3.二丁拳銃
ミリアが祈りを捧げてしばらくすると、女神像からの贈り物…白い箱が頭上に現れた。
それはゆっくりゆっくりと降りてきて、彼女の目の前まで下がると、蓋が開く。
中から光が飛び出して、やがて弓矢に変わった。
木で出来てるような、シンプルなものだった。
ミリアは泣き出しそうな顔で宙に浮かんだ弓矢を抱きしめる。
ホールは温かい拍手に包まれた。
あたしも手をパチパチと叩きながら、ギュッと唇を噛んだ。
「では、次に。シャーロット!」
「はい!」
いっちょ、行きましょうか!
「メル!」
相棒の名を呼ぶと変な間があってから、姿を現わす。
「ようやく…出番か?」
寝ぼけ眼の上に眠たそうな声。
もしや…この様子は…
「あんた、まさか寝てたの?こんな大事なイベントの時に?」
「一人一人やるから待ち時間長くないか?」
「そういう問題?」
「…?シャーロット!」
通路でメルに抗議していたら、学園長からもう一度お呼びがあった。
やべぇ。
「はい!」
もう一度返事をして、小走りで壇上へ向かう。
その後ろをふわふわと、ゆっくりメルがついてくる。
改めてビーナス像の足元に行くと、その美しさと大きさ、そしてオーラに圧倒された。
石像だけれど、愛の女神・ビーナス様のパワーが込められてるのだ。
あたしは膝をついてしゃがむと、両手を組み合わせ頭を下げる。
(ビーナス様。あたしは皆んなみたいな真面目で立派な天使じゃないかも知れませんが、一生懸命頑張りますので、どうか1つ!よろしくお願いしますっ)
目をきつく閉じていても、光が生まれたことがわかった。
あたしはパッとその方向を見上げる。
そこには光に包まれた箱が出現していた!
あの中にあたしだけの弓矢が入ってるんだ。
みんなと同様、箱はあたしの目線くらいまで下がってくると、自然と蓋が開いた。
そして光がキラキラと輝きながら飛び出す。
そして、宙に浮かんだあたしの弓矢は…!
「……」
ホール全体の空気、時間、そんなものがピタッと止まった。
やがて、沈黙と静寂を破り、メルが口を開いた。
「…にちょけん?」
その瞬間、今度はざわめきと悲鳴が巻き起こった。
「ビーナスさまっ!一体、どういうことですかっ!?」
学園長もビーナス像に向かって声を張り上げた。
そう、宙に浮かんでいたのは弓矢ではなく、二丁の拳銃だった。
これがぽってりとした丸いデザイン、とか。
ピンク色、だとか。
ハートがいっぱいついてる、とか。
そういうのだったら、また違ったんだろうけど。
すらりとした銃身の、銀色に輝く銃だった。
喧騒の中、両手を伸ばすと、銃はするりとあたしの手の中に体を滑らせた。
しっくりとくる、吸い付くような感触。
弓矢じゃなくても…あたしのものであることに間違いはなさそうだ。
「ビーナスさま!お応えください!」
「キューピッドが銃なんて!」
「一体どういうこと!?」
周りの声は止みそうにない。
「メル…」
あたしは途方にくれて相棒の顔を見る。
「クールでいいじゃん」
彼はあっさりそう答えた。




