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1:あれ? ちょっとミィちゃんそれどういうこと!?

 演劇部部室でたくさんのケーキと紅茶に囲まれた俺達のヒッソリとした後夜祭。それは回ってきた守衛さんがノックもせずに扉を開けて

「もう遅いから早く帰りなさいほらほら。とっくに下校時間は過ぎてるよ全く最近の学生さんは(以下略」

 というようなお小言をもって名残惜しく閉幕した。


 夜桜の見えるおつな正門前

「それじゃぁまたね」

 と俺達とは帰り道が真逆なアヤ先輩がニコニコと手を振り

「今日は舞台を見に来てくれてありがとう」

 同じく帰りの方向が反対なヨードーちゃんもまた手を振り、それに

「それじゃぁ失礼します」

「また今度ねヨーヨー」

「御馳走さまでした」

 俺、ミィちゃん、アオイちゃんの3人は手を振ってから歩き始めた。

 お互いに姿が見えなくなるまで振り返っては手を振って、振り返っては手を振って、見えなくなると微妙にチョコチョコ後戻りして義妹がまた手を振っ

「キリないよミィちゃんおうち帰ろ」

 回収した。

「あ~やっぱミヤコ先輩可愛いですぅ」

 頬に両手を当ててあっちの世界に言ってるフワフワさんもこっちの世界に連れ戻した。


 桜花学園の最寄り駅。三人はその改札の前で足を止めた。

 天井から下がっている電光掲示板で電車の時刻を見ながら俺は

”守衛さんに怒られても仕方ないねこの時間は”

 ふむと一人納得していた。

 そして正確な時間とメールの確認のため携帯を開いてみれば時刻は午後9時半。俺はマリサから届いていた

”足のツメ切ってたら深爪しちゃったわ。あんまり深追いするのも考え物よね?”

 という至極どうでも良いメールに

”そうだねマリリン。胸が全てじゃないよね”

 至極どうでも良い返事をかえしておいた。そして携帯を閉じてからアオイちゃんの方を向いて

「夜道は物騒だから送るよ。家はどっち方面?」

 尋ねれば彼女は何故か目を逸らして頬をポリポリと指で掻きながら

「え~っとその、先輩と同じ駅のはずですね」

 あれ? 俺が首を傾げて

「今日はアオイちゃんとは初対面だよね? 何で俺の地元の駅知ってるの?」

 聞けば彼女は”フフ”っと笑って

「イヤですね先輩。さっきのティータイムで僕に教えてくれたじゃないですか」

 言われてみればそんなことを言ったような気もするな。アオイちゃんはそれからちょっと頬をピンクにしてから

「他にもベッド下に2冊隠してるとか」

「微塵も言ってないよ!?」

 何で知ってるのそのトップシークレット!? 口から幽体エジェクトしそうになってると誇らしげに義妹が挙手って

「言いました!」

「ミィちゃん後でお話があるからね」

 恥を捨てて滝涙流してるお兄ちゃんにミィちゃんは”えへへ”と頭を掻きながら

「ゴメンなさい。兄さんの寝室にお掃除機かけてる時に何かバキュームしちゃって取り出したら本だったから

”兄さんの秘密ブックらんらんるー”

 ってワクワクしながらオープンしたらドキューン(放送禁止)」

 おおアオイちゃんの顔から湯気が出てるたぶん俺は火が出てる! しかもなんか携帯がなってる! 誰からだこんなときに!? 何だマリサかえ~っとなになに。

”明日ツラかせや”

 携帯を閉じて深呼吸。

「なんかもういろいろ生きるのに疲れました」

 塀を越えて線路にダイブしかけてる俺を二人が両足を持って阻止しながら

「エッチな兄さん早まっちゃダメですマストビー!」

 さりげなくフォローになってないよ!?

「そうですよドエロ先輩僕誰にも言いませんから!」

 露骨にフォローになってないよ!

 そのまま引き摺り降ろされて段差に頭を

”ごちん”

 と打ち付けてしばしノタうち回ったもののやがてクールかつ何事もなかったかのように立ちあがる京太郎君。

 さて冗談はここまでにして。

「しかし俺とアオイちゃんが同じ駅ね~?」

 腕組み。すれば彼女はまた目を逸らして

「は、はい」

 匂うね、なんか。ジーと疑惑の視線を向ける。

「そ、そろそろ行きましょうか?」

 目を合わせないアオイちゃん。あやしいな。それなら……。

「未開地駅でいいのかな?」

 聞けば彼女はニッコリとして

「はいそうです。ご一緒して下さい」

 俺はワザとらしく頭を掻きながら

「いやいや間違えた。それはミユキ先輩の神社がある駅で俺とは反対方面だったよ。ハハハ」

「あはは奇遇ですね。僕もなんです」

 自然な流れに見えるけど”奇遇”の使い方おかしいからね。

「いやいや確か俺の家はこのままタクシー拾って関空まで行ってからドミニカ共和国までJALでビューンと」

「そのままドカーンですよねあはは奇遇ですね僕もなん」

 何でそこで奇遇に心中してるんだ君は。チョップ。

「った」

 なんて可愛い声出してるアオイちゃんに

「はいはい。先輩にウソつくのはそこまでね。オウチはどこ?」

 聞けば俯いて沈黙する後輩。なんぞ訳あり?

