24 楽園の監獄
事件を起こしたオルフェ達を収監しに国際警察が来るらしい。
「罪状は何になるんでしょう……?」
「……罪状が何であれ監獄からはすぐ出てくるだろうな」
腕を組んだヴィントが難しそうな顔で言う。
「そうなんですか?」
「金を積めば釈放してくれそうな組織にいつも属している。正したところで、」
軽くため息をついたヴィントの顔を見ると何度も釈放されては罪を重ねるタイプである事が伺える。
メイドたちは王の帰還に喜んでいるようだったが……
どこか元気がなさそうに見える。
「あれ……どうかしたのかな……」
側によるとアンもフラーもリリーに軽く抱擁した。
「リリーはヴィント様と一緒にいてね」
アンには手を握られ、フラーにはそっと背中を押され距離を置かれたような気持ちになる。
しかしかける言葉が見つからなくて、リリーはうん、と小さく頷いた。
やがて城内に入ってきた国際警察に連れられ、オルフェの部下達は連行されて行った。
途中、何人かシスカに気がついて敬礼していく警察官もいる。
……もしかしたら本当に元警察官なのかもしれない。
規則なので、とリリーの前にやってきた女性の警察官が言う。
「住民カードを見せてもらえるだろうか?」
「は、はい」
リリーが提示したカードは他所の惑星に渡航する際必要なもので顔写真や名前、渡航歴などが確認できる。
「惑星ティース……初めて聞くな……三百光年?とても遠い所から来たのだな」
女性はカードを操ると魔法で何か機能を追加した。
「付近の惑星の情報が入っている。渡航や移住に役立ててくれ」
「ありがとうございます……」
リリーは礼を言うとカードをしまった。
最後にオルフェが連行され歩いてくる。
「……俺たち以外も、きっとまた来る」
おい喋るな、と警官に後ろから小突かれてもオルフェは続ける
「お前も、こいつらとも、そこの魔獣の血を引く女どもとも早く縁を切ってこの星から出ていくんだな」
今何か、
リリーを庇うようにヴィントが前に出た。
遮られる前に、オルフェと視線が一瞬交錯する。
オルフェの赤銅色の目の奥に暗い色が見える。
「……何だ知らないのか。そこの女どもは」
どうか言わないで。
「産まれてきたことを罪にここに収監されてる、」
鈍い音がしてオルフェは倒れた。
話がややこしくなるからやめろ!と殴ったラーニッシュをシスカが懸命に抑えている。
……指先がとても冷えるのは、きっと冬が近いせいだ。
「……王様早いなあ。私が殴ろうと思ったのに……」
無意識に剣に手をかけたヴィントの手に、リリーは自分の手のひらを重ねた。
オルフェ達が収監され、慌ただしく警官達は去っていく。
メイド達は一列に並び、皆大人しく残された警官の指示に従っていた。
「……彼女たちが変わりなくここで暮らしている事を確認するのは我々の仕事のひとつなんだ」
先程リリーの住民カードを確認していた女性警官がリリーの隣に並んで言う。
「拘束しない自由を与えたとも言うし、突き放して見捨てたとも言うな」
「…………全て言葉にするには、難しいこともあります」
答えたリリーを見て少し笑った気がした。
リリーはヴィントと部下達とエライユから出ていく国際警察の船を見送った。
警官達を乗せた船は今まで見た船の中でどの船よりも堅牢で、少し冷たく見えた。




