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週末に向けてのお知らせ

「突然ではあるが京太郎。私の愛刀のサビになってみる気はないだろうか?」

「明らかな出オチですね。おはようございますミユキ先輩。理由など伺ってもよろしいでしょうか?」

 平日の早朝。柔道場。京太郎君は青畳の上でミユキ先輩と制服姿のまま向かい合って二人きり。

「ここ最近、私は普段の激務が祟ったのか慢性的に低血圧らしく体がどうにもダルくてな。つまりヤスツナも同様に鞘走って鞘走って仕方がないわけだ。お前なら分るだろう?」

「何を分かれと云っているのかさえ分りかねます。真意も測りかねます。そして理由の如何に関わらず全力を以って御遠慮致します」

「固いことを云うな。私とお前の仲じゃないか。一日限定」

 指を一本立てて見せた。朝一から人権侵害も甚だしいよこの人。俺も一本立てた。

「人生一回ぽっきり一度きり。コンティニューはありませんので重ねてお断り致します」

「一度きりの人生なればこそ相応しい散り場所をくれてやると云うに」

 この人はどうしても後輩を三途へ追いやりたいようです。

「結構です。男たるもの死に場所ぐらいは自分で見つけますとも」

「水臭いヤツだな」

 ユキたんが血生臭いのですよ。

「まぁ、冗談はさておき。寛大な私はお前に弁明の機会など与えてやろうと思う。その格好は果たしてどういうつもりだ?」

 お姉様の立てた指が俺に向けられた。俺は頭をかきながら

「え~っと察するに、やっぱりステビアちゃんの格好をしてないことですよね?」

 お姉様はその切れ長の目をいっそう細めて

「自覚しているのなら一層性質が悪いな。もはや弁明の余地もない。私の堪忍袋の緒がスッパリ。そこに直るが良い」

 スラリと童子切安綱を抜いた。この人は生まれてくる時代を確実に間違えている。俺はそもそも入る部活を間違えている。

「せめて痛み無きようハネてやる。切り口鮮やか。驚きのまったいら」

 気遣いの仕方も順調に間違えている。致命的でさえある。そもそも何故平成の平日の私立高校にて少年京太郎君は刃傷沙汰に怯えなくてはならないのかを誰か教えて欲しい。しかしながら。

 俺は云われたとおり正座してから

「弁明の代わりに長ったらしい辞世の句を読んでも良いですか?」

「その心意気や良し。云って見ろ」

 このように二年もすれば接し方も心得てくると云うもの。そうして俺は事の次第を話すことが出来た。


 本日の早朝午前五時。いつもの如く俺の寝室に、恐らくはスプラッタソングでも口ずさみつつモーニンモーニンしようとやってきた義妹ことミィちゃんはベッドの上に見知らぬ美少女がすやすやと眠っているのを発見した。

 この事態に対し、彼女はしばらくミョンと逆立っているアホ毛をクエスチョンの形に変えてムムと思案を始める。額に指も当てる。

 ウェア・イズ・マイ・ブラザー&フー・イズ・シーである。そしてある結論に達してからその手をポンと打った。アホ毛も治った。

「食べられたんですマストビー!」

 完全無欠に、そして完璧に、寝惚けていた。

 そのまま大慌てで姉さんことマリリンに通報すべく部屋を飛び出たミィちゃん。脱兎の如く自室に戻ってスースー寝ているマリリンの耳元で

「姉さん姉さん起きてください大変です兄さんが食べられました! 美味しく食べられました! 美味しく食べられました! 美味しかったです! ごちそうさまでした! お粗末さまでした!」

 マリサそれ聞いて飛び起きて

「何ですって! 早朝午前五時ジャストに私のフィアンセこと京太郎さんを平素通り何事も無くモーニンモーニンしに行ったらベッドの上にはショートヘヤーの美少女がすやすや寝息を立てていたですって!? しかもBカップですって!?」

 奇跡的な聞き違いだった。そしてやはり寝惚けていた。

「そうですそうですそれですマストビー!」

 パンパンとベッドを叩く義妹。いやはや姉妹とは恐ろしい。以心伝心とは恐ろしい。貧乳とは恐ろしい。

 弾丸の如く飛んでいったツインテールは弾丸の如く京太郎の寝室へ飛び込み。鬼さえ遁走するような剣幕にて俺のベッドで寝ている美少女に警告すらもなく

「私のフィアンセをどこにやりましたのこのBカップ女狐!」

 ナチュラルに弾丸をブチ込んだ。リミットブレイク技:絶・破城鎚×3。


「早い話、それが俺だったわけなんです。涙なしに語れないですよね。まぁ、それでステビアちゃんセット壊れちゃって今に至るわけです。純然たる被害者です。並の人間なら死んでた自信さえあります」

