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15:ふ~む……やっぱり見間違えというわけには

 土曜、早朝午前5時。厳しい柔道部の練習は土曜日もあるんだけど本日はルーチェの関係でお休み。

 だから今日は割とタップリ寝られるにも関わらず身体に染みついた習慣というヤツで、いつもこの時間帯はまどろむように目覚めてしまう。

 ムニャムニャと寝がえりをうてば

”ギィ”

 という扉の開く音。ミィちゃんがまた可愛く誤爆しに来たのだろうか。たまに平日のノリで寝ぼけてやってくるんだよね。仕方ないお兄ちゃんは寝たふりしてあげようか。義妹の数少ない楽しみらしいしムニャムニャ。

「……えっと、確かここでこんな風に」

 とか言う多少違和感のある声と一緒にいつも通り京太郎君をオンマさんにして

「も、モーニンモーニン?」

 ん? 御歌がないな? と眠気眼を開ければそこには何故か赤毛ツインテールの美少女が頬をピンクに染めていて

「も、も、モーニンモーニンよキョウ? 起きて」

「……」

 ああ俺もかなり疲れてるらしいな。やれやれ

「目の前には可愛いミィちゃんがいるというのに何の間違いか妖怪猫かぶりツインテールの姿に見えてるじゃないか。京太郎君ともあろうものが発育良好な義妹と有りや無しやの幼馴染のバストサイズを見間違うなんて部活のし過ぎだなきっとごめんねミィちゃんモーニンモー」


-ただいまマウントポジションからの打撃が入っております。しばらくお待ち下さい-

 

「おはようございますわ京太郎さん。お目覚めいかがかしら?」

「おはようございますマリサ様。”起こす”と”殺す”の意味を勘違いされてないでしょうかゴフ」


 キッチンのテーブルにて。

 マリサが用意したと思われるガーリックトーストとベーコンエッグ&サラダという美味しい朝食を頂きつつも、俺は半殺しよろしくにこの時間帯に起こした真意を尋ねてみた。

 マリリンは俺のカップにコーヒーを注ぎながら 

「今日はルーチェで衣装合わせがあるって言ってたでしょ? その関係よ」

 それはアヤ先輩から連絡貰ってるからもちろん知っている。だけど

「時間が著しく違わないかな? 確か昼前集合だったはずだけど」

 その証拠に遅刻とは無縁なミィちゃんがまだ寝てるし。俺の抗議の視線にもマリサはニコニコとしながら

「実はね」

 と切り出して

「前回に皆で簡単な接客チェックしたでしょ? そのときにするはずだったキョウのスペシャルイベントがアヤ先輩の都合で出来なかったのよ」

 言うので

「というかあれ以上続行してたら失血死してたと思うんだ……って」

 スペシャルイベント? 俺が首を傾げたのがマリリンにとって意外だったようで

「あら? 加納先輩はもうキョウにだけはメールで伝えてあるって言ってたわよ?」

 メール? 言われて見れば以前にこんなメールが届いてたような。 

 ”今日は後宮君もルーチェに付き合ってね? 本番で戸惑わないようにうふふふ”

「……」

 あれは何をするつもりだったのだろうか。少なくとも同日の帰りに届いた

”後宮君:ステビア”

