オリーブヤング
♪ふんふふんふ
おじいちゃんの、鼻歌がすごい。
ここ、一週間くらいだ。
横揺れも、なめらかだ。
日常を、楽しんでいる感じ。
「おじいちゃん?」
「なんだね」
ピンクパーカーに、パープルジーンズの、おじいちゃんが振り返った。
「若いね」
「和解? 喧嘩してたかいな?」
「フレッシュだってこと」
「ああ。最初から、そう言ってくれよ」
「ごめんごめん。それで、何かあった?」
「おう。あったぞあったぞ」
そう言うと、おじいちゃんは、ジーンズの尻ポケットを、モゾモゾし始めた。
そして、掴み出したのは、瓶だった。
「それ、油?」
「おう。オリーブヤングじゃよ」
「へえ」
見たことない。
聞いたこともない。
ただ、ちょっとピンと来た。
老いる、の反対はヤング。
オリーブオイルの反対は、オリーブヤング。
そういうことだろうか。
たぶん、そうだ。
「どんなやつ?」
「その名の通り、ヤングになれるんじゃ」
「そ、そうか」
「おいっ、あんたは老けたんじゃないか?」
「そうかな?」
「偽物の『オリーブ老いる』買わされたか?」