守るべきもの
こんにちは~ダクウルです!
この物語は「勇者ライの物語(仮)(連載予定)」と同じ世界観です。サイドストーリー的なものだと思ってください。もちろん、この「守るべきもの」単体でも十分楽しめる内容になっています。ご了承ください!
序章 旅立ち
ある片隅に、いろはと言う名の戦士がいた。
今日も辺りは荒れていて、どこからともなく悲鳴や泣き声が聞こえてくる。
「あとは…あの村か…」
そう呟き、彼は歩き続ける。
いろはの仕事はこの破壊された世界で、市民を盗賊やモンスターから守ること。
今日はあの村に救いの手を差し伸べるそうだ。
さやから剣を取り出したいろはは、警戒しながら前へ進む。
「生きていてくれよ…」
雑魚モンスターを剣で切り裂きながらそうつぶやく。
「…大丈夫か?」
民家にたどり着いたいろは、その村で唯一生き残っていた、14歳くらいの少女に手を差し伸べる。
「あ…ありがとうございます…」
真珠のような涙を流している少女はありがたくその手を受け取る。
「これ食べな、元気が出る。」
といろはは薬草を手渡しし、震えるその子の頭をなでる。どこか懐かしいような感覚をいろはは覚える。
「私の名前はいろはだ。君を守るためにここに来た。この家もそろそろ危険だから非難したほうがいいぞ。」
泣いているその子に優しく話しかける。
「そんな…お母さんの為に守ってきたのに…」
「残念だがもうここは…」
悲しむ少女に現実を告げるいろは。少し胸が痛くなる。
「お母さんの形見なのに…」
その一言でこの少女の状況を理解するいろは。
そして、せめてもの救いを与えようと、提案を持ち掛ける。
「…一緒に来るか?」
「…え?」
「…親は?」
「…いません」
「こんなところで一人でいたら危ないだろ?」
「でも…」
「ここにいると死んでしまうぞ。」
「…分かりました…」
家を未練ありげに見ながらも、立ち上がる少女。
「いくか…」
「…はい」
こうして二人は、焼けつくされ、焦げたにおいのする村を出た。
新たな希望を求めて。
第二章 覚悟
「私のことはエルって呼んで下さい…」
村を出た直後、少女がいろはに話しかける。
「エル…か、分かった。武器とかは持っているのか?」
「一応これなら…」
そういってエルは手を開く。
手の中に握られていたのはそれは美しい銀の短剣だった。
「それならいい…ん?それって…」
「え?」
「いや…何でもない…」
一瞬動揺したいろはは、それが理由で地面の中で動いている敵に気づかなかった。
ドカッと見えている部分だけで10メートルはあるムカデに触手をはやしたようなモンスターが地面に穴をあけて飛び出してくる。
「クソッ!」
焦るいろは。
「キャーッ!」
あまりにもグロテスクの見た目のモンスターに悲鳴をあげるエル。
「下がれ!」
剣を振りかざし、呪文を唱えるいろは。
「雷光斬!」
大きく腕を振り、雷の力を取り込んだ剣で敵の首を切り落とす。
しかし、地面から新たなる触手のようなものが出てき、いろはを拘束した。
「エル!逃げろ!」
いろはの叫び声を聞きながらエルは涙を流し、絶望していた。
「また、私は何もできないの?私は誰も守れないの?もう、こんな運命…いやだよ。」
「クソッ…身動きがとれねえ…どうした!早く逃げろ!」
せめてエルだけでも逃がそうとするいろは。
しかし、彼女はこの巨大なムカデのようなモンスターの前で腰を抜かしていた。
「お母さんさえ守れなかった…あの時のお父さんみたいに逃げたくない。この運命、自分で変える!」
エルは涙を拭き、まぶしく輝く銀の短剣を手に取り、ゆっくりと立ち上がった。
「そんな短剣で勝ち目は…」
いろはは、無謀なエルをみてそう思った。
「ハアッ!」
彼女は奮い立った。途端に銀色の魔法陣が展開され、エルは青白い光を纏った。手には銀色のあざが光り輝いていた。
「もう、逃げはしない。」
そう呟く彼女の瞳には覚悟が宿っていた。
「とりゃぁあ!!」
刹那、触手たちは切り落とされ、光とともに消えた。
彼女がコツコツとした練習で得た力は、たかがムカデには膨大過ぎたようだ。
第三章 真実
「ありがとう。エル」
いろはは起きながら言った。エルは、また元に戻っていた。
照れながら頭をかくエル。
「だけど君の本当の名前はエルじゃないよね。」
