2.再びの旅立ち
私が再び目を覚ますとそこは寮のベッドの上だった。
布団から出ると窓を開けて景色を一望する。
石畳の建物、門の先で賑わう人々、穏やかな風、彼方まで続く雲のない青空。
何かを始めるには良い日だろう。
「誓いを果たしますよ。フローディア」
“待ってる”
私が薬指の指輪に唇を落とすと、そよ風が頬を撫で、長い“銀髪”をなびかせた。
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と言ってもやる事は沢山あり、そして限られている。
まず、武装の確保、神の所在、そして、生活の方法だ。
因みに、生活の方法に関しては問題はない。その理由は、私が原初である以前の人格の生まれに会った
ロウは簡単に言えば地方貴族と妾の子の間に生まれて、勘当された身だ
彼は15歳までの生活と学園の卒業を保証を条件にノード家との縁を切られた。
今は12歳、これから15歳まで生活しながら神の所在と情報を集め、金を集めながら武装を揃えて、壊神・インテルミスの目覚めと同時に奴を打つ手段が必要だった。
「…………取り敢えず、分からない事が多すぎますね。学園の図書室へ行きますか」
私は時間を確認して、制服に着替えると図書室へと向かった。
「失礼します」
図書室に入ると、そこは誰もいなかった。
いや、朝だから利用者が少ないからって無人なのはどうなんだろう……
まぁ、いい。私にとっては好都合だ。
そう思いながら本棚から数冊の本を取る。
「とりあえず。歴史ですかね……」
「ふむ。これなんかどうだい?」
「神話か…そうですね。丁度いい…って!うおあっ!?」
びっくりした……
「何をびっくりしてるんだい?失礼な」
「いやいや、無人の図書室で声かけられたら誰でも驚きますって」
「なるほど。確かにね……」
そう言うのは長い純黒の髪を腰まで伸ばした可愛らしい顔立ちの少女だった。
「まぁ、探し物を手伝ったんだ許してくれ。僕の名はウルだ。家は没落したから性はない。君は?」
「ロウです。同じく勘当された身なので性はありま「やっぱりか。久しぶりだね!」「久しぶり?」」
そう言って、目の前の少女が可憐な笑みを浮かべた。
「……」
「見惚れたかい?」
「なっ、にを言ってるのか?
ところで、久しぶりって会ったことありましたっけ?」
「あぁ、昔だけどね。君は忘れてしまったかい?あぁ、でも確かに昔はこんな姿じゃ無かったからね。」
そう言って髪をクルクルといじり始めたウル。普通に見れば可憐な少女なんだけど………何だろう、この違和感?
「……ふふっ。まぁ僕の事を覚えてなくてもいいさ。“絶対に”思い出す」
「!?」
「じゃあ、また後でね…」
そう言って踵を翻すウルはゆったりとした足取りで図書室から出て行った。
……あの笑い方は…し……いや、間違いだろう。
彼女は死んだはずだ。確実に…私が殺した。
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「じゃあね。全てを始める者」
「さよなら。終わりを見る者」
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“あの時”の光景がフラッシュバックする。
「…君の為にも必ず……」
私は机に座り、本を開いた。
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かつて、この世界にはアルカヌムと呼ばれる7人の英雄がいた。
彼らは混沌と争い溢れる世界に終止符を打つ為、それぞれが信じる神と契約し神秘の力を得る。
新たなる地を求める航海の力
・海賊
癒しと救済をもたらす力
・聖者
絶望を貫き脅威を払う力
・紅槍鬼
先見を占い導く力
・死神
凍て付かせ守る力
・冷姫
調停を保ち停滞する力
・森羅
進化し、進み続ける力
・原初
彼らは偉大な功績を多数残し、より豊かに希望溢れる平穏な世界となる
しかし、その平穏は長くは続かなかった。
人の身で力を持ちすぎた彼らは、1人も例外なく悪に堕ちた。
海賊は強奪を繰り返し
聖者は禁忌の実験を行い
紅槍鬼は守るべき者達を全て貫き
死神は死を振りまき
冷姫は自らと共に国を凍て付かせ
森羅は樹海を広げ
原初は星そのものを壊そうとした
しかし、彼らと契約した神達はその行動を見かね自らの命と引き換えに神罰を下し彼らをこの世から消し去ったので会った。
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「……ふっ…ふふふっ…ははっ!ハッハッハ!!!」
書いてある内容があまりに可笑しくて私は笑った。
アルカヌムが堕ちた英雄?大罪人?
この世界を豊かにしようとして悪に堕ちた?
馬鹿にするのも大概にしろよインテルミス!
彼らを大罪人に仕立て上げ、挙句に神はその身を犠牲に神罰を下す!そんな悲劇などあって良いものか!
「ゼノ・フレア」
シュッ…
私が最上級炎魔法を唱えると、本は塵すら残さず一瞬で消失する。
学園の備品?貴重な情報源?知った事か
「壊神。貴方の例えは正しい。私は始める者。ならば始めましょう。復讐という名の神殺しを」
長い銀髪を書き上げ、空を睨みつけた。
「困りますねぇ。学園の備品をそんな風に使われたら?」
「っ!?誰だ!」
突然、肩に何者かの手を置かれた。