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らぶがん いず べりぃぐっど。  作者: 源小ばと
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2.弓矢授与式

しばらくして、その《弓矢授与式》が行われることになった。

生徒たち一同はホールに集められて、席に着席する。

順番に名前を呼ばれ、ステージに上がり、ビーナスさまの女神像の前に跪いて祈りを捧げる。

すると弓矢の入った箱が光り輝きながら出現するのだ…!


去年、先輩方の授与式をお手伝いがてら見学したんだけど、それはとても神聖で美しい儀式だった。


「ドキドキしちゃうなぁ〜」


言葉とは裏腹に、ミリアはこんな時まで持ち込んだ教科書をめくりながら言う。


「そうは見えないけど」


「ああ、これ?」


あたしの視線に、隣の席の彼女は教科書を持ち上げる。


「勉強してると落ち着くんだもの」


「…なるほど」


あたしはとりあえず曖昧に頷く。


「シャロはどうしてキューピッドになろうと思ったの?」


すると、胸の中に刺さる鋭い質問が飛んできた。


うっ、そう言われると…。


大抵の候補生は世界に愛を届けたい、とかそういう志望理由なんだけど。


「面白そうっていうか、退屈しなさそうっていうか、刺激がありそうっていうか…」


頭をかきながらムニャムニャ言うと、


「うんうん。確かに興味深い仕事だもんね!」


ミリアは納得してくれたようだ。


音楽や芸術の才能がある天使はそっち方面の学部に進んでいた。

それは習い事や趣味みたいなレベルで、必死に勉強をするキューピッド候補生とは違う、のどかな世界だ。


あたしは穏やかでゆったりとした天界以外の生活も見てみたかった。


欲にまみれ、争いばかり。

だけど、美しい希望がいつでも残ってる。

それが人間界だと思っている。


真面目な他の候補生たちとは違って、あたしはあたしの好奇心を満たすためにキューピッドになろうとしていた。


まぁ、そんなキューピッドが1人くらいいてもいいだろう、きっと。


「皆さん、静粛に!」


集まった生徒たちがお喋りに興じていると、壇上の学園長が凛とした声で言った。


ホールがシンと静まり返って、空気が緊張感で張り詰める。


「皆さん、これから弓矢授与式を始めます。名前を呼ばれたら壇上に上がり、ビーナス像の足元に跪き、祈りを捧げなさい」


大天使とも呼ばれる程、威厳と慈愛の心を持つ、美しき学園長・ペール先生。


あたしたちの背筋も自然と伸びて行く。


そして、音楽学部の天使たちが優しいメロディーを奏で始め、ついに式が始まった。


白く輝く大きなビーナス像に跪く生徒たちに現れる箱。


その中の弓矢は見事に皆バラバラだった。


白いもの、銀色のもの、金色のもの。

大きめのもの、小型のもの。


見守るあたしたちはドキドキワクワクしながら、自分の順番を待つ。


「では、次に。ミリア!」


「は、はい!」


うわずった声で返事をし、ミリアは立ち上がった。


「リント」


小さな声でパートナーを呼ぶと、


「は、はい」


こちらも緊張しながら、ミリアの左上に姿を現した。

授与式は守護獣と一緒に行う。

ただ、生徒全員の守護獣もホールに集まるとなんだかかさ張るので、呼ばれる前は姿を消しているのだ。


そして1人と1匹はぎくしゃくしながら壇上へと進む。

固まった様子のミリアを見てると、こちらも力が入ってしまう。

次に呼ばれるのがあたし…だと思うと、急に胸が苦しくなってきた。


繊細なタイプじゃないんだけど…やっぱりこれは特別なことだもんね。


膝の上の両手をギュッとにぎる。


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