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らぶがん いず べりぃぐっど。  作者: 源小ばと
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10.魔王、対面

牛男から執務室の行き方を教えてもらうと、足の拘束魔法を解き、あたしたちは先へと進んだ。


骨のオブジェだとか謎の生き物の彫刻。

そんな不気味な品に囲まれて、薄暗い廊下は続く。


やがて、真紅の扉の前に辿り着いた。

金色の蛇が絡みついたようなデザインのドアノブだ。


「ここか…」


あたしはとりあえず扉に耳を当て、中の様子を探ろうとする。

かすかに物音がしてるような気もするけど…よくわからない。

メルに視線を走らせると、小さく頷く。

ここは正攻法しかない、か。


コンコン。


ノックしてみた。


数秒待つけど返事はない。


コンコン。


もう一度ノックしてみる。


その時、ドアが勢いよく開いた。


「痛っ!」


ドアが体に当たり、思わず声が出る。

防御魔法がかかってるから、本当は痛くないんだけど、ついついそう言ってしまう。


「…なんだ、お前は」


目の前には広い室内が広がっていた。


壁にはぎっしりと書物が並んでいて、部屋の奥の机には書類が山積みになっている。


そのダークブラウンの机に、男性が座っていた。


「あ、あの…」


あたしたちが部屋に入った途端、背後で扉が閉まる。


「天使がなぜここにいる」


男性は雪のように白い肌に漆黒の髪。

その頭には山羊のようなツノが二本生えていた。


あたしを睨みつけている瞳は、片方は紫色でもう片方は薄い金色だった。

やや吊り目がちで美しい顔だちは猫を思わせた。


この人が魔王…ルウ、だろうか。


「あたしはシャーロットといいます。魔界でキューピッドの活動をしたいと思ってやってきました。魔王さまにその許可をして頂きたいのです。お願いします!」


出来るだけ明るく、ハキハキと挨拶をし、頭を下げる。


「…魔界でキューピッド活動?」


魔王は嫌なものを口に入れたような顔で、その言葉を下の上で転がした。


「馬鹿げたことを」


「そうでしょうか?あたしは今までどの天使もやったことがないことに挑戦したいと思っています」


吐き捨てる魔王に食い下がる。


「…天界からのスパイか?」


「違います!」


あたしが否定するや否や、魔王の白い指先から電撃が走った。


「!」


狙いはあたしじゃなくてメル!


咄嗟に反応してメルをつかんで引き寄せたけど、電撃はメルの翼部分に当たり、彼は床に転がった。


「メル、大丈夫!?」


膝をついて抱きおこす。


「防御魔法を展開しててもこの威力か…すげぇな」


メルの防御魔法は今の衝撃で消え失せてしまった。

白い翼の一部が焼けてしまってる…!


そのダメージによって、あたしの防御魔法も維持できない状態になって消えてしまったけど、そんなことはどうでもいい。


「ちょっと待ってて」


あたしは銃を取り出すと、白い光線で火傷部分を射抜く。


魔族の力の為か一瞬で癒すことは出来なかったけど、ゆっくりと羽が再生していく。


「キューピッドのくせに面白いもの持ってるな。弓ではないのか」


魔王は机に頬杖をつきながら、床に座り込んでいるあたしたちを見下ろしてる。


「なんでメルを狙ったの?あたしを狙えばよかったじゃない」


敬語や丁寧語が飛んで行ったあたしは、タメ口で噛み付いた。


「お前がどう出るか見ただけだ」


魔王は鼻で笑う。


「ここをどこだと思ってる?魔界だ。天界育ちのお嬢ちゃんにはわからないかも知れないが、略奪、裏切りなんでもありだ。キューピッドだとか愛だとか、馬鹿らしい。何の足しにもならない」


そう言って立ち上がると、あたしたちの近くに来てしゃがみ込んだ。


「キューピッドなら弓はどうした?なぜ銃を握ってる?」


他の人だったら、凍てつくような声と眼差しにゾッとして固まってしまっただろう。


だけど、あたしにとって弓の話は火をつけるきっかけになる。


「キューピッドだけど、弓はないの!あたしには銃しかないんだから!天界でも前代未聞な出来事だったのよ!でも能力は変わらないし、もっというと弓以上だし!魔界の魔王さまとあろうものが、やっぱりキューピッドには弓だな、なんて思ってるわけ!?固定概念に縛られてるわけ!?」


一気にまくしたてると、魔王は目を丸くした。

そうすると、幼く見えたけど。


その表情は一瞬で拭ったように消え、代わりに不敵な笑みが浮かんだ。


「お前はどうやら問題児のようだな」


…問題児?


「おい、誰かいるか」


「およびですか」


魔王が部屋の外に向かって呼びかけると、ツノを持った男性と山羊の顔をした男性がすぐさまやってきた。

2人とも長い槍を手にしている。


魔王は立ち上がると、再びあたしたちを見下ろした。


「こいつらを牢に入れておけ」




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