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ティラミス

「あ~めんどいめんどいめんどいな~」

 桜花学園の正門。”桜祭り”と書かれたアーチ型の飾りの下では小麦色の肌をした長い長いオーバーポニーの美少女、神条桃花が一人ブツブツと不平をもらしていた。

「クレープの二つ三つ摘んだかて売り上げにそない影響あるとわ思わんけどなぁ。しょーもな」

 押し付けられたパンフレットの山はトビキリ笑顔と共に全て配り終えたものの、姉のミキから

”そのままそこで見張りをしてなさい食いしん坊”

 というメールをもらったので今もこうしてポケーとしているわけだ。彼女は両手を頭の後ろで組みながら空を見上げ

「まーあっこでバイト料なしでクレープ売ってるんがええか言うたら、あんま差はないんやけど……」

「おーっと桃介発見」

 桃花がポニーを揺らしながら振り返ると、グランドへと続く坂道を後宮京太郎が降りてきていた。

「なんやエロノミヤ? お前も罰則喰らったんかダッサー」

「お前と同列に扱われるのが一番の罰則だな。ほれ」

 彼がズイと押し付けてきたのは湯気を立てているたこ焼きだ。

「差し入れだ。ありがたく頂きなさい」

 そんなことを言う京太郎に桃花は目を細めて

「毒入ってへんやろな?」

「入れてくればよかったと今俺は後悔した」

「冗談やって」

 天真爛漫な笑顔見せつつ彼女は京太郎からそれを受け取って一つにツマヨウジを刺し、そのままパクつきかけて、しかしその大きなマツゲの目でチラっと彼を見る。

 京太郎は肩をすくめて

「余りものだよ。気にせず食え」

 桃花は今度こそパクついた。アツアツのたこ焼きを見る間見る間に平らげていく彼女に

「お前熱くないの?」

「余裕や」

 そしてあっという間に容器は空。唖然としている京太郎に

「うちは粉モンにはうるさいけどこれは合格やな!」

 桃花はニッコリと笑った。その笑顔に溜息を吐いて

「関西娘のお墨付きか。心強いね」

 ヤレヤレと笑う。桃花は突然真顔になって

「もっと持ってこいや」

「調子乗るな」

 デコピンが返って来た。思わず目を閉じている彼女から容器を取って

「それじゃぁ陣中見舞いは終わりな、頑張れよ桃介」

 と背中を向けた彼のブレザーのカラーをガシっと掴んで

「なんやもう戻るんか? ヒマや付き合えや」

 それに京太郎は振り返って

「俺も10分くらいはゆっくりできると思ってたよ。お前が15秒で8個全部食うとは思ってなかったからな」

 つまり桃花に食べ物を届けるのを名目に彼も少しだけ休みに来たようだ。

「そういうことで、俺はこれから他クラスのバックアップにいくから。それじゃな」

 パタパタと手を振ってから背を向けて坂を上り始めて、でもまた振り返って

「そうそう。午後からヨードーちゃんの舞台始まるから見に来いよ」

 そう残してから坂を上り始めた。しかし今度は

「なぁエロノミヤ」

 桃花が呼び止めた。振り向いて首を傾げている彼に

「その、良かったらさ」

 頭を掻きながら

「キャンプファイヤーやけど、一緒に見いへん?」

 尋ねると彼は予想外にも

「ああ。すっかり忘れてたよ。そうそれ。俺お前をそれに誘いに来たんだわ」

 桃花は不覚にも顔を赤くして

「え、それホンマに……?」

 聞き返すと京太郎は大きく頷いてから

「ああ。俺とお前。えっとそれからミィちゃんにマリサにミキさんミユキ先」

 と確認のため指を折っていくと

「アホ」

 いきなりの返答に彼はポカンと口を開けた。

 しかし続けて桃花は不機嫌そうな目を向けて

「さっさといけバカ!」

 シッシと犬でも払うような仕草を見せる彼女に意味が分らないながらもムッと来た彼は

「ヒデ~やつ! せっかく差し入れまでしてやったのに礼どころかアホかよったく!」

「うるさいわこのドエロ! さっさといけ!」

「あーさっさと行ってくれるわ! とにかく伝えたからな俺は!」

 指差して念押すように言って、再びせかせか上っていく京太郎の背中に桃花は微笑んで

「鈍感なヤツやな」

 呟いた。そしてツマヨウジを口に咥えてまた正門に背中を向けて

「ほな少しだけ頑張るか」

 いつものように両手を頭の後ろで組んで待機モード。

「武装のアホたんは流石にもう来んやろうけどなー」

 神条桃花。秘められたその力は姉のミキをもしのぐ。そして今日も元気一杯。

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