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3.他に転職先無かったの?


「困りますねぇ。学園の備品をそんな風に使われたら?」

「っ!?誰ですか!」


突然、肩に何者かの手を置かれた。


即時に身体強化と感覚強化の魔法を発動し手を払い、その場から飛び跳ねる。


「おっと。危ないですよぉ。原初?」


声の主人はのんびりとした声で返すと両手をぷらぷらと左右に揺らす。


「…何で……」

私はその姿を見て驚愕した。


長い金髪と後頭部から耳先まで伸びた渦を巻くような“角”

背中から生えている小さな“翼”

うっすらと開かれた瞳の先に見える紫目

ノホホンとした雰囲気を纏った女性


「魔王ッ!」

「もう、退職しましたぁ」


彼女こそ、千年前に魔族を束ねていた魔王。

2つ名を天空を落とす者 アナスタシア・フォン・エゼルだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


「学生には手が出せない出せないお茶ですよぉ」

「飲むと思います?」

「今更、毒で殺せるなんて思ってませんよぉ」


……私は今、学園長室に来ている。

理由は単純明快。何故か千年前の魔王である彼女が“現・学園長”だからである。


「全く、貴方は最初から失礼でしたねぇ。初対面の時なんて扉越しから攻撃して来ましたし

私楽しみにしてたんですよぉ!扉が開いた瞬間。「フハハッ!よく来たな人間!」って言うのぉ!」

「いや、私達が扉の前まで来ても貴方動かなかったんですもん。寝てるのかな?って」

「いや、寝てるかもしれない相手に容赦なく撃ち込むって外道ですか」


“やれやれ”と言った風に首を振るアナスタシア。

いや、ですが。魔王討伐メンバーって人族では勇者って言われてますけど、要するに“凄い強い暗殺者”ですからね?


その事を理解しているのかしていないのか、彼女は自分で入れた紅茶を飲みながらホッコリしている。


「……で、なんで私が原初だと?そして、貴方はどうして図書室に?」

「それは、後で話します。

今は、他の事を説明します。」


そう言って、アナスタシアは左手に嵌めた指輪に魔力を込める。

魔道具の類だろうか。と思ったら空虚から大きな地図が出現した。


「まず、この世界については何処まで知ってますか?」

「過去の人格の記憶を継承してるので一般的な知識はあります」

「成る程。手間が省けて何よりです。では、細かい点まで説明しておきます」


そう言って地図を広げるアナスタシア


「まず、大陸は三つ

人間大陸・魔大陸・北陸が存在します。

魔大陸は魔族の多くが暮らし、強力な魔物が徘徊する過酷な環境です。

人間大陸が私達が今いる大陸ですね。

で、問題は北陸。」

「雪嵐が降り止まず、植物や生物の生態は愚か、大陸自体の調査すら行えない氷の環境ですよね。でも、周囲の魔素の濃度が高く貴重な鉱石が大量に眠っていると考えられている。」


千年前は暖かくて植物で溢れる美しい世界だった。


「そうですね…。

で、次は国ですね。

北陸は言わずもがな、国はありません。魔大陸ですが、1000年前と変わらず魔大陸の中央に魔都と呼ばれる巨大都市がありその周りを小さな村々が囲んでいる感じですね。

最後に人間大陸。

大きく分けて三大国家と呼ばれる物が存在します。

ガディア王国

人間大陸で最も国力と国土を持つ最古の大国です。周囲に村々も多く存在し、気候も良く暮らし易い国ですね。保持戦力は騎士団と呼ばれる騎士達と国王直属の近衛団のみです。

帝国

300年前の戦争時代に傭兵団が立ち上げた国家です。人間大陸の最北にあり一年中ずっと雪が降り止みませんが、最新の技術と軍と呼ばれる強力な兵団を持ってます。

神樹共和国

無数の村や町、多数の種族が集まりあって出来た国家です。国土は最も狭いですが、共和国の住人、全てが国の兵です。戦争になれば帝国より落とす事が困難でしょう」

「大体わかりました。所で一つ質問して良いでしょうか?」


そこで、アナスタシアが紅茶を口に含み一呼吸置いた。


「なんで、貴方が学園長やってるんですか?」

「まぁ、君達に負けてから魔王になりたい部下達に裏切らましてねぇ。魔大陸に居場所が無くなりました。

なので、人間大陸で隠れて暮らしてたら、女性が魔物に襲われでるの見ちゃいまして、助けたらその人がこの国の女王だったんですよ」

「……奇妙な縁もあったものですね。」


あの魔王が人助け?

時代も変われば人も変わると言うのは本当らしい。


「縁と言えば、図書室で彼女と会ってた見たいですが、どうでした?」

「彼女とは…ウルと言う黒髪の女子生徒ですか?」

「………えっ?気付いてない?」


まるで、“なに言ってるんだろう、この人”と言った感じの表情を浮かべるアナスタシア。

そんなに可笑しい事を言っただろうか?


「彼女は…」


その時、扉がノックされた。

私は身体強化と感覚強化を発動し、アナスタシアは常に閉じている瞳を開いていた。


「どうぞ?」


アナスタシアが先程と変わらない声で告げると、扉がゆっくりと開き始める。


そして、現れたのはウルと名乗った黒髪の少女だった。

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