第二話 両親
どうも! この小説の、本当の作者カリン・アドワーグよ。
お話はまだまだプロローグだから、雰囲気を捉える程度で我慢してね。
じゃ、あとがきで!
あれは、幻聴だろうか。古い時計が時刻を知らせている。「ボーン、ボーン」と、重く低く二回鳴った。それは遠くで響く、寺院の鐘の音に似ている。
あれは幻だろうか。父親が手足を拘束され、自由を奪われている。彼は悪魔に喰われようとしていた。母親が、ひたすら神に祈っている。父親は虚ろな目で悪魔の行為を眺めている。母親は悪魔の姿を、突き刺すように睨んでいた。まるで、悪魔を呪い殺そうとするかのようだ。
その三人の様子は、大きな鏡に捉えられていた。悪魔と、父と母。三者の関係が、過不足なく鏡の中に表されていた。
不意に、鏡の中から強い光が差し込んだ。鋭く尖った槍のような光の束が、悪魔の胸を貫いた。次の瞬間、母親の口元が緩んだ。そして父は、母の方に顔を向けた。それは二人の愛情の勝利だった。いま、三者の関係は揺らぎ変化した。
しかしそれは、一瞬の歓びに過ぎなかった。その瞬間を逃さずに、母は悪魔を抱きかかえなければならなかった。父の前で、母は悪魔を抱く。それは悪魔を封じるため。その影響が、外界に及ぶのを防ぐためだった。
父はその一部始終を認め、見守る。母と悪魔を情で包み込んだ祠の、番人となる。それは永遠に暴いてはいけない祠であり、そのために、父は命を掛けるのだ。
「ボーン、ボーン」
ライタの家の時計が、午前二時を知らせた。幼いライタがこんな時間に目を覚ますことは滅多にない。今晩は、隣に両親の姿が見えないのだ。
だからだろうか、不安になったライタは尿意をもよおした。
いままで見ていた恐ろしい夢の跡も影響して、ライタはベッドから出るのが怖かった。
トイレに行きたいけど行きたくない。ライタを覆う暗闇の中に足を踏み出す、勇気がない。
幾らかの時間が過ぎた。ライタの尿意は限界に達していた。
よし、トイレに行こう! 決心して、崖から飛び降りるような覚悟と勢いで、ライタはベッドを出た。
灯りは月明かりだけである。ランタンもガス灯もない。廊下の横壁に手をつきながら、ライタは便所に向かった。
ようやく着いた。トイレに。無事。
ライタはドアノブに手をかけて引いた。すると、何者かの気配がした。あっ。
父が、便器に座っていた。その頭の上には、何かよくわからないけどとても気持ちの悪いものが渦巻いて浮かんでいた。
魔物⁉︎ ライタの住む村の周りには、少し離れると魔物が現れることも珍しくはない。
しかしその父の頭上に浮かぶ「魔物」は、ただの魔物にしてはあまりにも強い邪悪さを感じた。それは幼いライタでも感じられることだった。これは普通の事態ではない。
ライタはその場を離れ、母親を探すことにした。ライタは気づいていなかったが、「魔物」がライタを襲う様子がなかったのは、不幸中の、最大の幸いであった。「魔物」は父親だけで満足していたのだ。
母は家中を探しても、どこにもいなかった。その頃には、ライタは恐怖も吹っ飛び昼間同様の活発なライタになっていた。
どこに行ってしまったのだろう。ライタの目には涙が溢れていた。正直な話、父の生死もわからず、母の行方もわからない。いまは夜中。幼いライタにとってこれほど不安な状況はない。
その時、水の流れる音がした。その音は、風呂から聞こえてくるようだった。
ライタはそちらに足を運んだ。胸騒ぎがする。どうしようもないほど胸が鳴った。手足が震える。
これからよくないことが起こる。そんな予感が支配していた。
風呂場に着くと、やはり水音はその中から聞こえていた。
震える手で、風呂の扉を開ける。中を覗き込んだ。湯船から水があふれていた。中に誰かが浸かっている?
母親だった。母が、湯船に浸かっていた。
水の蛇口が開きっぱなしで、湯船から水が流れ出ていた。母は、目を閉じているようだった。
「お母さん」
ライタは母を呼んだ。
ライタの記憶は、それ以降がない。
次にある記憶は、父でも母でもない大きな男に手を引かれ、
「今日から、お前はわしが育てる」
そう言い聞かされていた。ライタは大粒の涙を流していた。とめどなく、とめどなく。
どうだったかしら? カリンです。
しばらくは、この物語の主人公「ライタ」の幼少期のお話が進んでいくわ。
いまいち分かりにくいのは、ライタの記憶が曖昧なせいもあるの。私がうまくフィクションを混ぜているけどね。あぁ、この物語は、ライタから聞いた話を元にして作ってるからね。そのへんは、最初から読んでる人はわかると思うわ。
ではまた次のお話で。バラ、ナイ。
(やっぱりこれじゃ締まらないわ〜。おっちーになんとかしてもらお)




