第4章 もう一人の魔女
「ここは……?」
ロザンナは意識を取り戻すと同時に、周囲を見廻した。
見覚えがある部屋だった。
二百平方メートルは優にある広い天井が彼女の視界に飛び込んできた。そのあちらこちらに高価なシャンデリアが吊られている。
(イリス神殿<鳳凰の間>……?)
<鳳凰の間>とは、各惑星の国賓を接待する貴賓室であった。
「……!」
起きあがろうとして、彼女は愕然とした。
両手足が彼女の横たわるベッドに拘束されている。
(いったい、どうして?)
ロザンナは記憶を呼び起こそうとした。
彼女は、兄のアランと一緒に両親の後を追い、<破邪の路>を駆けていたはずであった。
(そうだ、あの時……)
ロザンナの脳裏に、彼女の運命を変える光景がはっきりと描き出された。
<破邪の路>には、通路全体に微光性の塗料が塗られている。緊急時以外に使用されるケースは極めてまれなため、通常の照明は設置されていなかった。
アランとロザンナは、薄明かりの中を急いでいた。
「大丈夫か?」
アランは、遅れがちなロザンナの手を引きながら訊ねた。
「ええ、何とか……」
「父上が用意されている緊急脱出艇<オーディン>まで、あと1キロメートルくらいだ。もう一息だぞ」
肩で息を切らしているロザンナをアランが励ました。
その時……。
「……! 誰か来るわ!」
ロザンナが前方を見つめながら叫んだ。
「何ッ……!」
アランが素早く愛用のXM595自動小銃をホルスターから抜いた。
前方百メートルほどの空間が、突如光彩を放ち始めた。
「……!」
「……!」
二人は、息を呑んでそれを見つめた。
虹色の光彩の奥から、人の輪郭が現れだした。その人影は、地上から五メートルは浮いている。
「テレポート? ESPか……?」
アランが呟いた。
輪郭が徐々に実体を伴った。長い髪が風もないのに舞い上がっていた。
女性だ。
(綺麗な人……)
ロザンナは自分が置かれている状況を忘れて、その女性に魅入った。
眩しい光彩が急激に薄れ、人影がはっきりとその姿を現した。
淡青色の長い髪、透き通るような白い肌。ダーク・ブルーのスペース・スーツにその身を包んだ、完璧とも言えるプロポーション。そして、神が造形した美しさを唯一裏切っている左頬のy字型の裂傷……。
彼女を言い表すのに、単なる「美女」という言葉では不十分すぎた。
強い意志と深い哀愁とを秘めたプルシアン・ブルーの瞳が二人を見つめる。
「……」
アランが小声で呟いた。
(……! 今、確かに……)
ロザンナは彼女の右隣にいる兄の顔を思わず見つめた。
(青い魔女……って言ったわ)
アランは絶世の美女に魅了されている。
(ブルー・ウィッチ……? この人が……?)
ロザンナは空中浮遊している絶世の美女を見つめた。
<銀河系最強の魔女>ブルー・ウィッチ。
全銀河系を震撼させたその名は、ロザンナでさえ知っていた。
彼女の名を銀河に轟かした<惑星カノン独立戦争>を始め、死者二万七千人を出した<豪華客船プリンセス・マゼラン号ハイジャック事件>、銀河系最大の麻薬ギルドの本拠地を壊滅させた<人工惑星ジオイド消滅事件>など、今や銀河系監察宇宙局はおろか、宇宙平和連邦、自由惑星同盟において彼女の名を知らない者はいなかった。
「テア=スクルト……?」
ロザンナが青い魔女に訊ねた。
「私の名前を知っているなんて光栄ね、ロザンナ王女」
美しいメゾ・ソプラノの声が<破邪の路>に響きわたった。
「私はあなたを取り戻しに来たのよ」
「……?」
(私を取り戻す? どういうこと……?)
