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らぶがん いず べりぃぐっど。  作者: 源小ばと
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9.顎下に銃口

水の中に沈んだ、と思ったのは一瞬だけだった。


あたしの体はすぐに浮き上がり、水面から顔が出る。


そして目の前の景色が一変したことを知る。


森の中にいたはずなのに、周りはゴツゴツとした岩場。

浸かってる泉の色も真っ赤だった。


湿度の高い空気の中、あたしは空へと飛び上がる。


不思議なことに服も体も濡れてなかった。


「メル、大丈夫?」


「ああ。ここが…魔界なんだな」


ちょっと長い思い出話をしちゃったけど、ここで冒頭に戻る。


あたしは一気に魔王がいる城まで潜入し、キューピッド活動の許可をもらうつもりだった。

魔王のお墨付きがあれば、誰も文句なんて言わないでしょ。

今の魔王は青年だっていうし、理解してくれるかも知れない。


「やばそうだったら、この泉にまっすぐ戻ってくるんだぞ」


「うん。念のため、防御魔法をお願い」


あたしが頼むと、メルがすかさず魔法を展開する。


薄い透明な膜のようなものが、あたしとメルを包んだ。


これで多少の物理攻撃や魔法攻撃を防ぐことが出来る。


「よし。じゃあ、行こう!」


あたしは両手に銃を出現させ、羽ばたいた。


本当に…昼なのか、夜なのか、わからないほど暗い空。


花も緑もなくて、ここで暮らしてると飽きてきそうだなぁ。


そんなことを考えてると、すぐに大きな石造の城が見えてきた。

様々な悪魔や魔物が壁に彫刻されている。


うわぁ…。


その不気味さと迫力に後悔しそうになった。


城の周りの広場も含め、人影が1つもない。

まるで生きてるものがないようにシンとしている。

魔界も天界同様、夜中なのかな…?


あたしは城の前にそっと降り立つと、重厚な扉を押した。

力を入れないと開かないかと思ったけど、意外にするりと開いた。


中をそっと覗くと、ポツンポツンと蝋燭に灯りがともしてあるけれど、廊下の奥まではよく見えない。


行くしかないか…。


あたしは足音を立てないように、低空飛行でスーッと進む。


どこまでも真っ直ぐ進むかと思ったけれど、途中で広間についた。


そしてまた廊下が枝分かれしている。


どっちへ行こうかな。


「うわっ!」


後ろで男性の声がして振り向くと、


「ぎゃっ!」


あたしからも思わず声が出た。


ムキムキマッチョボデイの人型の体の上に、牛の顔がついている!


「て、天使? 天使がなんでこんなところにいるんだ?」


牛の男性は狼狽えて後ずさった。


こういう魔族の人なんだ、とあたしもなんとか驚きを抑えて、


「あの、あたし、魔王にお会いしたいんです」


と言った。


「は?ルウ様に?」


魔王はルウという名前なのかな?知らなかった。


「そうなんです。お願いがあって、天界からやってきました」


「お願いって…?あっ、お前、銃を持ってるじゃないか!天界からの刺客か?いったいどういう…」


牛男の声がどんどん大きくなるので、あたしは仕方なく彼の右足に向けて、黄色い光線を撃った。


「あっ、あれ、片足が動かない…!お前、何を…」


男はジタバタと体を動かす。


「あたしは刺客じゃなくて、キューピッドなんです。キューピッドの仕事をするために魔界に来ました。だから、魔王に会って許可を貰いたいんです。魔王はどこにいるんですか?」


「キューピッド…?」


牛男はきょとん、とした表情になる。


「教えてくれたら、すぐに体を自由にします」


「キューピッドって恋愛関係のあれ?」


「そうです」


「くっつけたり出来るってやつ?」


「そうです」


「愛の矢を…」


あたしは焦れて銃口を牛男の顎下に当てた。


「…魔王はどこですか?」


「ひぃ…」


「申し訳ないんだが、教えてくれないだろうか。本当にこいつはキューピッドで、俺はその守護獣なんだ。魔王に危害を加える気なんかない」


その様子を見て、低姿勢でメルが頼んだ。


「そ、そういうことなら…」


牛男はあたしの顔とメルを交互に見ながら、


「ルウ様はこの先にある、執務室で仕事をしてるよ。いつ休んでるんだろうってくらい、熱心に仕事をするお方なんだ」


と言った。そして、


「真面目で冷徹なお方だ…天使のお願いなんか聞くかな?」


と付け加えた。


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