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モンブラン

「よーしこれで最後だな」

 夜。正門前に建て付けられた”桜祭り”と描かれたアーチの飾りを取り外すべく脚立に乗っている俺。

 文化祭で一番楽しいのはやっぱり準備してるときだな~とシミジミ感じながら留め金をスパナで外してると

「あ、もうおしまいなんだ」

 鈴を転がすような澄んだ声に振り返るとちょうど俺の足元。そこで今まさに外されようとしているアーチを見上げているのは

「えっとどなたですかね?」

 見たことのない女の子に問いかけた瞬間、留め金の外れたアーチがゴンと頭に炸裂してそのまま脚立から崩れ落ちた。

 しかしそこは柔道部。俺は華麗に前方回転受身を決めて見事着地。さすが京太郎君決めるとこはバッチリ決める。

 直後に後頭部を直撃したのが落ちてきたスパナだと悟ったときに京太郎少年はうつ伏せで悶絶していた。ぐうう。

「あのあの。楽しいですかその遊び」

 好奇心のある声に

「い、いえあなたが目撃してるのはただの不幸です。けっこう悲惨です」

 涙目で答えると

「うう、ごめんなさい先輩」

 先輩とな? 顔をあげて見ればこれまた目を見張るばかりの美少女。

 落ち着きのある目元には緑の艶を秘めた瞳。ツンとした小鼻。穏やかに笑んでる口元。

 フンワリとしたショートヘアとその声質とあいまって良家のお嬢様みたいな雰囲気だ。

「えっと、僕は今年の春からここに入学することになった大山葵と言います」

 ペコっと頭を下げた。ホホー僕っ子ですか。なんか苗字に並々ならぬものを感じるんですがきっと気のせいでしょうね。

「それからその、先輩」

「何でしょう?」

 言えば彼女は少しだけ頬を染めて

「そのまま寝そべってその、スカートの中覗かれると僕困るんですけど」

「ごめんなさい」

 確かに見てました。シマシマー。

「えーとはいはい。大山さんね」

 言いながらよいせと立ち上がれば

「いえ、僕のことならアオイで良いですよ。兄もそう呼んでますし」

 聞かないよ? お兄さんの名前とか聞かないよ? それより

「自己紹介遅れたけど俺は後宮ね。後宮京太郎」

「ウスロ宮さんですか?」

 心臓に悪いよ!

「えっと、普通に先輩って呼んでくれると嬉しいなハハハ」

 こんなドキドキはもう結構です。

「で、アオイちゃんは文化祭を見に来てくれたみたいだけど……その」

 言えば俯いて

「やっぱりもう終わってますよね。桜祭り」

 えーっとねー。もうすっごく、もうすっごく残念そうな顔してます。気の毒なくらい。

 そんな子に”キャンプファイヤーすら終わったよ残念でしたバイバイブー”とか言えないので

「良かったらちょいと見学してく?」

 機転を利かせる。もう分りやすいくらいが顔がパーっと明るくなりました。こんな顔されたら仕方ない。

「アオイちゃん実はすげー良いタイミングで来てるんだけどさ。今なら余ったケーキも紅茶も無料だし一緒に演劇部の部室行かない?」

 言えば瞬間

「うん! いきます!」

 元気の良いお返事がきました。よし。今ならアヤ先輩とかヨードーちゃんとか残ってるはずだしお邪魔しますか。


 そういうことで二人で夜桜を見ながら坂道を上り始める。ライトアップはされてないけどそこそこ月が明るいのでなかなかの風情。

「ねぇ先輩」

 本当に良い声だ。

「なになに?」

 聞き返せば

「夜の学校ってなんだかワクワクしませんか?」

 何となく分る気がする。けど

「変なクセつけちゃダメだよ? うちは下校時間厳しいから」

 先輩らしいことを言ってみるとニッコリとして

「分りました。フフフ」

 素直でいいこみたいだ。


 桜花ホールの一階。演劇部部室の小窓からはやっぱり明かりが漏れていた。きっと二人で仲良くやってるだろう。

”コンコン”