「ねぇアオイちゃん? 本当にどうしたの?」

 その肩をポンポンと叩いてる義妹。心配そうにそのお顔を覗き込む。

「もしかして帰り道忘れちゃったの?」

 心配の仕方がミィちゃんだ。アオイちゃんは顔をあげないまま

「お願いです……」

 そう切り出してから急に顔をあげて。その微かにエメラルドの艶がある綺麗な瞳が涙に濡れてたから俺もミィちゃんもちょっとビックリして

「お願いです! どうか!」


 自宅にて。すごく遅めの夕食を囲う俺、ミィちゃん、そしてまさかのアオイちゃん。

 もともと帰るのが遅くなると分ってたようでミィちゃん、夕食の下拵えを今朝のうちにしてたようだ。さすが万能義妹。しかしながらこのまま黙々と食べるのも妙なので

「まさか”僕を飼って下さい!”とか言うと思わなかったよ」

 言えばアオイちゃん、今になって相当キワどいセリフ言ってたことに気付いたようで顔真っ赤。でもすぐに

「ぼ、僕もその後すぐにミヤコ先輩が”私が飼います!”って言うとは思いませんでした」

 ミィちゃんにパス。でも義妹は本当に嬉しそうに

「うふふ。今日は久しぶりに二人でベッドに入れますマストビー」

 お魚食べてます。そういえばついこの間までここに住んでたマリサと一緒に寝てたモンね。

 微笑ましく見守ってるとミィちゃんはちょっと頬を膨らませて

「兄さんは私が枕持って行っても追い返しますからね」

「了承したらダメでしょそれ」

 了承したいけど。

「兄さんは私がお風呂誘っても一人で入りますからね」

「了承したらダメでしょそれ」

 了承したいけど。

「兄さんは私が兄さんのベッドに入ってたらソファーで寝ちゃいますからね」

「”代わりにミィちゃんのベッドに”という訳にはいきません」

 興味はありますすごく。

「兄さんは私が兄さんの入浴中にお風呂入ったら飛び出しちゃいますからね」

「お陰でお兄ちゃんカゼ引いた上にマリサに半殺されたからね」

 ゲージ消費技の”破城槌”喰らって。すごいよれあれガチで防弾ガラス抜くから。

 しかしながら

「兄妹なのに不自然ですマストビー!」

 まだプーと頬を膨らませてる可愛いミィちゃんマストビー。やれやれ兄の心妹知らずですか。こうして二人で普通に生活してるだけでも結構ドキドキしてる俺がいたりするのに。

 溜息を吐きながら身も心も温まる味噌汁に口をつける。ああ日本人の心だねこの味は。さすが我が妹。

「いっそ水着で入ったらどうですかミヤコ先輩」 

 そして盛大に吹く。ゲホゲホむせてる京太郎君に

「に、兄さんおダシがお口に合いませんでしたか?」

 とか目をウルウルさせてる可愛いミィちゃん。その頭をよしよしと撫でながら

「いやいや美味しいよカツオと昆布の合わせ技最高。それからアオイちゃん妙な代替案出さないでね?」

 言えばアオイちゃんは意味深な笑みを浮かべて、そしてお味噌汁をお上品に飲んでるミィちゃんをチラっと見て

「それはミヤコ先輩の水着を見てから決めたらどうでしょう?」

 今度は義妹が吹いた。って

「ちょ! どうしたのミィちゃんそのリアクションどういうこと!?」

「に、兄さんは良いんです気にしないで!」

「気にするよすごくミィちゃんの赤面とか連載始まって初だよお兄ちゃんに教えなさい!」

「教えないですよマストビー! それから妹にハァハァするのはダメです!」

「してないよ!? でも詳細を話しなさい!」

 アオイちゃんはキョトンとして、でも急にニマーと笑って

「先輩ほんとにミヤコ先輩の水着みたことないんですか?」

「アオイちゃん言わない! わー!」

「いいよ盛大に打ち上げてアオイちゃんワッフルワッフル!!」

 今日の夕餉は騒がしかった。

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