「なるほど。事情は分った。相分った。確かに役に成り切る為には病める時健やかなる時あまつさえ寝ている時もコスチュームを着用していろと忠告していたのは山之内だったな。ふむ」

 気のせいか、今日のユキたんは何時にも増して時代掛かっている気がする。妙にそんな気がする。もしや放課後秘密裏に行われているメイド特訓の影響か? お帰りなさいませ親方様とかやっているせいなのか? やっているのかは知らないけど。

「お分かり頂けて幸いです。ちなみにそれを強要し脅迫していたのは他ならないミユキ先輩の大親友でもある加納先輩です。三分おきに電話して「どう? ウィッグの付け心地はハァハァ」とか被害届のラインです。打ち切りフラグ」

 お姉様は「まぁアヤには良くあることだ。瑣末な問題」と納刀してから

「なるほど合点がいった。それでお前は朝から三日間雨ざらしにあった週刊誌のようにズタでボロな訳だ。フフフ。そう云うことなら仕方がない。フフフ」

 この人笑ったよね? 人の不幸を。 二回も笑ったよね? 人の不幸を。 

「お分かり頂け恐悦至極」

 反論なんかしませんよ。しかしほんと朝から災難な目に合ったよ全く。溜息。

「しかし首は刎ねるがな。結末固定の物語」

 なんでよ!


 「用意周到」も度が過ぎれば「設置済みの罠」に云い換え可能。

 不可抗力というかマリサの誤爆により女装セットを失って「脱・男の娘」に何となく安心していたところもある京太郎君。そんな俺がミィちゃんと共に朝錬を終えて柔道場を出ると桜花ホールの入り口にはアヤ先輩が待ち構えていて。

 メガネの奥の目を不審人物と肉食動物の中間レベルに光らせながら

「こんなこともあろうかと思ってアタシちゃんと予備は用意してたんだからうふふふ隣の演劇部部室へいらっしゃいな」

 手をコマネキわきわきわき。そうして何事も無く、順調に、順風満帆に、ステビアへのトランスフォームは完了した。予定調和と云うものである。


 午前中の授業は平素通り寝て過ごし、昼食も平常通りミヤコシスターズと共に頂くことになった。

 本来であれば京太郎君、いつもここで怨嗟がトグロを巻いたような視線を全身に浴びるのだけれども、今は自分もその楽園・花園を構成する一輪の花になったらしく、クラスメイトはまるで高嶺の花畑を見上げるような視線でステビアちゃんを見送ってくれるようになった。

 女の子としては勝ち組で。

 男の子としては負け組で。

 俺としてはどうなんだ?

 グランド。青空の下、染井吉野の下、広げた敷物の上、そんな場所でいつものステキな女性陣に囲まれつつ、正座しつつ、お弁当頂きつつ、アイディンティ等を問うてみるステビアだったりするのだ。

 しかしながらこれだけは云っておこうと思う。俺は真右を向いて

「もうお前が一番オッサンだよな?」

「ぶふ!」

 突っ込みに吹いたのは俺の真右。桃介である。アグラをかいて左手にカツサンド、右手にコーヒー牛乳持ってラッパ飲み。見事なまでのオッサンぶりを発揮。いかんなく発揮。だから云ってやった。高らかに宣言してやった。

「い、いきなり何抜かしてるとるねん昼飯返せゲホッホ!」

 涙目で咳き込んでるモモちゃんを見るとまったり和んでしまう自分がいる。流れる桜の花びらに目をやると、詩などを詠んでしまう自分がいる。

 ――桜舞い散る、春麗らかなグランド、たゆとう雲の、青空の下。

 ――コーヒー牛乳吹き散らかす、小麦色の肌。

 ――ポニーの美少女、名前は桃花、十七歳。

 絵になるよな。うんうん。

「何時までもハシタナイ格好しているからステビアにそんな事を云われるのですトウカ。身から出たサビ、もしくはミントキャンディと云うものがそれです。改めることですね」

 そんな斬新な指摘をしているのは色気や艶っぽさと云う項目ではシスターズ髄一のミキさん。もちろん身からそんなファンシーなものは出たりしませんよ。

 さてそれはそれとして。

 彼女は現在、片膝を立ててそこに肘を乗せると云う女の子にあるまじき実に男前なポーズを取っている。手にはティーカップ。中は水飴の紅茶割り。紅茶の水飴割ですらない。水飴紅茶比が97対3。紅茶風味の水飴? しかしそんなことより。より。より。

