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オペラ

 柔道場で朝練を終えた俺、ミィちゃん、ミユキ先輩はそれぞれ各々のクラスに分かれて桜祭りの準備へと取り掛かった。

 準備というのは学園の飾りつけ、クラスの出し物、部活の展示などなど何だけど学園(ウチ)の場合は全部が学生任せだ。

 ”自主性を尊重して”とのことらしいけど流石に教師が一切ノータッチだと放任主義という言葉の方がしっくり来る。

「おいキョウ。クラスの方はもう良いからミキさんの援護に回ってくれないか? あっちの方は手が足りてないんだと」

 快晴のグランド。そこで”たこやき”の看板に”たこやき?”の絵を描いてる俺にそう声をかけたのは幼い頃からの腐れ縁でありクラス委員長の紅枝(クレエダ)(ヒロシ)。通称はヒロシ。

 身長が195センチととにかくでかいのでニックネームはクマ。

「あいよシロクマ。けどお前こそ一人で大丈夫か? そんなでかい屋台を一人で」

 と見上げたのはヒロシの後で山積みになってる機材だ。

「余裕余裕。いざとなったらバスケ部の先輩にもお願いするって心配しなさんな」

 ちなみにうちの出し物は”移動たこ焼き屋”。なんと店を構えるのではなく当日屋台を引いて回るのだ。

 何でそんな無意味で楽しい企画になったかといえばコイツがグランド使用許可証を生徒会に提出し忘れたのが原因だ。

 だから店が設置できない。設置できないなら動き回ろう、そうなった。無念。


 さて準備で賑やかなグランドをウロウロとしながらミキさんを探し始めたんだけどすぐに発見。なんせクギを金槌じゃなくて指で押し込んでるのは彼女くらいしかいない。

「どーもミキさん援軍です。そして何やってるの?」

 薄い金属板をモクモクと指でムいては釘で固定してるシュールなショートヘアーの美少女に声をかけると彼女はその特有の赤い瞳を向けて

「こんにちわ京太郎。”クレープ”の看板をチギリ絵で作ってるんですよ」

 艶っぽく微笑んだ。

「へ、へー斬新なアートだね。製作過程が」

 突っ込めば彼女は嬉しそうに”フフ”っと笑ってから

「ホメても何も出ないですよ?」

 ホメてないよ。

「せいぜいクレープのタダ券10枚あげるくらいですからね。ハイ」

 すごい出たよ。手渡された券をありがたく頂いてポッケにしまう。後でミィちゃんやマリサにもあげよう。

 さてこの子の名前は神条美樹。通称はミキさんであのミユキ先輩の従妹に当たる人だ。

 普段は物腰柔らかで大人っぽい雰囲気の美少女なんだけど怒ると手が付けられないくらい怖い。そして強い。あとエゲツナイ。

 どのくらい強いかといえばマリサとミィちゃんが二人でかかってもたぶん勝てない。

「そうだ。良かったらクレープのメニューを見てくれませんか?」

 ミキさんは”チギリ絵”を完成させると付近の作業机に無造作に置いてあるノートを手にとって

「今のクレープのラインナップはこんな感じです」

 開いて見せてくれた。


--ミキノート--


チョコバナナクレープのキャンディトッピング

ブルーベリークレープのキャンディトッピング

ツナマヨサラダクレープのキャンディトッピング

ベーコンエッグクレープのキャンディトッピング

キャンディークレープのキャンディトッピング

キャンディーのキャンディトッピング

キャンディ

いちごのキャンディ

メロンキャンディ

やっぱりキャンディ

キャンディ最高!!


--ミキノート--


 俺は笑顔でノートを閉じて

「すごく斬新ですね。特に後半クレープですらないところが」

 と言うかもはやキャンディ以外何物でもないといところが。

 彼女は俺のコメントにまたクスリと笑ってから

「ホメても何も出ないですよ?」

 だからホメてないよ!? 

「せいぜいメロンキャンディ一袋くらいしか」

 ゴソゴソと制定カバンに手を入れてる彼女に

「い、いや別にいいです」

 言えば少しションボリとしたので

「ひ、一つだけもらいます!」

 慌てて返答すればニコリと笑って

「じゃぁ京太郎。口を開けて下さい」

 そしてエメラルド色のキャンディを一つ指で摘まんでるミキさん。え、まさか。

 彼女はルビーのように綺麗な瞳を向けながらそっと顔を寄せて

「あーんです。あーん……」

 そこはかとなくセクシーなので顔が発火する。

「いや、あの自分で」

 テンパってるとさらに顔を寄せて来て

「あーん……」

 やばい良いにおい……。そのままツイと口元にキャンディを押し当てられる。仕方ない。かなり恥ずかしいけど今なら人目もないので

「あ、あーん」

 口を開けるとパクっと押し込まれる。ミキさんはまた艶っぽい笑みを浮かべて

「メロンソーダ味です。美味しいでしょ?」

 コロコロと口に転がしてみると確かに美味しい。爽やかな甘さと清涼感のある香り。そして子気味良く弾ける炭酸。

「あー確かにこれはイケますね。やばいクセになりそう」

 ガチで美味しいです。うん。やばい。一人ヤッホイしてるとミキさんは手を後に組みながらニコニコとして

「京太郎だけですよこれあげたのは。特別」

 そういうセリフを不意打ちで言われるとキュンとなってしまう。ううう。

 神条美樹。空手部主将であり独特な色気のあるこの人、今日もキャンディへの拘り具合は特別のようだ。

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