18.彼とあたしの孤独
「そうなんだ…」
よっぽど父親の遺伝子が強いんだろうな…
3人は外見は本当に良く似てるのに。
「アタシたちの瞳の色、片方ずつ違うでしょ。これは魔力が強い魔族である証。上級魔族ってヤツなの。詳しくはわからないけど、ルウくんのママは下級魔族だったらしい。魔界のはずれでひっそりと暮らしてた…とか噂で聞いたレベルだけど。で、パパはお兄ちゃんが小さい頃から、魔王になるべく教育をしてたんだけどね」
クロエは眉間にシワを寄せる。
「お兄ちゃんあんな感じだから、全然ダメで。やる気ないし、面倒くさがりだし、女の子と遊んでばっかりだし」
あたしはさっきの魔族らしからぬ、ヘラヘラっとしたセスの笑顔を思い返した。
「そうしたら、突然、城にルウくんを連れてきたの。『お前たちの兄弟だ。こいつを次期魔王に育てる』って。アタシたち、凄いびっくりした」
「セスはそれで納得したのか?」
メルが尋ねると頷くクロエ。
「納得も何も、ラッキー!って感じ。ルウくんは真面目で、小さい頃からいろんな勉強をしてたよ。お兄ちゃんやアタシが好き勝手遊んでても、いつもパパのそばで魔王の仕事を学んでた。誰にも心を開いてなくて…孤高の存在って感じだった」
「そう…」
セスとは対照的に笑顔のない、冷たい表情のルウ。
魔王としてはそれが相応しく、正しいんだろうけど。
「だからね。魔王になった今でも、お兄ちゃんがああやって、『オレは真の後継者、第一王子でござい』って感じで物を言うと、ルウくんは絶対折れる。うん…いつもそうなんだ」
ルウの心境を考えて、少しぼんやりしてると、
「もう少しゆっくり休んでなよ。元気になったら、キューピッド執務室を作ってもらお?」
クロエは早口でそう言った。
「うん、ありがとう」
彼女が部屋を出て行ったあと、あたしは枕にぽすん、と顔を埋めた。
「…何を考えてる?」
しばらくして、静かにメルが問う。
「ルウに会ってちゃんと話したい。助けてもらったお礼も言いたいし…」
「…お前は天使だ。善の象徴だ。魔なる者とは気持ちが通じ合わないもんだぞ」
「通じ合わなくても、それでも。ありがとう、とかこれからよろしく、とか。そんな気持ちはちゃんと口にしたいよ」
メルはふう、とため息をついて押し黙った。
その、沈黙の後。
「守護獣として、お前を守る立場として、さ。シャロが傷つかない道を選びたいわけよ、俺は」
「わかってる。いつもありがとう。ごめん」
あたしは枕に顔を埋めたまま、ごにょごにょ言う。
「で、俺に魔王の居場所を調べてこい、と思ってる」
「なんでわかるの?」
あたしは驚いて顔を上げた。
「わかるっての。じゃあ、居場所がわかったら出発な。それまで休んでろ」
メルは片手を振ると、部屋の窓から出て行った。
メルが居なかったら。
メルが守護獣じゃなかったら。
あたしの孤独はますます深まっていただろう。
魔界のはずれから城に連れてこられ、知らない人たちの中での魔王教育。
好奇や嫉妬、そんな目もあっただろう。
笑顔も涙も封印して、ひたすら魔王の道へ。
ルウの孤独を想像して、目を閉じる。
あたしたち、わかりあえる気がするんだけど、な。
彼をもっと知りたい。
そんな風に思った。