ロザンナの疑問を読みとったかのように、テアが話し出した。
「人類が母なる星<地球>から銀河系に偉大なる進出を始めてから、千三百年年以上になるわ。今や、この銀河系の約三分の一を人類はその勢力圏においている」
「……」
ロザンナとアランはテアの話に聞き入った。
「しかし、あの第二次DNA戦争以降、愚かにも人類はGPS、SHL、FPといった三つの勢力に分散し、各々が銀河系の覇権を争っているわ。人類のくだらない見栄のために、順調だった銀河系開発は中断し、この二十年間、新しい惑星の発見さえも行われていない。これは一見、安定のように見える。しかし、実際は安定でも何でもないわ。破滅への第一歩よ!」
「……」
ロザンナには、テアの言いたいことが理解出来なかった。
「今や、銀河を改革すべき時が来たのよ。あの英雄、ジョウ=クェーサーが必要になったのよ!」
テアが言い放った。
ジョウ=クェーサーとは、第二次DNA戦争の時、反乱軍(DNAアンドロイド軍)を率いて、銀河連邦政府(GPSの前身)からA級指名手配を受けたESPである。
DNAアンドロイドとは、人間の持つDNA遺伝子を特殊操作したクローンの総称であり、その反射速度、運動能力、治癒能力は、成人男性の平均値の十倍以上あった。その上、DNAアンドロイドすべてが、個体差はあるにせよBクラス以上のESPを有していたのである。
いわば、従来の人類を凌駕する能力を持った新人類であった。
しかし、自分たちの手で彼らを作り出した人類は、彼ら新人類が期待するほど寛容ではなかった。特に銀河連邦政府首脳陣は、彼らに軍事的価値しか見い出そうとしなかったのである。彼らがDNA戦争を起こしたことは、歴史の必然であった。
SD一二八五年五月。
DNAアンドロイドは、Σナンバーの能力を持つジョウ=クェーサーを総帥とし、銀河連邦政府に反旗をひるがえした。
当時、銀河連邦軍が有する宇宙戦闘艦は二百八十万隻。それに対して、DNAアンドロイド軍が有する戦艦はわずか百隻にも満たなかった。物量で圧倒的な有利を誇る銀河連邦軍は、一ヶ月足らずで彼らを殲滅する予定であった。
しかし、銀河連邦政府は彼らがいずれも優秀なESPであることを忘れていた。
BクラスのESPが一人いれば、百隻程度の宇宙艦隊を一時間もあれば殲滅できると言われている。それがDNAアンドロイド軍には、五百名以上いたのであった。それにもまして、彼らは人類以上の知能を有している。DNAアンドロイド軍の研究開発部隊は恐るべき高性能新兵器を次々と開発量産していった。
戦乱が開かれてから六ヶ月が過ぎた頃、銀河連邦政府は己の不明に気づき、DNAアンドロイド軍の要求をほとんど呑む形で停戦条約を結んだ。
これが後に言う「カッサンドラ条約」である。この条約締結により、第一次DNA戦争は終戦を向かえた。半年間の戦乱を経て、銀河系に再び平和が戻ったかのように見えた。
しかし、銀河連邦政府はDNAアンドロイドに対して、経済的制裁を加え始めたのである。
それは、「カッサンドラ条約」でDNAアンドロイドの居住惑星と定められた惑星<インディスヴァーン>への関税率の大幅アップと、年間五万人の強制移民の承諾であった。
自給自足さえ未だ整っていない<インディスヴァーン>において、輸出入を止められ、なおかつ強制移民を受け入れることは死を意味した。
初代<インディスヴァーン>の大統領となったジョウ=クェーサーは、銀河連邦政府に対して、再び戦端を開くことを決意せざるを得なかった。
SD一二八六年七月。
ここに銀河系を未曾有の大混乱に巻き込む第二次DNA戦争が勃発したのである。
