。




