↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/81

■63.シン・ドミノ。

――弾道ミサイルの発射は、核攻撃と見做し、即座に核報復を実施する。


 アメリカ合衆国政府の通達に、中国共産党中央軍事委員会参謀部の軍高官から、中国人民解放軍の戦区級司令部の面々は驚愕した。

 日本国自衛隊や在日米軍の航空基地を一方的に打撃可能な兵器こそ弾道ミサイルであった。勿論、巡航ミサイルであっても南西諸島や九州地方の基地を攻撃出来る。しかしながら、巡航ミサイルは所詮、航空機の範疇(はんちゅう)に入るものだ。亜音速では目標に達するまでに時間がかかるし、敵の戦闘機や水上艦艇による迎撃を受ける可能性は高まる。航空自衛隊や在日米軍は近距離地対空ミサイルを基地防空用に揃えているため、最後の最後で弾頭が無力化されるケースも出てくるだろう。

 確かにあった優位性が、失われる。

 さりとて無視は出来ない。


「いまの美国なら、やります」


 と、孫徳荘国防部部長は中南海で断言した。

 その証左が東方に広がっている。朝鮮人民軍はアメリカ合衆国という超獣を目覚めさせた。朝鮮民主主義人民共和国が崩壊するどころか、北朝鮮の地形はアメリカ空軍地球規模攻撃軍団によって変貌しつつある。ひとたび口実を得れば、もはや彼らは核戦争を躊躇することはないだろう。

 孫徳荘国防部部長を除いた中南海の面々は、沈黙し続けた。

 朝鮮人民軍ロケット戦略軍による核攻撃は、アメリカの大都市を焼き払っただけにほかならない。世界各国の優秀な留学生やビジネスマン、観光客を惨たらしく虐殺し、在美支社や支店を破壊したのである。

 そして人々の憤怒は――全世界の赫怒(かくど)は、北朝鮮と中華人民共和国に向けられた。


(朝鮮人民軍の核攻撃がもたらした災禍をみて、英仏豪をはじめとする国々は戦線離脱を決めるのではないか)


 と、期待した華鉄一国家主席の考えは、あまりにも甘すぎた。

 親中・反中を問わず、核兵器を保有する国家は核運用能力を有するあらゆるユニットを活性化させ、最終戦争に備え始めた。

 その上で英仏軍は、手を退(ひ)かなかった。彼らもまた李恵姫の呪縛に囚われていたし、アメリカ合衆国の本気に感化されていた。いまのアメリカ合衆国政府は“口だけ”の存在ではない――義憤で世界を終わらせられる復讐神(ネメシス)であった。


 現在、アメリカ合衆国政府は、朝鮮民主主義人民共和国に対して経済的・軍事的支援を行い、アメリカ本土核攻撃の原因をつくった中国共産党政府に、厳罰を下すことだけを考えており、そのためならば、手段を選ばない姿勢を明確に示していた。

 中国人民解放軍による弾道ミサイル攻撃が止(や)んだことで、本州の在日米軍基地や自衛隊基地は、滑走路をはじめとした地上施設の復旧作業を完了。

 そこへ日本向けの供与兵器を含む軍需物資が、戦略・戦術輸送機に搭載されて続々と到着した。F-15C戦闘機やP-3C対潜哨戒機をはじめとする空自・海自向けの航空機は、アラスカ州から直接、千歳基地や三沢基地に飛来した。


――第二次世界大戦の教訓は、活かされた。


 と、これを受け入れる防衛省関係者は誰もが思った。

 その第二次世界大戦の教訓とはすなわち、「アメリカを味方につけた側が勝つ」である。

 約1億円の対艦ミサイルから、数十億円の価値があるジェット戦闘機に至るまでが、次々と日本国自衛隊に引き渡されていく。


 同時にアメリカインド太平洋軍は日本列島を足掛かりにした、中国本土空爆作戦に踏み切った。

 これまでアメリカ合衆国政府は、「大陸沿岸部の空軍・海軍基地や台湾本島に“駐屯”している地上部隊に対して攻撃を実施した場合、中国人民解放軍は即座にアメリカ本土へ反撃を行う」という中国共産党の発表により、大陸沿岸部への攻撃を躊躇(ちゅうちょ)してきた。

 しかしながら、もはや遠慮はない――。


 ここにきて中国共産党首脳陣は、“有利な戦争の終わらせ方”を真剣に考えなければならなくなった。

 が、事態は刻々と悪化している。

 中朝国境線は、突き崩された。

 中国人民解放軍北部戦区陸軍が擁する機動戦力である合成旅団の投入が遅れたため、旧朝鮮人民軍第12軍団所属の第42機械化歩兵旅団と第43山岳歩兵旅団は、中国側の阻止線を穿(うが)つことに成功。皮肉にも第12軍団は「敵の空挺作戦や強襲上陸作戦に備えた精鋭機動戦力」として、中国共産党の軍事的支援によって強化されていた軍団であった。

 加えて北朝鮮北西部に駐屯する旧朝鮮人民軍第8軍団将兵は、中華人民共和国遼寧省丹東市に侵入。

 そうして綻んでいく境界を、“偶発的衝突”が発生する前に殺到していた難民たちと、それに混じる旧朝鮮人民軍将兵が踏み越えていった。

 旧朝鮮人民軍将兵が浸透した遼寧省・吉林省には、中国人民解放軍北部戦区陸軍第79集団軍の第191軽型合成旅団・第46中型合成旅団・第116重型合成旅団・第190重型合成旅団が展開。

 彼らは難民の拘束と、旧朝鮮人民軍将兵の排除のために活動を開始したが、それはすなわち激しい市街戦の勃発――満州族の自治県や朝鮮族が数多く住む地域での戦争の勃発を意味していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。