13.付き合うのも時間の問題
やがてランゼは死角に入り、あたしたちからその姿は見えなくなった。
クロエはすぐさまベッド脇の大きな水晶玉を持ち上げ、(メロンくらいの大きさだ)
ソファの前にあるローテーブルに置いた。
「ランゼの姿を見せて」
クロエの声に応えるように、無色透明だった水晶玉に映像が映る。
城内の廊下を先ほどの侍女が歩いてる姿だ。
「これで城内のいろんなことがわかるの。昨日のルウくんとシャロのやりとりもこれで見てた」
「そうなんだ…」
「ランゼさん!」
映像の中の侍女は一本角の男性に声をかけられて、体を硬直させた。
「ウ、ウーヘェさん!お、おはようございます」
「お、おはようございます。良い天気ですね!」
「え?相変わらずの曇り空、じゃないですか」
「そ、そうですよね!俺、変な事言って…」
「いえいえ、私こそ!雨が降ってないので、良い天気ですよね」
そこで、しばしの沈黙。
「ランゼさんはこれから何を?」
「わ、私はクロエさまの朝食の用意を。ウーヘェさんは?」
「俺は家畜の世話に行きます」
「で、では」
「ま、また」
2人はギクシャクと会釈をすると、違う方向に歩いて行った。
「…これ?」
元の透明感を取り戻した水晶玉を、あたしは人差し指で指した。
「そう」
クロエは満面の笑みで頷く。
「これ、俺たちの手助けいるか?お互い意識してるのバレバレじゃねぇか。付き合うのも時間の問題だろ」
「甘いなあ、メルちゃん」
「メルちゃん⁈」
呆れたように言ったメルは『ちゃん』付けされて、目を見開いた。
「時間の問題どころか、毎日飽きもせず、ずーっとこんな感じなの。まだアタシがヨチヨチ歩いてた頃からね。進展のない関係が焦ったくてしょうがないのよ!なんか…こう、熱い展開とか見たいわけ!」
自分で自分の体を抱きしめ、クロエは身をよじった。
なるほど…。魔界も人間界とそんなに変わらないのかも知れない。
「わかった。じゃあ、任せて。ウーヘェさんのところに行ってくる」
「やったぁ!」
あたしが立ち上がると、クロエもジャンプして飛び上がる。
そして、ベッドにずらりと並んだぬいぐるみの中から、グレーの猫を選び出した。
「コレにウーヘェのところまで案内させるわ」
次の瞬間、ぬいぐるみの体が光り、よろよろと動きだした。
「おぉ…」
あたしとメルが同時に感嘆の息を吐く。
「終わったら、今度は食堂まで案内させる。そこで一緒に朝食を食べましょ。ルウくんは来ないから大丈夫」
「わかった。ありがとう」
めいぐるみは窓を開けると、ふわりと宙に飛び出した。
「じゃあ行ってくるね」
「よろしくー!あ、変な奴が絡んできても、そのぬいぐるみを見せてクロエの使いだった言えばいいから」
「うん」
さすが魔界のお姫様だ。
あたしとメルも外に飛び出し、フラフラ、ヨロヨロと飛んでいくぬいぐるみを追いかける。
しばらくすると、柵に囲まれた謎の四つ足の動物の姿が見えた。
天界にも人間界にもいない、生き物。
色は真っ黒で首が長く、太い足と尻尾を持っている。
あれのお肉を食べるんだろうか?
それともミルクをとる…?
「グゲエー、グゲエー」
あ、鳴き声もなんか変。
「シャロ」
メルが顎で示した先には、ウーヘェさんがいた。
あの生き物のエサなのか、謎の赤い実が入ったブリキのバケツを持っている。