第二次DNA戦争は約一年間続き、終戦を向かえるまでには、次のような犠牲を強いた。
消滅した太陽系 一
惑星規模の破壊を受けた星 二十六
大陸消滅規模の破壊を受けた星 百五十七
死者(推定) 千五百七十四億人
被害総額 不明
同時期に起きた惑星内乱 九百七十五
この有史以来最大規模の大戦争によって、約千二百年年続いた銀河連邦政府は崩壊し、銀河系は無法状態となった。各惑星は独立自治を始めたが、人類の移住した惑星の約九十パーセントで動乱が勃発した。
この未曾有の大混乱に終止符を打ったのは、DNAアンドロイド軍総帥ジョウ=クェーサーが放った一発の新兵器であった。
DNAアンドロイド軍開発ナンバーΣ237。通称<アルテミス>。
HDエネルギーを特殊技術で変換し、亜空間を経て目的の惑星まで到達させるものであった。その超烈な破壊力は、銀河連邦政府管轄内の主要惑星<ゼラン>とその衛星を、たった一発の閃光で消滅させたことでも明らかである。
ジョウ=クェーサーは銀河系全域に次のような宣言を発した。
『全銀河系人類に告ぐ! これ以上の無用な内乱を続ける惑星があれば、我々は亜空間砲<アルテミス>の使用をためらいはしない!』
惑星<ゼラン>の消滅は、各惑星の首脳陣にとって戦慄すべき事件であった。彼らは即座に<インディスヴァーン>に対し、降伏を申し出た。
ここに、銀河系監察宇宙局(略してGPS)が発足したのである。
その後、GPS首脳陣の確執から、GPSを脱退する惑星が出てきて、ロバート=グローバルを盟主とする宇宙平和連邦(略してSHL)が発足した。また、GPS、SHLの何れにも属さない自由惑星同盟(略して、FP)も、僅かながら黙認された。
一方、ジョウ=クェーサーは、総人口2億人の惑星<ゼラン>を消滅させた責任をとり、GPS初代総帥にユーリ=フランコを推薦した後、<アルテミス>を破壊し、その設計図を焼失して自殺したのであった。
「惑星イリスは、いえ、イリス聖王家はこれからの時代には不要の長物でしかあり得なくなるわ。GPSに所属する約千五百の惑星国家の内、時代錯誤の王制をしいている国家はこの星以外にはない……。私たち選ばれた新人類が愚かな旧人類に虐げられ、奴隷のように酷使されてきたことは、この惑星イリスをはじめとする旧体制が元凶なのよ。そこで、私たちはこの星を手始めに改革し、我々の本拠地とすることに決定したわ」
青い髪の魔女が言い放った。
「そんな下らない理由のために、イリスの国民を虐殺したのか!」
アランが素早くXM595の銃口をテアに向けて叫んだ。
「虐殺? それは違うわ。私たち新人類の同胞となる能力があるかどうか、選別したのよ」
「新人類だと? 貴様は人の心を理解しようとしないただの愚か者だ!」
そう叫ぶと同時に、アランはトリガーを絞った。強烈な破壊力を有する九ミリ・パラペラ弾が、秒速九百八十メートルのスピードでテアに向かって飛翔した。
「……!」
テアのプルシアン・ブルーの瞳が輝いた。彼女の全身が一瞬にして青いオーラに包まれ、ESPシールドが形成された。<銀河系最強の魔女>の張ったシールドの前に、九ミリ・パラペラ弾は弾け飛んだ。
「愚かなのはあなたの方よ、アラン王子」
テアが微笑んだ。見る者を魅了する素晴らしい笑顔だった。
「ぐッ……!」
「兄さんッ!」
ロザンナが悲鳴を上げた。アランの体が、金縛りにあったように突如その動きを止めたのだ。彼は全身を襲う激痛に声も出せなかった。
「やめてッ!」
ロザンナが叫んだ。