 というあのメールと無関係ではないと思う。嫌な予感。つまり悪寒。しかしここはハッキリさせておこう。

「そのスペシャルイベントとやらを今日実行するために早起きしたと理解してOK?」

「そうよ。まぁちょっとした余興らしいんだけどね」

 サラっと答えたがこの違和感を見逃してはいけない。

「でもどうしてマリサはその”ちょっとした余興”に五時起き朝食付っていうハイレベルな協力体制なの? なんぞ見返りあり?」

 聞けばツインテールは100万ドルの笑顔で

「”一日キョウをレンタル出来るようミユキ先輩にお願いしてあげる”ってアヤ先輩が約束してくれたの」

「ねぇマリサ人身売買って知ってる?」


 俺とマリサがルーチェに到着したのは午前6時半頃。

「おはようございます」

 とその扉をノックすればルーチェ独特の”リンリン”という涼やかなベル音、そしてそれにも負けないほど澄んだ良い声で

「いらっしゃいませ。ルーチェにようこそ」

 と笑顔で迎えてくれたのはアオイちゃん。そしてその隣で目が半開きになってて

「あーどうもおはようございますキョウ、マリサ。早起きは3文どころの得じゃ割に合わないと思いませんか、ませんか」

 低血圧なミキさんだった。大事なことなのか2回言われた。

 そして中に入るとここは予想外と言うべきか予想通りと言うべきか、ホールにはアヤ先輩がニッコリとして

「お待ちしておりました~どうぞ」


「まぁあの衣装の中だと私はやはり和服で決まりだろうな」

 午前9時頃。ルーチェに向かって歩くミユキがウンと頷けば、隣を歩く桃花は両手を頭に当てながら

「まぁミユキ従姉(ネェ)のイメージから言えばそれがピッタリやな。けどあの加納先輩のことやから分からんで?」

 ニヤニヤ。それにミユキは流し目して

「いや間違いないさ。メールで帯刀出来るかどうかを尋ねてみたんだが大丈夫らしいしな。和服しかあり得ないだろう。ははは」

「なんか質問おかしない?」

 と突っ込んでる桃花のその隣で、美月が何故か赤面しながら俯いてるので

「なんや美月? 具合悪いんか?」

 聞かれた瞬間ハっと我に返ったように顔をあげて

「な、なんでもないの! なんでも!」

 両手をサカサカと振って否定のリアクション。それに少しだけ首を傾げたが、やがて生来の大雑把さで

「ふ~ん」

 納得した。美月だけは姉がどの衣装を着るのか知っていた。


 午前9時半になってルーチェに到着したミユキ、美月、桃花。その味わい深い木製の扉をコンコンとノックしてから

「お邪魔します」

 と美月が”リンリン”と扉を開けば、玄関で両手をキチンと体の前で組んで迎えてくれた奇抜な衣装のメイドに思わずミユキは身を乗り出して

「み、ミヤコどうしたんだ!!」

 キュンキュンを通り越して暴走状態。

 栗色ではなく真っ白になったそのミドルヘアーを除けばクリクリとした目といい端正な顔立ちといいミヤコそのまま。

 そして纏っている衣装は大きなリボンを腰にあしらった白ベースのエプロンドレス。

 しかし背中に取り付けられた小さな翼の飾りによってイメージはメイドというよりも素材の可愛らしさとあいまって天使という具合だった。

 桃花もその様に思わず口に手を当てて

「は~。これミィミィはえらい人気出るで」

 美月も両手を口に当てて瞳をユラユラとさせながら

「すごいミヤコちゃんすっごく可愛い……」

 そして長姉のミユキに至ってはもはや襲いかかる前の狼のように両手をワキワキとさせて

「そうかこれはミヤコの嫁入り衣装だなフフフ良いぞ私が一生幸せにしてやるさ」

 ともかく三者三様に絶賛の嵐。その様子にすぐ後に立っているミキもアオイもマリサもニヤニヤとし、アヤに至っては”顔面爆発寸前でも必死で堪えてます”というような表情で

「そ、それじゃぁ御挨拶なさい」

 とそのメイドの肩を両手で叩き

「ス、ス、ステビアちゃん」

 紅のジェットを鼻から噴出しながらその名を告げた。

「「「ステビア?」」」

 後でぶっ倒れてるアヤなぞお構いなしに桃花とミユキと美月がそう声をハモらせたとき、目の前のメイドは赤面かつ苦笑いしながら

「えっと、どーも後宮京太郎です」

  