 彼女は制服である。故に下は水色のスカートである。そして片膝を立てている。ならばなればしからば絶対領域がものすごい勢いでオープンしちゃっているのではないのか、等と興奮してはいけない。

「なんやエステノミヤやらしい目しとるな」

 目を細めたモモスケの指摘。どうでもいいけど口の周りに牛乳ひげ

「エロノミヤ+ステビア+ウシロミヤだよな。なんか美容と健康にも良さそうなネーミングだけど瞬時に悟った俺を褒めるといいよ」

 彼女の仰る通りさぞかしやらしい視線を俺はミキさんに送っていたのだろうけれど、絶対領域はしっかりスパッツがガードしているのだ。ここは俺に任せろ、である。無念である。

 これも実は週末にオープンを控えたルーチェの影響だったりする。つまりは――ミキさん、ボーイッシュな役をやるのです。ターゲットは女性の模様?

「ねぇねぇキョウ。少し良いかしら?」

 そうして俺に手作りミニハンバーグを箸で差し出しつつ聞いてくるのはマリリン。今朝方襲い掛かってきた恐怖の幼馴染。今をときめくツインテール。アイアンフィスト・ザ・マリサ。クイーン・オブ・貧乳。今世紀末美少女伝。ペッタン妖怪猫かぶりツインテール。お前のようなツインがいるか! である。脳内言語漏れる前にアフィリエイトはこの辺りで止めておこう。何事も中庸が肝心要と云うもの。

「だだ漏れですわ京太郎さん」

「はははご冗談を」

 お嬢定番100万ドルの笑顔がそこにはあった。

 髪よりも青いステビアの笑顔がそこにはあった。


 ――この辺りCERO:Z指定につき割愛させて頂きます。御了承ください――


「あのねキョウ」

「何でございましょうかマリサお嬢様ゴフ」

 髪よりも右眼が青くなったステビアちゃん。殴られた? まさか。階段から落ちたんですよ。ええ。もぐもぐもぐ。口にはハンバーグ入ってます。ところでマリリン、ちょっと頬をピンクにして

「寝る時の格好なんだけど、やっぱりその、ステビアちゃんの格好止めてくれないかな? また勘違いしたらほら、なんていうかその。私もミヤコちゃんもびっくりしてたし。ね?」

 首を傾げる可愛いマリリン。たぶん俺が一番ビックリしたと思うよ。睡眠中に鉄拳三連発ですから。ていうか死にかけたと思うよ。そういうことでステビアちゃん、頷いて

「うん、俺もそれ思う。そう思った。思い知った。今朝方。身を持って」

 同意した。

 他方では桜を背景にミィちゃんとユキたんとアオイちゃんがイチャイチャやっていて。美月ちゃんがミキさんとモモちゃんにクッキーテロをやっていて、まぁつまりは至極平凡なお昼だった。

「はい、これステビアちゃんの分ね」

「有難う美月ちゃん。お気持ちだけで心が折れそうですアハハハ」


 放課後。食堂にて。

「ねぇアオイちゃんちょっと聞きたいんだけどさ?」

「明日の降雹確率なら全国的にゼロ%ですよ先輩」

 陳列されているお菓子を買いまくるどころか買い占めているアオイちゃんは胸いっぱいにスナック菓子を抱きながら振り返った。演劇部部室を勝手にお菓子部屋に変えていく彼女である。