「ロザンナ王女、あなたは私と同レベルの潜在ESPを持っている。その能力が私たちには必要なのよ。あなたが協力するのならば、ご両親とアラン王子の命は助けてあげる。しかし、もし、あなたが断るならば……」
「まさか、お父様とお母様も……?」
ロザンナが驚いて訊ねた。
「聖王オーディン三世と、グレース皇后は私たちがお預かりしているわ」
そう言うと、テアは右手で弧を描いた。
「……!」
テアが描いた弧の中に別の空間が現れた。
「これはテレポート能力の応用で、空間を繋げているの。今あなたが見ているのは紛れもなく現実よ」
そこには変わり果てた国王と皇后の姿があった。オーディンもグレースも二十年は年老いたように、白髪になっていた。二人とも瞳に意志の光はなかった。
「どういう……事? お父様たちに何をしたの?」
ロザンナは、瞳に涙を滲ませて訊ねた。
「生命に別状はないわ。ただお二人ともなかなか強情で、私たちの質問に答えていただけなかったのでね。仕方なくテレパシーで心を読んだの」
読心能力とは、相手の思考を読みとる力である。ただし、相手が強い意志で防御している事柄を無理に読み取ったり、深層心理まで入り込んだりすると、その者が廃人になる可能性もあった。
「そんな……」
ロザンナは絶句した。イリス聖王家の巫女である彼女も、テレパシーについては熟知している。テレパシーによって廃人にされた者は二度と元へは戻らないことも……。
「いやああッ!」
ロザンナが絶叫した。
「イリス聖王家を腐敗させた原因は国王と皇后よ。彼らの代わりにこの惑星は私が統治するわ」
テアが高らかに笑った。
「あなたには、私の傀儡になってもらう。ハワード伯爵!」
「はッ!」
廃人となったオーディン三世の背後から、初老の男が姿を見せた。
「ハワード……?」
ロザンナは自分の眼を疑った。
イリス聖王家十二選帝候の一人、アルツバイアー領主ハワード=ウォン伯爵。ロザンナの少女時代の教育係兼家庭教師であった。年は五十代後半であり、グレーの短髪がよく似合う好々爺である。
「廃人となった国王と皇后は不要だわ。ロザンナ王女に二人の最期を見せてあげなさい」
テアが冷酷に言った。
「……!」
ロザンナは、驚愕のあまり立ち尽くした。
「はい、新聖王閣下」
ハワードが黒光りするレイガンを取り出し、銃口をオーディン三世に向けた。
「やめてええ……!」
ロザンナの絶叫は、レイガンが発した閃光にかき消された。
オーディン三世は後頭部から眉間を撃ち抜かれ、声さえあげられずに即死した。
「お父様ッ!」
ロザンナが涙を溢れさせて絶叫した。
レイガンの銃口がグレース皇后に向けられた。
「お母様ッ! いやあああッ!」
閃光がグレース皇后のこめかみを撃ち抜いた。皇后の体がゆっくりと右前へ倒れ込む。
ロザンナが床へ膝をついた。長い金髪が彼女の顔を覆い隠した。肩が小刻みに揺れている。堪えきれない涙が滴となって床を濡らした。
(何故、こんなことに……)
理不尽な死を迎えた両親を目の前にし、ロザンナは素直に悲しむことさえ出来なかった。
「これ以上の犠牲を出したくなかったら、私の言うことを聞くことね」
テアが微笑みながら言った。魔女の微笑みはこのような状況にあっても、例えようもなく美しかった。
「……さない」
ロザンナが何かを呟いた。
「返答は? ロザンナ王女」
「……」
ロザンナは涙でくしゃくしゃになった顔を上げて、テアを見つめた。その碧眼には、何の意志も見い出せなかった。
「返答次第では、アラン王子の生命もないわよ」
テアはESPで動きを封じているアランの方に顔を向けた。苦痛と屈辱に耐えているアランの視線がテアを凝視していた。
「……」
