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この異世界は優しすぎ!?  作者: 爈嚌祁 恵
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9 誕生パーティにて その2

一部、語り口調の場面があります。

 五歳の誕生パーティーが催された。


 三歳時のに比べるとそんなに人はいないとは思うが、それでもやはりまだ多い。


 パーティー会場はこの屋敷一番の大きさの部屋なのだが、十分な量の人で賑わっていた。


 今はその会場で前回と同じように立食パーティーの最中だ。父さんは前に来られなかった、友人や仕事仲間と飲み始めているところだ。

 母さんは……何人かの男に囲まれて身動き出来ない状態になっている。しっかりしろよ父さん!! メリーは今日のパーティが始まる前に用事があると出て行ってしまった。

 すぐに戻ると言っていたのだが、あいつのことだし、フラッと帰ってくるだろう、一応神だし、心配する必要はないな。万が一は境界に逃げればいいんだし。あれ? 戻れないんだっけ? まぁ、大丈夫だろ。


 今のところ目立った問題もなく、前回と同じように順調にパーティーは進められていた。ただ、前回のパーティーと違うのは、俺へのサプライズがあるといったところだ。サプライズがバレているとは気づかれていないだろうとは思うが、準備出来たみたいだし、ちゃんと反応のシュミレーションしとくか……


 にしても、メリーがいないと周りがうざったいな。特に私はどこどこの貴族の娘だーとかどこそこ騎士団団長の息子だ! とか、いちいちそういう挨拶がうざい。そんな輩に構ってやる必要なんかないし、適当に礼儀能力で受け流していた。だが、やはり、話しかけてくるのは子供ばかりで、大人は皆、父や母にかかりっきりだ。と、考えていると、ひとりの男性が声をかけてきた。それも初めての大人だ。



「ミリアス殿、でよろしかったかな?」



 声をかけてきた男は父さんよりちょっと若目の二十代前半といった双眸で、見た目では白を基調とした派手な服をきていた。たしかこの制服は近くの国の騎士団であったはずだ。



「失礼ですが、どちら様で?」


「これは、すまない、私はアノレーという、突然のご無礼お許しいただきたい」


「いえ、こちらこそ、失礼いたしました。それで? 何か?」


「あぁなんだ、ただ挨拶をと思ってのことだ」



 んん? まてまて、なんだこいつの魔力、なんか凄い勢いで漏れ出てる? いや、逆か? どういうことだ? いや、こういう時は魔眼で確認だな。魔眼は魔力を纏うので相手にバレル恐れがあるが、そうも言ってられないだろう、緊急事態かもしれなからな。



 ――――――――――――――――――

【ステータス】

 アノレー=コントラン 騎士 25歳 Lv46 〈洗脳〉

 ・体力:736

 ・筋力:1012

 ・魔力:552

 ・耐性:598

 ・敏捷:276


【スキル】

 [剣術Ⅶ][槍術Ⅸ][武術Ⅴ]

 [HP自動回復Ⅳ][身体強化Ⅴ]

 [気配感知Ⅳ][危険察知]

 [魔法適性:火・雷]


【称号】

意志之者(ユルガヌモノ)』『貴族騎士』

 ――――――――――――――――――



 こいつの結構強いんじゃね? このスキルが騎士感丸出しだしな。

 にしても、なんだ、この、洗脳? ……えぇっと、これってこいつ、もしかしなくても、洗脳されてる?


 ……誰に?


 ……何のために?


 いや、理由は分かるか。


 今日というパーティーの日にわざわざ来てんだ、十中八九、この家にちょっかい出しに来たんだろう。

 だが、そうなると、こいつ以外にも洗脳されている奴がいる可能性があるのか。



 >能力[予測Ⅸ]が[予測Ⅹ]へスキルレベルが上がりました。


 >条件を満たしました。能力[予知Ⅰ]を取得しました。


 >能力[予測Ⅹ]が[予知Ⅰ]に統合されました。


 >能力[予知Ⅰ]が[予知Ⅲ]に上がりました。



 そういうことらしい、一応魔眼で会場の人たちを一通り見に行くか。とおもったが、またもここで、邪魔が入った。



「ミリアス殿、どちらへ?」


「いえ、追加を取りに行こうかと」


「で、でしたら、私のものに行かせよう」


「いえいえ、そんな迷惑はおかけできませんよ」


「い、いやいや、ここは私めにお任せ下され」



 チッ、この野郎、何のつもりだ? 俺を、ここに留めたいのか? ん? 待てよ? そういや、さっき、こいつうちのメイドと話してたな……! もしかして、こいつ、サプライズの間までの時間稼ぎ役か! うわぁ、洗脳されてるから早く逃げておきたいのに、サプライズの係なら、離れるわけにも行かねぇじゃねぇか! いや、敵方もそれを見越しての洗脳か? となると相手は相当、頭のキレる奴だろうな。


 どうする? この調子だとサプライズの時に何かあると考えて問題ないだろう。しかし、そうなると、会場のヤツらはサプライズだと分かっているから、反応が遅れるだろうな……


 やはり、洗脳している術者を探し出すしかない、か……



 ――――パンッ



 そう考えているうちに軽快な破裂音と共に会場の照明が落ちた。



「「「「「……ざわざわ……」」」」」



 くそ! このタイミングでサプライズか! 格好の狙い目じゃねぇか!



