↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
45/66

窮地

「――グギャオォォォォォォォォォォンッ!」


「がぁっ!」


「ぐわぁぁぁっ!」


 薙ぎ払われた剛腕によって戦士たちが吹き飛ぶ。

 がなり立てる禍々しい咆哮が恐怖として胸に刻まれ、ルークは足がすくんだ。勝手に頬が引きつり歯がガタガタと震える。

 そんなとき、暴れまわるアビスの近くで、頭を抱え座り込んだ少女が目に入った。


「まずいっ!」


「ルーク様、危険です! お下がりください!」


「できるかっ!」


 ルークは恐怖に支配されかけた心を奮い立たせ、震える足を無理やり動かし、少女の元へ駆け寄る。

 護衛の騎士たちもすぐに後ろに続き、ルークを追い抜いてアビスに突っ込んでいった。護衛としての責務を果たすために。


「君、大丈夫か!?」


「……へ?」


 ルークが膝を立て少女に目線を合わせると、少女は肩を震わせて顔を上げ、酷く怯えた目でルークを見る。

 彼はできるだけ少女を怯えさせないよう柔らかい表情を作った。

 

「ここは危険だ。早く逃げよう。お父さんかお母さんは?」


「見つからないの……」


「そっか……じゃあお兄さんと逃げよう」


 ルークは少女の震える小さな手を握り立ち上がった。

 そのとき、背後で大きな衝撃音が響く。

 

「がはっ!」


「うわぁぁぁぁぁ!」


 ルークが背後を振り向くと、護衛の騎士たちは長剣を叩き折られ、勢いよく吹き飛ばされるところだった。

 彼らの実力はドラチナス騎士団の中でもトップクラス。

 それが手も足も出ないとなると、もう打つ手がない。


「くっ……」


 絶望で立ちすくむルークへ、ついにアビスが顔を向けた。

 ルークの膝が震える。

 それでも少女を背にかばってアビスを睨みつけた。

 地面をゴロゴロと転がりうつ伏せに倒れた騎士が、血まみれの顔を上げて必死に叫ぶ。


「ルーク様、お逃げ――」


「――ギャオルゥゥゥゥゥッ!」


 アビスは騎士の声を遮って叫び、地を蹴って大きく跳んだ。

 そして一瞬でルークの目の前に舞い降りた。

 衝撃によって砂埃が吹き荒れる。


「くっ!」


 ルークは少女をかばうように抱きしめ、背をアビスへ向けた。

 普段の冷静な彼なら、そんなことをしても無意味だと分かったはず。

 しかし無情にも、アビスは翡翠の竜鱗に覆われた右腕を振り上げ、強靭な爪で引き裂こうとする。

 満身創痍の戦士たちや成り行きを見守る民衆も、絶望に顔を歪めるだけでなにもできない。


「ルーク様ぁぁぁぁぁっ!」


 騎士の必死な叫びも虚しく、それはルークたちの頭上へと振り下ろされた。

 

 ――ドガアァンッ!


 重い打撃が地を砕き、衝撃音を響かせる。

 砂埃が舞う。

 ……同時に、『熱風』が吹き荒れた。


「――ぇ?」


 ルークは自分の意識がまだあることに気付き、まぶたを上げる。

 抱きしめていた少女も無事で、目をギュッとつぶっている。

 困惑しながら横を見ると、大きな翡翠の腕があった。

 アビスは狙いを外したのか? そうとしか考えられず、ますます混乱するが、背後を振り向くと――

 

「……ぇ?」


 違った。

 アビスの右腕を見ると、肘から先がない。

 綺麗に切断されているのだ。

 そして、ルークとアビスの間に立ちはだかっているのは、ひとりの『竜人』。


「……ウィルム、なのか?」


 ルークが目を見開いて唖然と呟くと、ウィルムは横顔を向けて頷いた。

 彼は猛獣の毛皮で作られた腰当に、黄褐色のレザーアーマーを装備している。

 その右手には、灼熱の熱気を宿し紅蓮に輝く剣。

 それが凄まじい熱気を放っていた。 

気に入って頂けましたら、ブックマークや評価をよろしくお願い致します。

みなさまの応援が創作活動の糧になりますのでm(__)m


また、↓の作品もよろしくお願い致します。


・転生の設計士 ~科学と魔法が融合するとき、異世界の逆転劇が始まる~

https://ncode.syosetu.com/n0778fw/


・ダークインベスター ~逆襲のための異世界投資術~

https://ncode.syosetu.com/n4804gj/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。