52.らぶがん いず べりぃぐっど
「えっ、ちょっ、どうしよう!」
狼狽えるあたしにルウは壁にかかっていた、黒いマントを手に取った。
それをくるりと回すと、緑の光を纏う。
「これにくるまって、部屋の隅にいろ。誰にもお前の姿は見えなくなる。ただ、絶対に声を出すな」
あたしはあわてて言われた通りにし、部屋の隅にしゃがみ込んだ。
ルウの香りがする…なんて思っていたら、ドアが開いた。
金髪を短く整え、白い軍服を身につけている、白い翼の男。
争いごとに表立って立つ、天使騎士団の団長、マルクスだ!
思わず声を出しそうになり、口を手で押さえる。
どうして魔界に…?
「随分不躾な訪問の仕方だな、団長殿」
ルウは落ち着いた口調だ。
「失礼をお許し下さい、魔王」
そうは言うものの、団長はニコリともしない。
「先日魔界で大きな争いがあったと聞きまして。あやうく天界も揺るがしかねない事態だったのですね?」
…天界までこの話が伝わってるんだ。
「お陰様で無事鎮圧できたから、なんの問題もない。安心して天界に帰られよ」
団長の詰問口調にルウも素っ気ない。
「…うちのキューピッド候補生、シャーロットが活躍したそうで」
…!あたしの名前が出て、心臓が高鳴る。
「それが?」
「あの子は唯一、銃を授かった天使。それが途方もない力を使った。天界で管理下に置かなければなりません。こちらに返してもらいましよう」
「管理下?」
あたしが心でつぶやいた通り、ルウもそう聞き返した。
「そうです。自由にして置いて良い存在ではない」
そんな…。
目の前が絶望で暗くなる。
あたしはルウを見つめる。
お願い、あたしを突き放さないで!
ルウはあたしに一瞬目をやったあと、団長に視線を移す。
「…それは出来ない」
そう静かに答え、団長の眉が釣り上がった。
「…なぜです?」
「あの娘はオレの嫁にするつもりだ」
えっ、えぇ〜っ!!
よ、嫁!?
こ、呼吸が出来なくなりそう。
「自分で何を言ってるかおわかりですか?天使を魔王が嫁にするなどと。気まぐれでそんなことを言われては困ります」
ルウはゆっくりと立ち上がった。
「オレは本気だ。お前たちはオレの嫁を取り返しに攻めてくるか?大きな闘いになるぞ。平和を維持できなくなってもいいのか?」
その圧倒的なオーラに団長は唇を噛み締めた。
「…今日の所はこれで失礼します。また天界から便りが届くことになるでしょう」
硬い声でそう言うと、彼は去っていった。
「…行ったか」
ルウは遠ざかる気配を確認すると、あたしに声をかけた。
「もういいぞ」
そう言われても…あたし、どうしたら…
混乱したまま、口から飛び出した言葉は…
「あの…不束な者ですが…よろしくお願い致します…」
ルウの目がまん丸くなる。
「ちょっ、ちょっと待て!あれはあいつを追い返す為に言ったことだ!一人で勝手に決めるわけないだろう!」
「えぇっ!!」
つまり、お、お芝居…!!
「ルウくん、いいじゃないの、満更でもないんでしょ。2人で決めて、さっさと結婚しちゃいなさいよ!」
例によって盗聴していたクロエが部屋に飛び込んできた。
「シャロに恥をかかせやがったな…」
その後ろで低音ボイスを出すメルの姿も。
「いいんじゃない。義理の妹ってなんか萌えるよねぇ」
ああ、セスまで…。
とにかく、あたしの魔界ライフは騒がしく続くことになりそう。
恋の銃を授かったお陰で、あたしは本当の居場所を手に入れたみたいだ。
天使なのに魔界がその居場所だなんて、変な話だけど。
でも、変でも構わない。
らんがん いず べりぃぐっど!
☆☆最後まで読んで下さった方、本当にありがとうございました。
天使と魔王のゆるいラブコメを当初は書く予定でいたのですが(タイトルもそのため、平仮名でゆるゆる…)、話はどんどん違う方向へ…。
キューピッドが弓矢じゃなくて、二丁拳銃持ってる姿を描きたかったので、まぁとりあえず良いです!
そして今回ネット小説大賞で一次審査で選んで頂けました!今年のおみくじで大吉引いたからかな…
次回作でお会いできたら嬉しいです。
源小ばと☆☆