困惑するエル。
「え?どうしてそれを?」
「だって、その銀の短剣は私が君にあげたものなんだよ。」
「…へ?」
エルは脳が空になったかのようなアホズラで続ける。
「いや…お母さんから最後にもらって…」
「大きくなったね。エルローゼ。」
少し悲しみを含みながら、でもうれしい気持ちのほうが勝った声でいろはは話しかける。
「パ…パ?」
半信半疑でいろはをみるエルローゼ。
「エルローゼ?」
「…。」
エルローゼの目には、さっきの覚悟からは想像できないほどの涙がまたたまっていた。
「ねえ、どうして…どうしてあの時行ってしまったの!?お、お母さんは…」
いろはは落ち着いて弁解した。
「私は逃げたわけではない…。私は…お前を守ろうとしたんだよ…」
「じゃあ、なんでお母さんを見捨てたの!」
エルローゼの目には、怒りと悲しみがうかがえた。
「すまない…。あの時、魔物の大群に襲われた時、私は戦うつもりだった。自らの命を犠牲に君たち二人を守るつもりだったんだ…だがお前のお母さん、私の妻エリカは反対した。彼女はこう言ったんだ「私が究極の守りを二人に授けるわ。だから二人とも逃げて!どのみち私の命は短いのだから…」っと。倒れるエリカ、究極の守りによる大爆発。その短い瞬間に私は幼い君にその短剣を握らせ、安全な場所まで運び。お母さんを助けようとした…まあ、そのあと魔物に捕まってしまったんだけどな…」
「…そんなの…信じれるわけ」
エルローゼは現実が受け入れられなかった。
「本当なんだよ…」
いろはは否定し、続ける。
「私は…私はエルローゼと一緒にいたいんだ…」
短い静寂。そしてエルローゼは口を開いた。
「わ、私は父を見つけたら殺そうと思っていた。そのために強くなる努力をし、少しは戦えるようになった。銀の短剣は欠かさず磨き、いつか、私たちを見捨てた馬鹿を殺そうと思っていたの…」
「エルローゼ…」
「皮肉なものなんだね。恨んでいた人を殺すための武器もその人のものだったなんて…私はなぜこれを磨き続けたんだろう?」
悲しみを顔に表し、その場に座り込むエルローゼ。
「…なぜ今殺さない?」
いろはが問いかける。
「それは…」
「私が悪かった…さあ、殺せ。」
「…」
その時、周りの岩が動き出した。それは重なり合い、たくさんの石像となっていた。
「キャァー!!」
エルローゼはその石像の一つに捕まれてしまった。
第四章 再び旅立ち
「エルローゼ!!」
ガシッ!ドカッ!っと石像を剣で砕き、いろははエルローゼの手を取り、助け上げた。
「いったん逃げるぞ!」
いろはは焦りながらも叫ぶ。
「なにしてるんだ!」
「…フフッ」
エルローゼは少し微笑みを見せた。
「なにがおかしい?」
いろはは疑問に思った。
「…全員戦闘配置。」
そう、呟くエルローゼ。
途端に、その石像たちがエルローゼの前に整列し、いろはに対して隠していた剣を向ける。
いろはに向かって攻撃してくる石像たち。
いろはは焦りながら剣を振る。
「この量は…」
しかし、いろはは気が付いた、どの石像もいろはの急所を狙ったり、けがをさせてこようとしないことを。
「もう、おしまい☆」
エルローゼは指をパチンと鳴らす。石像は再びもとの岩に戻ってゆく。
「な、なにがしたい!」
いろはは疑問を投げかける。
「三年前のあの事件の前と同じ…やっぱりいっつも面白いね。「パパ」。」
「本当は殺したかったんだけど、今パパは私のことを何よりも守ってくれようとした…パパが言った事…信じたくないけど、信じるよ…」
いろはは実の娘の顔を見る。
「許して…くれるのか?」
「もう。いいんだよ…でもね、その代わりに…」
息を深く吸いパパに対して話を続けるエルローゼ。
「お母さんのためにも私を守り続けてね!そしてすべての元凶の魔王を倒しに行こう!」
「…ありがとう。」
いろはは、静かにそう答えた。
こうして守るべきものを手に入れたいろはと、エルの冒険は始まった。エルローゼの懐では、あの銀の短剣が青白く輝いていた。
物語を最後まで読んでいただきありがとうございます!初投稿になりますので、まだまだ表現力の低さや面白さにムラがあると思います。これからそういう部分も改善していきたいので、ぜひアドバイスや感想よろしくお願いします!
ダクウル