クリスマスケーキ⑤
5話 どうして?
正月も過ぎ仕事も始まり、もう2週間が過ぎた。
気持ちはまだお正月モード…休みの間は繭と二人で楽しく過ごせて買い物や旅行でリフレッシュしたものの、ケーキの事がまだ気になっていた時、豪からメールが届いた。
「その後、警察から連絡がきた…今回のケーキの件は事件性はなく、ただの嫌がらせではないとか言うことで処理をされてしまった…今後、もし何かあれば警察に言って下さい…と言う事だったよ」
確かにあのケーキの件以来何も何も起こってはいない…イタズラか嫌がらせだったのか。
「そうか…これ以上は無理だろうな」
と返信をした。
仕事が終わり今日はめずらしく僕が先に家に着いた。
暗い部屋に灯りを付けて、繭が来るまでご飯支度をして待とうとした頃、玄関のチャイムがなり「繭が来たな!」モニターを見た
「一茂!早く開けて!」
恐怖を感じているような顔、これはただ事ではない。
急いでドアを開けて、繭を家に入れる。
「どうしたの?」
相当息が荒い…
水を飲ませて少し落ち着いて、もう一度聞いてみた。
「何かあったの?」
「いつもの道を通って来た時、後ろから気配があったの…気のせいかなって、気にしないで歩いてたら、だんだん早歩きで足音が近付いたのが分かって…怖くって振り向いたら、男の人の声で「俺はお前達を許さない!」と突然大声で怒鳴られたの!…あと、何かを言ってたけど、何をされるか分からなかったから、走って逃げたわ!」
繭の顔は涙で濡れていた。
「どんな人?…まさか、あの時のストーカーの男か?」
「わからない…暗かったし振り向けなかった。本当に怖くってただ逃げて来た。」
そうだよな、突然大声で怒鳴られて冷静に居れないよな…何か特徴が分かれば。
僕は、しばらく繭の肩を抱き寄せ落ち着くまで側にいた。
繭の表情も落ち着いて、何かを思い出したのか
「あっ、でも前のストーカーじゃないかも…」
「何か特徴があったの?」
「特徴って言うか、声がオジサン声と言うかガラガラした声で、確か前のストーカーの人は青年と言うか、若い男性だからガラガラ声じゃなかったと思う。」
「ガラガラ声…オジサンの様なガラガラ声か…でも、「お前達を許さない」って、何を許さないと言うのかな…僕はその人に何をしたのか…」
「でも…明日どうしよっ…また、男の人が現れて来たら」
「しばらくは、一緒に帰ろっ…駅で待ち合わせで家まで一緒に行こう!」
繭を襲った男とケーキの犯人は同一人物なのか?
警察に行っても、傷害ではないし…イタズラだと言われたらそれで終わりだろうな。
翌日、僕は早めに仕事を切り上げて待ち合わせの駅で待つ。
しばらくして、離れた所から手を降りながら駆け寄ってくる繭。
ニコッと笑い「お疲れさま!」と繭に一言
「ただいま~!」
いつもの時間、変わらない帰宅道…今日は二人、繭は不安な顔を見せずキャッキャ言いながらじゃれ合う様に帰る。
家の前に着き玄関前、ドアの下に見慣れた白い箱、「ん?」この箱は豪の店のケーキの箱…。
そう言えば、今月僕の誕生日もしかして…。
「豪さんの店のケーキ?」
繭はニコッと笑ってそのケーキの箱を見ている。
「そうだね…豪、今月僕の誕生日なのを分かって置いたのかな?」
「そうよ!きっと!」楽しそうな顔で僕を見つめる繭。
家の中に入りテーブルの上にケーキの箱を置いた。
「ねえ、ねえ!開けて見てもいい?」
まるで子供の様にキラキラと目が光らせ箱を見る。
「どーぞ!」
繭はその箱を開けたみて「きゃぁー!」悲鳴をあげる。
「どうした!」
僕は繭の元に駆け寄る。
繭はテーブルの元から後ろに去ってケーキの箱を人差し指をさす。
僕は箱の開いたケーキを覗く
ケーキの箱の中には腐っているケーキが一つ
「うわっ!」
ケーキの脇にメッセージカードが付いていた
『一茂、誕生日おめでとう!祝ってやるよ!』
見覚えがある筆跡…右上がりの癖のある文字…あのクリスマスの時と同じ様な筆跡。
「誰なの?やっぱり、豪さん?」
「違うだろ…でも、聞いてみる」
僕は直ぐに豪に電話をした。
「もしもし」いつもと変わらない豪の声。
「実は、僕の家の玄関にケーキが置いていて、中身を見たら腐ったケーキが入っていたんだ…その箱は豪の店のケーキ箱で多分中身も豪の店のかなって…それと、メッセージカードが
あの癖のある文字が入ってた。」
「はっ?…俺の店の?」
「ああ…」
「今、確認しに行くよ!」
繭は少し怯えている様な顔をしていた。
「大丈夫!」と繭の方を引き寄せた。
しばらく待ち豪が来た。
「この箱だよ」豪に箱を見せた。
「確かに俺の店の箱、中身は…腐っているが恐らく俺の店の物だと思う…どうする?警察に相談するか?…この前のクリスマスケーキの事とこのケーキ…そして、似たようなメッセージカード…」
「実は…この前、繭がストーカーではないけど脅しの様な事をされた…」
「脅し…なんでだろう、何かあったのか?」
「僕にはさっぱりわからない…何もしてない」
「とりあえず、警察に相談してみよっ…このケーキの箱だって俺の店の物だし、まるで俺が一茂に嫌がらせしてるように勘違いしてしまうだろ…今、俺が警察に相談してくる!任せてくれ」
と、僕の家を出ていった。
「任せても大丈夫?」
不安そうな顔をする繭
「大丈夫だよ、いざとなった時に便りになる奴だからな」
と言ったものの、少し僕も不安ではあった。
6話へ続く