「明かりが!! 父さん! 母さん!? 大丈夫ですか!!」


「だっ大丈夫だっ!! は!? なにっ!?」


「ちょっ聞いてないわよ! こんなの!」



 俺には[暗視]のおかげで父さんの友人がショートソードを振りかざす瞬間が見えていたので、従魔のチップを向かわせた。


 そして同時に、少し離れたところで、母さんも周りに居た男達に襲われていたので、そっちには式神のポテトを送り込んでおいた。


 ちょうどポテチを送り出した頃に、自分の目の前にも剣が襲いかかってきた。


 剣の持ち主はもちろん……



「……っアノレーさん!」



 彼からの返答はない。


 彼の瞳は虚ろで焦点が合っていないようだ。


 こちらの呼びかけに全く反応しない、これはもはや手遅れか、と思われる。


 父さんを襲っていた友達もやはり洗脳状態だったので、気がついてはいた、そして先程までの彼らを自分は知っており、そのギャップで判断を遅らせてしまう。ここまでが計算のうちなのだとしたら、術者の性格は相当ひん曲がっていると思う。それに、先程から、アノレーの剣技に磨きが掛かってきているように思える。


 このまま一方的にやられていてはどうすることもできない。


 どうするにも考える時間が必要だ……


 ……だが、この時の判断の遅れが今後の運命を大きく分けることとなってしまった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 その日の俺はとことん機嫌が悪かった。


 せやから、あんな奴に食ってかかってしもうたんや。



「はぁ!? それを俺にやれと!?」


「あぁ、そうだ」



 名前もしらない男は淡々と目的だけを告げた。


 それがまた、えらい難題で。



「んなの! できるわけあらへんやろ!?」


「いや、お前のそのスキルならできる。まさか、俺がお前に譲渡した意味がわかっていないとでも言うのか?」



 そうや、俺がこうしてここにおられるのも、ひとえにこの男の気まぐれにすぎんのや。



「それは、そうやけど、俺かて」


「承知の上で、だ」



 その言葉で、俺はカチンときてしもうてなぁ。



「んなっ! なんやそれ!? つまりは何か!? 俺はただの捨て駒やった言うわけやないか!?」


「……あぁ、そうだ」



 やはりその男は気に食わんかった。元々、性格は最悪やったし、



「もうかないまへん、俺は俺で勝手にやらせてもらうで」


「そんなわがままが通るとでも思っているのか?」



 途端、えらい殺気がこの身を襲った。正直、声が出せたのが奇跡ってくらいやったわ。



「ふん、今のお前に何が出来る言うねん」


「見くびるな、貴様の首ひとつくらい造作もないわ」


「できるもんなら……」



 と、声を発したときには俺の首元に冷たいものが触れていた。



「っ!!」


「いいから、いうことを聞け、命令は絶対、だろ?」



 その男の殺気は異常だった、先ほど感じた殺気の何倍も、濃く深く、何より重かった。そんなんに殺されそうになったら、トラウマになるのはしょうがないとおもうわ。



「あぁ、もう、わぁったよ! やりゃあええんやろ!! やりゃあ!」


「そうだ、いちいち手間を取らせるな」



 俺はその言い草が気に入らんかったから、思うた事をつい口に出してしもうた。



「一つだけ…………聞いてええか?」


「質問によるが……」


「……わぁってるってぇの!」


「そうか」


「あぁ、お前さんらがあの屋敷に執着している理由、や」


「ふっ」


「なんや? なにがおもろいねん」


「なぁに、回答のし易いことだとな」


「……どういうことや?」


「いいだろう、今の質問に答えてやる…………我々はあの屋敷に執着などしてはいない、ただそれだけだ」


「はぁ? それってどういう……あっ! ちょ!!」



 その男はただそれだけを言うと夜の路地裏へと姿をくらませてしもうたんや。俺も咄嗟に追いかけたが見事にまかれてしもうた。



「速すぎんのとちゃう?」



 にしても、あの男、ちゃんと情報は残してってくれとったな、まぁ、あの屋敷に行くかどうかは、下調べしてからの方が良さそうやな。

 と言っても俺の中で既に答えは決まっていたんやけどな。



「さっ、忙しくなりまっせ」



 自分の頬を叩き、気合を入れて、目的の屋敷へと向かった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 パーティーが始まる数時間前のことだ。



「見つけた」



 メリーがそうつぶやいた。



「ん? どした?」



 ミリアスは声を掛けるが、彼女からの返事はない。



「メリー?」



 返事がないことに違和感を覚え、思わず聞き返してしまった。



「へ? あ、いや、なんでもないよ」



 返事は帰ってきたものの、まだ彼女は浮かない顔をしていた。


 彼女は神様だ。


 落ちてきた、とは言ってはいたものの、その真偽も疑わしい。


 なぜなら、彼女はこうして時々、浮かない顔をして、何かと戦っているかのような表情をするからだ。


 だが、そういう場合俺はどうすることもできないので決まってこういうことにしている。



「ちゃんと俺のこと頼ってくれよ?」


「うん、ありがとう」



 彼はそう言ってくれるだけで嬉しかったのか、そのままその場を離れてしまった。


 彼女の表情もろくに確認しないうちに……


 もし確認していれば気がついただろう、彼女の瞳に写った黒く澱んだその感情に。


 いや、もしかしたら、彼は気付いていたからこそ、確認することができなかったのかもしれない。

 


 ――この彼の選択は正しかったのか、この選択が今後の人生には大きな分岐点であることを知るのは運命神と神王だけだろう。

久しぶりの投稿です。

皆さんはゴールデンなウイークをいかかがお過ごしでしたか?

私は、、、いえ、思い出したくもありませんね、あんなに忙しい日々は。

ということで、今回の投稿でした。

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