「そうだろうね。そんなの降ったらエライことだね。あとズレた天気予報とかしなくてもキャラ立ちしてるから大丈夫だよ。斜め右下に」

「それ聞いて安心しました――直後にちょっと凹みましたボク。ところで何ですか先輩」

 ひとまずお話と云うことでお菓子はテーブルへ。

 ステビアちゃんはいつものクセで腕組みしそうになったけど自重して、女の子らしく手を後で組んだ。壁にアヤあり障子にアヤありである。

「そろそろルーチェの開店告知を始めようと思ってさ。プロモーションって云ったら大げさだけどヨードーちゃんが昨日から公式ホームページを立ち――」

「先輩今スカートの下は縞パンですか?」

 ステビアちゃんは帰ることにした。

「ああ~ウソです! 見なかったことにします!」

 両手でガッシとエリを掴まれ

「ヨードー先輩がホームページを準備してたのは知ってるんですがついに完成したんですね! カウンターはどのぐらい回ってます?」

 振り返るステビアちゃん、咳払い。

「いやそれが予想外にアクセスが凄まじくてさ、特にスタッフ紹介ページが」

「ですよね~何せ学園のオールスターですからねうふふふふ」

 両手を口に当てて笑っているボクっ娘。一応君も入ってるからね。まぁ俺もだけど。アオイちゃんそれからちょっと長めの前髪をかき上げて

「えっと、一番人気とか分ります?」

「もち。データ収集に抜かりはないよ。ちなみに当ててみて」

 云えば口元に指を当ててアオイちゃん。

「ん~。ボクの好みはミヤコ先輩のエクレールが筆頭ですけれど、予想としてはお嬢様属性Sランクのマリサ姉様か正統派ド真ん中のメイド長マドレーヌことアヤ先輩だと思います。どうです?」

 アヤ先輩とな。なんと予想外――とは思わず、実はこれなかなか手堅い読みだなと同意してしまった俺がいる。実は俺も一番人気はアヤ先輩だと予想していたのだ。

 何故なら理由は単純。そのあまりの完成度の高さ故、である。伊達に演劇部部長は張ってない。伊達に桜祭りでジュリエットを演じていない。

 あの桜花学園オールスターを集めた甲乙の付け難いメンバーにおいて、それでもトップに君臨出来てかつしかるべきは加納綾を於いて他にはないだろう。これは云い過ぎも何でもないのだ。

 ――実演を見てしまった俺やアオイちゃんとしては。

 しかしながら、である。俺はエメラルドの艶が相変わらず綺麗だなぁ、とか思いつつアオイちゃんの目を見ながら

「良い線いってるけど、加納先輩は二位。一位はルーチェのマスコットキティのシャルロットことミユキ先輩でした」

 これはこれで十分納得の行く結果である。腕組みのアオイちゃん。

「黒髪スーパーロングの需要は安定してますね。それにネコミミ、鈴、シッポ。露出度高め。おまけに写真撮影の時若干涙目でしたよね先輩。その辺りが全部プラスに働いたんでしょうか?」

「そんな感じだろうね。告知を前からしてたせいもあると思うんだけど、掲載後数時間でアクセスがカンストする事態になってサーバー落ちまくるから一度紹介ページを切ったぐらいだよ」

 流石にヨードーちゃんもびっくりしたそうな。

「既に初日は大入りの予感ですね。ふふふ」

 アオイちゃん嬉しそうだ。ステビアちゃん、釣られて笑う。

「これ、リアルなお話だけどさ。今ヨードーちゃんと美月ちゃんがルーチェの入場整理券をデザインしてる最中だよ」

「整理券? どういうことですか?」

 キョトンとした。この子は表情の変化が面白い。

「アクセスの多さを見た園田先生がさ。初日から一週間だけ予約制かつ30分入れ替え制にしたらどう? って提案してくれたんだ。それでチケットをネット予約で受け付けたらなんと開店から閉店までソルドアウトだよ」

