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箱の中で生活している俺は、外の世界へ行ってみたかった

作者: 石川リョク

若干のSF要素含む短編ホラーです


地球の未来はこうなってるかもしれません。


いつからだろう、俺が生まれた時にはすでにこのルールは存在していた。


『植物を傷つけてはいけない』


『植物を傷つけた場合、命を持ってその罪を償わなければならない』


俺は植物を図鑑でしか見たことがない。外の世界へ出たことがないからだ。

俺たちが住んでいる町は、真っ白な壁と真っ白な天井で覆われている。まるで大きな箱の中にいるみたいだった。

外へ出られるのは国の偉い人、もしくは一部の科学者だけだ。

大人たちは外の世界のことを“死の世界”と言う。


どういうことだろう


小学6年生の俺は外の世界が気になって仕方なかった。


ある日、俺の手下である一人の少年を校舎裏に呼んだ。


「お前、外の世界を観察して来い」


「へ....?何言ってるの...?」


あまりに情けない声だったためムカついて、ついそいつの腹を拳で殴ってしまった。


「っ.......」


少年はお腹を抱えて倒れ込んだ。


「俺の言ったことがわからなかったか?お前の父さん、お偉いさんなんだろ?次、外の世界へ行く時にこっそりついて行くだけだ。」


少年は身体を小刻みに震わせながら首を横に振った。


「あぁ?なんだよその態度は、もっと痛い目にあいたいのか?」


もう一度殴ろうと拳を振りかざした。その時、少年がくしゃくしゃになった顔で俺を見上げた。


「ててて、提案があります...」


「あ?」


「次に外へ行く日付と時間、あとどうやって行ったらいいかも教えるから...それで勘弁してぐだざぃ..」


少年はもう涙が止まらなくなっていた。


「よし、いつだか言え」


そうして俺は外へ行く時間と秘密のルートを入手した。


出発まであと1週間あった。

その間に外のことを少しでも知ろうと思って、近所の図書館へ通った。俺はそこに書いてあったことをこの日記帳に記すことにした。


⑴数百年前、人々は外の世界で暮らしていた。


⑵しかし、資源を大量に使い、自然破壊を進めたせいで、外で暮らすことが厳しくなった。


⑶地球に異常現象が起き始めたことにより世界の人口が急激に減った。この異常現象のことを“植物の反乱”と言うらしい。詳しいことは書いてなかった。結局、人々は巨大なシェルターを作り、そこで暮らすことにした。


シェルターと言うのは、今俺たちが住んでいる世界のことだろう。異常現象というのが妙に引っかかった。


植物の反乱?何を言ってるんだ


俺は疑問に思いながらも、出発当日を迎えた。


少年に教えてもらった通りのルートを行くと、数台の大きなトラックが駐車しているところに着いた。トラックには政府のマークがデカデカと印刷されている。


これだ


俺は忍び足で近寄りこっそりと荷台の中に隠れた。

しばらくするとトラックが出発した。最初の方はほとんど揺れは無かった。しかし次第に大きく揺れるようになっていった。


車酔いしそうだ


吐きそうになっていると、突然外から明るい光が入ってきた。そしてトラックが止まった。

大人たちの声が外からパラパラと聞こえる。

俺は荷台の隙間から外の世界を見た。


すげぇ.....


目の前には図鑑で見た植物が点々と生えていた。

大人たちの声が遠ざかると、気づかれないように慎重に荷台から降りた。同時に砂埃がパッと舞った。地面は乾いた砂で覆われている。

これと似た地面を図鑑で見たことがある。


“砂漠”みたいだな...


俺は近くにあった自分の身長よりも大きくて太い“サボテン”のような植物に近寄って行った。間近で見ると無数の白い棘が生えていた。


気持ち悪りぃな...


その時ふとあのルールが脳裏をよぎった。


『植物を傷つけてはならない』


ダメだと言われるとやりたくなるのが人間の性である。

俺の心には沸々と黒い好奇心が湧き上がってきていた。


周りを確認する

大人たちの姿は見えない。


『植物を傷つけてはならない』


よし...


俺は荷台で見つけたハンマーを持ってきた。

そして野球のバッターのように大きく振りかぶると、“サボテン”の細い部分に思いきりハンマーを打ちつけた。


ブシャッ


「うわっ!なんだよこれっ」


“サボテン”の傷つけたところから赤黒い液体が噴き出した。

まるで人の血みたいだった。

赤黒い液体はドクドクと流れ続ける。

俺は返り血を浴びたような姿になってしまった。

困り果てていると背後から大人の声がした。


まずい...!


急いで荷台に飛び込んだ。

大人たちの声が近づいてくる...

俺の心臓は口から出そうなほどドキドキしている


外の様子が気になって荷物の隙間から外の様子を確認した


その時、俺は、大人と目が合ってしまった


「おい、ここに子供がいるぞ」

「なんだって??」

「子供?」


次々と大人たちがやってくる。

俺は荷物の間で縮こまった


「君、いい子だから出ておいで。何もしないよ。本当だ、約束する。」


胸に金色のピンバッチをつけた男が僕に優しく話しかけてきた。

きっとこの人が一番偉い人なのだろう。


「おいで、大丈夫」


このままではどうしようもないと判断した俺は日記帳を置いて荷台から降りた。


「サボテンを傷つけたのは君かい?」


俺は小さなく頷いた。

ピンバッチの男は俺の背後に回ると、周りの大人たちを集めて話し合いを始めた。


「君」


急に呼ばれてビクッとする。

俯いたままゆっくり振り返ると、ピンバッチの男が後ろに立っていた。

腰を曲げて俺の顔を覗き込んでくる。


「君、わかってるよね」


なんのことだかわからない。


ルールのことか...?


男はニコニコしている。

そのまま立ち上がると俺から数歩後ろへ引き下がった。


「やっていいよ」


へ....?


次の瞬間、俺はぶっ倒れた。


何が起きたかわからない


目の前をサボテンの血が流れていく。

そこにもう一筋、俺の頭の方から赤黒い液体が合流した。


動くことはできなかった


大人たちの声が聞こえてくる。

「この件、どのように報告しましょう?」

「交通事故で処理しておけ。死体を持ち帰って偽造すればいい。」

「わかりました。」

ピンバッチの男が俺の前にしゃがんだ。


「この世界の植物たちは人の血を栄養にして成長する。君の死は無駄じゃない。世界のほんの一部に貢献したんだ。よかったな」


そう言うと男は立ち上がった。

「こいつをトラックに運べ」





俺の意識はそこで途絶えた。




読んでいただきありがとうございました。


今後の執筆活動のため、ご意見・ご感想を書いていただけると、とてもありがたいです。


よろしくお願いします。

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