 ノックすれば

「どうぞ~」

 アヤ先輩の声だ。

「お邪魔しますー」

 と扉を開ければ中にいたのはテーブルについてティータイムのアヤ先輩にヨードーちゃん。それから何故かわが親愛なる義妹の

「ミィちゃんこんな遅くまで……」

「ミヤコ先輩?」

 新キャラの発言に思わず全員が目をパチクリとさせた。しかしミィちゃんは席を立って

「もしかして……」

 頭のテッペンから爪先までアオイちゃんを見てから

「アオイちゃん!?」

「やっぱり先輩だ!」

 急に二人は駆け寄って熱烈な抱擁。まかさの展開に俺もアヤ先輩もヨードーちゃんも再び目をパチクリ。

「なになに二人とも知り合いなのかな?」

 アヤ先輩が聞けばアオイちゃんから抱擁を解いて

「はい! ミヤコ先輩は僕が中学の時にいた声学部の先輩だったんです!」

「僕っこなのね!」

 そこは声を大にして言うとこなのか。しかし同じ中学だったのねミィちゃんとはフムフム。って

「声学部!?」

 俺が思わず聞き直せばクルっとこっち向いて

「ハイ! ミヤコ先輩って中学時代はいつもいつもコンクールで優勝して神童って言われてたんですよ!」

 あのスプラッタソングで!? アオイちゃんは胸に手を当てて回想するように目を閉じて

「僕も入学式で、ミヤコ先輩のソロパート聞いて感動してその日すぐに入部届け出したんです」

 あのスプラッタソングで!?@二回目。アンビリーバブルな発言に一人モノクロカラーになってる俺なぞそっちのけで

「本当に会いたかったですミヤコ先輩!」

 再び抱擁。感動の再開を果たしているアオイちゃん。この子すごいミィちゃんと仲良かったんだろうね。ミィちゃんもミィちゃんで本当に幸せそうに

「あーアオイちゃん相変わらずホカホカー」

 ギュっと抱き締めている。

「これからも僕のお菓子一杯食べてくださいね」

「もう食べまくるよ! すっごい食べるから!」

 ほーミィちゃんの中学時代の一端が明らかになりそうだ。

「アオイちゃんお菓子作るの好きなんだ?」

 聞いてみた。うちにも死ぬほど美味しいクッキー作れる子がいるけど。約二名。

「餌付けされてました!」

 なんかミィちゃんが自信満々に挙手ってる。アオイちゃんは”フフ”っと笑ってから

「はい。お父さんがパティシエなので小さい頃からミッチリしごかれてきました」

 本格的だ!

「餌付けされてました!」

 またミィちゃんが自信満々に挙手ってる。アオイちゃんは可愛らしくモジモジしながら

「最初はお近付きになりたいなって、その、下心で、お菓子をプレゼントしようと思ったんですけど」

 彼女が語ってくれたのをかいつまんで言うとこんな感じ。

 憧れの先輩に歌を教えてもらいたくて手作りお菓子を持っていったところ、それはもう美味しそうに食べてくれたのだそうだ。

 そしてそれが嬉しくて翌日も、その翌日もと毎日ミィちゃんに手作りお菓子をプレゼントしていくうちにいつの間にか目的は歌を教えてもらうことから

「……それより純粋にミヤコ先輩の笑顔が見たくなってきて。それでどんどん作るようになったんです。だって」

 アオイちゃんはそこで区切ってから頬を両手に当ててハニかみながら

「ミヤコ先輩ってすっごく可愛いじゃないですか!」

 俺はここで義妹の強さが年上限定じゃないことを知った。知るのであった。マル。

 語るだけ語ってミユキお姉様宜しくキュンキュンきてるアオイちゃんにミイちゃんが

「それー湯たんぽこうげき~」

 ギュっと抱き付いて頬ずり。

「あーミヤコ先輩温かいです~」

 二人ともホワホワしまくってます。何ですかねこのマイナスイオン発生装置というか癒しの結晶は。

 あとアヤ先輩あんた鼻血拭きなさいよ。

「あると思います」

 いや鼻血拭きなさいって。それからヨードーちゃん君もなんで赤面してるんだ。

「こ、こういうのも悪くないのう」

 この子もダメだった。大山葵。面白そうな子が入ってきた。

イメージの描きおこしです。精進します。。。

http://746.mitemin.net/userpageimage/viewimage/icode/i5926/

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