 一方その頃、後宮家。京太郎の寝室。

 本物のミヤコは空になってる京太郎のベッドにクリクリの目をパチクリとさせ、そして歩み寄ってから凝視。

 しばらくして

「兄さん?」

 ベッド下確認。

「兄さん?」

 机の下確認。

「兄さ~ん?」

 クローゼットの中確認。

「兄さん?」 

 引き出しの中確認。いない。頭に人差し指を当てて思案。

「むむむ」

 思案。

「むーむむ」

 思案。

「む!」

 そして結論に至る。

 ミヤコは目をパチクリとさせてから

「姉さんに食べられましたねマストビー!」


 やっばいなーどうしようかな。目の前に突如出来上がったこの美少女の石像3体。そりゃ確かに俺も鏡で自分の姿見て予想外に可愛くてビビったけどさ。

 いくらなんでも俺とミィちゃんを勘違いとか義妹が気の毒にでも程があるだろ。振り返ってツインテールを見ればこいつもこいつで赤面して瞳ユラユラだし何なんだいったい。

 おまけにその隣のミキさんも赤面しつつもこっち見てキョロキョロしてるし、アオイちゃんに至ってはホワホワしながら

「あ~先輩も可愛いですぅ。後でボクが私服もコーディネートしますぅ」

 トリップしてるし。額に青線を落としていたら急に”リンリン”と扉が開く音が聞こえたのでまた振り返ればまずは石化解除された3人のシスターズ。そして来客は紛うことなき我が義妹。

 急いで来たらしく少し肩で息をしてて、そしてやっぱり寂しかったのか目に涙を溜めてて、ああごめんねミィちゃん、とか思ってたら

「兄さん今日モーニンモーニンしてないですマストビー!!」

 飛びついてきました。ああ流石は我が義妹。俺がこんな格好しててもマッハで見抜いてくれたね。マジで嬉しくて抱き締める。

「ううう……」

 ああ何と言うことだうちの可愛いミィちゃんが泣いてるじゃないか。俺は頭をよしよしと撫でながら

「ごめんねミィちゃん。お兄ちゃんが悪かったよモーニンモーニン。お歌が聴けなくて寂しかったよ」

 謝ってみた。言い忘れてたけどこの子は極度の寂しがりなのだ。寂しいとストレスで生きていけなくなると言う子ウサギよりも寂しがりなのだ。

 ああでもミィちゃん暖かいし柔らかいし、とっても甘いミルクの匂いがするんだよなぁ。いつも使ってるシャンプーのせいなのかなムフフいやいや妙な考えはやめましょう。

 と自制してたらふと気付いた静けさ。そして周りを見渡せば見事にシスターズ全員が赤面してました。

「??」

 えっとこれはどういうリアクションなんだろうか? なんだろうか? ミィちゃんに聞こうとしてもまだこの子シクシクしてるし……お。アヤ先輩が蘇生し始めてるからこの人に聞いてみようか。

 ムクリと上半身を起こし、目をコスリながら

「あ~さすがにステビアちゃん強烈だったわねアタシもう少しで……」

 とか言ってる先輩と目が合って俺がミィちゃんをギュっと抱き締めてるのを見るや否や

「禁断の花園にしてユートピア!!」

 薔薇色の噴水を巻き上げて再び散華。あかん役に立たんわこれ。しかしこれからどうなるんだろうね衣装合わせ。なんか俺が最初にすんじゃったけど……。

 ってマジで俺これでいくの!?

「地雷は踏んでなんぼ。自滅型ヒロインここに見参」

ステビアはこういう感じでいこうと思います^^

次で一応、キャラ紹介に次いでプロローグ終了というところになります。


そして


小説の評価有難うございました!!

前3作(桜花、幼馴染、生徒会長)の連載終了時に

自信を失ってた部分があったのですが、また元気を頂きました^^

次回もお楽しみ頂ければ幸いです。それではまた^^

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