 えー!! っと今度は目を丸くしたアオイちゃん。やっぱりこの子は表情の変化が面白い。それから両手をグーにして

「やっぱりスタッフ紹介が大きかったんですね! 神条会なんのその!」

 慌ててその口を両手で塞ぐステビアちゃん。目をパチクリのアオイちゃん。周囲確認。誰もいない。手を離す。

「すいません。そう云えば学園の皆結構センシティブになってましたね」

 ペコリのアオイちゃん。気にし過ぎかもしれないけれど万一と云うこともあるにはある。最初は慎重に。

 アオイちゃんはホッペをかきながら

「でも、それだけ多いと一週間大忙しですね。ボクは小さな頃からそういう環境で育ったので平気ですけれど、その、皆さん、大丈夫でしょうか? あ。お菓子食べます先輩?」

 答える前にポテチの袋をパーティ開けしたアオイちゃん。

 せっかくなので二人してテーブルに着座し、それを摘むことにした。  

「まぁ体力勝負ならシスターズは心配いらないと思うよ。今回は桜花学園美少女オールスターであると同時に戦闘力オールスターでもあるしね」

 云えばアオイちゃんニコニコしながら

「戦闘力オールスターって云いましたけどその中にアナグマ先輩が入らずに先輩が入ってるって云うのは戦力的にあってるんですか~?」

 むむ、生意気な。

「もちろんだよ。京太郎君にかかればシロクマなぞデコピン一発でKOだよ。伊達に柔道はやってない。ただし股間に当たればね」

 アハハと笑うアオイちゃん。しかしポテチを食べる仕草までお上品である。下ネタホザいてる俺とは大違い。

「あ、先輩。手とか拭きます?」

 そうして差し出されたハンカチはシルク。ハンカチがシルク。ほんと、マリサと同じ根っからのお嬢様だね。

「いやいや大丈夫だよ。後で手洗うしさ」

 まぁ――

 ――ポケットマネーで喫茶店買うぐらいだもんな。

 あ、そうだ。

「そうそう本題なんだけど、期間限定だけどルーチェに助っ人も来てくれるみたいなんだ。その件で加納先輩から伝言ね」

「拝命します!」

 妙に気合入ってる。ステビアちゃんは当時のアヤ先輩を再現するようニコニコとして

「「良かったら彼女の指導監督してくれないかな」だそうです」

 声も真似てみた。なかなか上出来。ヴォイスチェンジャーの扱いも慣れてきたのか。ピタっと動きが止まったアオイちゃん。そして目がキラキラ。

「先輩今非常に重要な事云いましたね? メイド喫茶に助っ人と云いましたね?」

「お察しの通り女の子です」

 苦笑いなステビアちゃん。

「助っ人はミユキ先輩繋がりらしくて、年はアオイちゃんの一つ上、つまり俺のタメらしいよ。だから17歳か」

 云いながらスカートについたお菓子の粉を払う。あ~スカートハイてることに対する違和感が消失しつつある今日この頃。

「年齢と性別以外に分ることないですか? こう、属性とか」

 属性て……。俺は思い出せる限りを思い出して

「ん~、気のせいかもしれないけれど、何となく云いにくそうにはしてたんだよねミユキ先輩。珍しく歯切れが悪かったというか何と云うか」

「サプライズとかあるんですかね? 実は「私には美月の他にももう一人妹がいた~」なんて」

「あ、それいるよ」

「えー!?!?!?」

 予想外のサプライズだった。

 そのままの流れで、俺は園田家の三女である美花ちゃんについてお話することになった。

 ポテチの袋が空いた頃、まぁ一通りの説明が終わり、アオイちゃんはアゴに手を当てつつ頷きつつ

「桜花学園の学園生だけど休学中なんですか。ふむふむ」

「うん。園田神社の正式な跡取りらしくてお父さんと一緒に全国回って修行中。やってることは前時代的っぽいけど頭の良さは超ハイテク。ぶっ飛んでるよ」

「と、云いますと?」

 俺はここだけのお話、として断ってから顔を寄せ

「神社をパニックハウスに改造したり暇潰しでエリア51にアクセスしたりIPCCのクライメートゲート事件で流出したメール情報握ってたりケネディ暗殺の真犯人知ってたり夏休みの工作で月面着陸可能な小型衛星を作ったり出来る。あとその気になればと云うかならなくても米軍の防衛システムにハックして一人世界大戦起こせるレベル。そして終結させるレベル。寝起きに99桁同士の掛け算聞いても1秒掛からず正解を出せる。冬休みの宿題でポアンカレ予想解いた。あと一部でフリーメイソンから勧誘されたなんて話もある」

「……ネタですよねお兄さん?」

「本当なんですお嬢さん」

 しばしの沈黙。それからアオイちゃんはいっそう顔を寄せて

「……助っ人って、まさかその子ですか?」

 俺はその目を見つめ返して

 厳かに云った。

「んんん」

 コケた。

「そ、そこそこ引っ張った割りにそんなオチなんですか」

「いや、って云うか助っ人の子は俺のタメだからね」

「そうでしたね」

 よろよろ立ち上がるボク娘。パンパンとホコリを払う。

「それでその、助っ人に関する情報って他にあります? こう趣味とかでも良いですし」

 あ、そうだそれだ! 

 俺が手を打ったのを見て察したオアイちゃんがまた顔を寄せる。俺は彼女の期待に応えるべく、思い出したばかりの事実を告げた。

「彼女はガンマニア!」

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