ロザンナは茫然自失しているように、テアを見上げた。
「惑星イリスの英雄アラン=アルファ=イリス王子。どうやら、あなたの妹は兄の死も望んでいるようだわ」
テアのプルシアン・ブルーの瞳が光彩を放った。
アランの体が、七、八メートル宙に浮いた。
「くッ……!」
魔女の強大なESPを受け、指一本動かすことの出来ないアランの口から、屈辱のうめきが漏れた。
「兄さん……」
ロザンナがハッと我に返って呟いた。
「テア、やめて! 兄さんを殺すのだけはやめて!」
ロザンナが哀願した。
「殺すのなら、私を殺して! だから……」
「美しい兄妹愛ね。しかし、私の目的は二つあるのよ」
テアが微笑を浮かべながら告げた。
「目的……?」
「ひとつはあなたを手に入れること」
「……」
「そして、もうひとつは……」
テアの瞳がカッと開かれた。
その瞬間、アランの体がESP特有の光彩に包まれた。
「……! 兄さんッ!」
アランの体は、ロザンナの目の前で消滅した。
「彼は亜空間に封じ込めたわ」
「亜空間……?」
ロザンナが愕然として呟いた。
「私のもうひとつの目的は、あなたの能力を覚醒させること。アラン王子はそれまでの人質とするわ」
青い魔女が高らかに宣言した。
「意識を取り戻したようね」
テアが言った。
「どうやら、そのようですな」
壁に映し出されたモニターを見つめながらハワード伯爵が同意した。ここはロザンナが幽閉されている部屋の真上にある<星辰の間>だった。
「クロス・プロジェクトを成功させるには、<青い魔女>を始末しなければならないわ。総統ジュピター様を除き、彼女のESPに対抗できる能力を持つ者は、銀河系広しと言えどもロザンナ王女以外にはいない」
「御意」
「テア=スクルトへの憎悪は、充分植え尽くしたわ。あとはおまえのグルー(導師)としての腕の見せ所よ。失敗して貴重なESPを失わないようにね」
そう言った瞬間、テアの体からESP特有の光彩が発せられた。
その時、信じがたい現象が起こった。
テアが、いや、テアだった者が徐々に姿を変えていったのである。
淡青色の髪が紅色に変色し、白い肌が小麦色に変わっていった。身長も若干伸び、左頬のy字型の裂傷も消え失せた。
「承知しております、ソルジャー=スコーピオン様」
ハワード伯爵が深々と頭を下げた。
銀河系最大の麻薬ギルド<テュポーン>には、総統ジュピターを筆頭に、五人のファースト・ファミリーと呼ばれるESPがいる。
ファースト・ファミリーは何れも強力なESPであることまでは分かっているが、三ヶ月前、惑星アルピナでテアが倒したソルジャー=シリウスを除き、その正体は不明であった。ソルジャー=スコーピオンと呼ばれた女性はその一人であったのである。
彼女は他人のDNA基盤をコピーする能力を持った、銀河系でも数少ないESPであった。この変身能力は細胞レベルから他の人間に変わるため、いかなる分析装置を用いても見破ることは不可能であった。
「ところで、アラン王子はいかが致します?」
ハワード伯爵が訊ねた。
「いくら私でも、長時間、人間を亜空間に封じ込めておくことは出来ないわ。ここに呼び戻すから、始末しておきなさい」
「何か使い道は……?」
「そうね。……! そうだわ」
ソルジャー=スコーピオンがハワード伯爵に耳打ちをした。
「成る程、それは面白そうですな」
ハワード伯爵が笑った。
「彼を呼び戻すから、すぐに実行するといいわ」
ソルジャー=スコーピオンの全身がESP波特有の光彩を放ち始めた。
銀河系に殺戮と破滅をもたらす暗黒の歴史が、<紅い髪の魔女>の手によって、今、始まろうとしていた。