17 部屋から出してもらえなくなりました
そんな訳で軟禁生活が始まったものの、意外とこれはこれで快適だった。
部屋が広いから歩き回ってみたり、改めてクローゼット……? 衣装部屋の中を改めて普段着に良さそうな男装を選んでみたり。
仕事に関する本以外は目を通してこなかったので、この屋敷にある本を何か適当にメリアとレイナに頼めば持ってきてもらえて、メリアは地方風俗や旅行記、レイナはロマンス小説をよく選んできてくれた。
植物図鑑などもあるというので、窓から見える庭の植物と照らし合わせて、今の季節に咲いてる花や、葉の形からいつ花をつける木なのかを見たりと楽しんでいた。
意外と引きこもりもいける……というか、元がひきこもり気質だったとハッとした。家から出るのは夕飯の買い出しのマーケットか、散歩に公園に行く程度。他はずっと家の中で父上と兄上の手伝いをしていた。
私が手伝った場所……河川敷が綺麗に整えられていたのも、コンラッド様が教えてくれたからだ。
そして、朝食と夕食はコンラッド様が部屋に来て一緒に摂り、食後のお茶も二人で楽しんだ。外の様子を聞かせてくれるので、全く退屈しなかった。
何より、一緒にいてくれるのが嬉しい。忙しい中でも、一緒にいたい、と言ってそばに居てくれる。時間を作ってくれる。それが嬉しかった。
無理をさせていないかは……気になったけれど。
でも、私がそれを聞こうとするたびに、微笑みかけられてしまっては気遣いを無駄にしてしまう気がした。ここは、素直に甘えておこう。
まだ、女装するのは怖い。コンラッド様にも肌を見せるのが怖い。触れていたいと思うのに、実際に隣り合って座り肩を合わせて居るのに、素肌はまだ怖い。
夫婦なのに、さすがに愛想を尽かされるだろうかと思ったが、コンラッド様は変な触り方はしない。時折愛しくてたまらないというように、肩を抱いて額や瞼に唇を落とすだけ。
それが擽ったくも嬉しくて、私がそっと抱きしめると、大きな腕の中に閉じ込めて優しく背を撫でてくれる。
思えば、ずっと肩肘を張って生きてきたのかもしれない。誰の目にも触れずに、この人の前でだけで生きていける。
背負うものはこの先出てくるだろうけれど、まだ待っていてくれる。
「コンラッド様……、私はダメになってしまいそうです」
「君は、一度甘えることを覚えた方がいい。大丈夫、君はダメにはならない、それは私が知っているからね」
甘やかされたからダメになる、なんていうのは、私にとって一番言いたく無い言葉だ。
甘やかされて、それから、立ち上がる。今は甘えていてもいいと待ってくれている。
私はそれに応えたくなった。
次の日から、メリアに教わって公爵夫人としてやるべき仕事を少しずつ覚えていった。
今まで実家で培ってきた能力は無駄ではないようだ。教えられたことがすんなり理解でき、あとは公爵家の規模を実感として把握できれば、もっとちゃんとした仕事ができそうだ。
コンラッド様がいいと言ってくれたら、一緒に屋敷を見て、人を覚え、家宰を取り仕切る公爵夫人になりたい。
その為にも、夜な夜などこかへ出掛けていくコンラッド様がその話をしてくれるまで、私は全ての準備を万端にしておこうと思った。




