6 ペナルティ
すいません書いてる途中で間違って保存せずに閉じてしまいました。こまめな保存これ重要。ほんとに。
男は黒いチョークにようなものを使って床に奇妙な円を書いていて、それは、アニメに出てくるような魔法陣と同じようなものだった。その男はその魔法陣を書き終えると、そばにいた幼少年に声をかけた。
「よし、これで……待たせたな」
声をかけられた幼子は近くに置いてあった羊皮紙を手に取り静かに頷くと、隣の同じくらいの年齢だと思われる少女に期待の篭った視線を向けるが、その少女からは満面の笑顔が帰ってくるのみで、その幼子は諦めの表情で歩みを進めるほかなかった。
幼子は、魔法陣の中央にたどり着くと、手に持っていた小さな針で指を傷つけ、浮かび上がった血液を羊皮紙に二三滴垂らし、魔法陣の上に置くと呪文の詠唱を始めた。
詠唱を初めると同時に、魔法陣が光を放ち始めた。その光は幼子を包み込むと、より一層その輝きを強くした。
数分後、魔法陣の光は徐々にその輝きを失っていき、再び闇が魔法陣のあるその部屋を覆った。
そして光が完全になくなったと同時に、その幼子は魔法陣の中央で意識を失うほどの激痛に見舞われる事となった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
目を覚ますと、そこは最後の記憶にある部屋とは違い自分の部屋のベッドの上だった。意識が覚醒し、自分の身に起きたことを理解し、咄嗟にあるものを探した。その捜し物はさがす必要もなく、自分からやってきた、とても大きな問題と共に。
「おはよう、昨日はすごかったね♪」
といったのはこの世界の境界を司る神アリスこと、メリーだった。
そのメリーは眠そうな目をこすりながら、自身の身体を隠すように俺のベッドの掛け布団を手繰り寄せていた。ここで、理解しておいて欲しいのだが、この部屋は俺の部屋でもあり、彼女の部屋でもあるということだ。だから、ベッドは二つある、なのに、彼女が手繰り寄せているのは俺のものだということ。そして、彼女は裸である。さらに、先ほどの発言、これはつまり、そういうことではないのだろうか? 俺の最後の記憶では父さんの部屋にいたはずなのだが、この際些細な問題ではない、つまり俺はやっと、前世でも叶えることができなかったことを齢三歳にして、成し遂げてしまったのではないかということだ。
「そんなことはないよ?」
そんな幻想はその一言で虚しく散っていった。とりあえず、時間はまだ、数時間しか経ってないな。今は20時、大体お昼すぎってとこか。
「んで、あの後あったことを詳しく聞かせてもらえないか?」
「やっと正気に戻ったか、ちょっと残念」
「正気に戻した本人が何を……」
「あはは、んで、さっきのことだよね、えっとね~」
聞いたところ、俺は魔法が成功したことにより意識を失ったらしい、が成功下にも関わらず俺の身体に変化がなかったため、父さんは今部屋で魔法陣を相手に頭を抱えているそうだ。
そして、メリーが今朝話したいと言っていた件もこの事と関わりのあることだったらしく、ちょうどいいので、今話してもらうことにした。
「昨日の夜にでも話そうかと思っていたんだけど、昨日はちょっと興奮してて忘れちゃってたんだ、ごめんね」
「あぁ、そうかい、昨日のことは思い出させないでくれ」
昨日のはほんとにダメだ、彼女の愚痴を永遠聞かされたこっちはもう、トラウマみたいな感じになってしまっている。
「ひどいなぁ……んでさ、とっても重要なことだから心して聞いてね」
「おう」
「心して聞いてよ?」
「大丈夫だ」
「ホントのホントにだよ?」
「わかったから早く言えよ!?」
確認が長い、くどすぎて、ついカッとなってしまった。これから、一緒に暮らすのだから、早く慣れておかないとな。
「うん、実はね…………キミ、この世界で魔法が使えない特殊な種族になっちゃったみたい」
彼女は珍しく真面目な顔でそう言ってきた、その言葉の重さが嫌なほど現実を突きつけてきていた。
「うん? マジ?」
「うん、マジ」
「ホントのホントに?」
「ホントのホント、希望的観測もないほどに」
彼女が嘘を言ってる感じはしない。元々疑ってはいないけどそう聞かざるを得ない。
「まじか、俺、魔法使えないのか~」
「そんなに驚いてないね? どうして?」
最初はがっくりもしたが、それ以上の感情はなかった、としか言いようもない。
「あぁ、なんか、内心そうなんじゃないかなぁとは思ってたってとこかな」
「というと?」
「ん~、強いて言うなら自分じゃ魔法の理論は分かっても感覚が掴めなかった、それはまだ、理解しきれてないからか、どっちなのかわかってなかったけど、それでできるなら向こうでも魔法は使えるってことになるし、実際にはあっちはそんなことないしな、魔力を扱えないんじゃないかと思ってた」
理由を挙げるとするならば、それはなんとなくの勘だったとおもう。おそらくあっちでの知識の中にそういうのがあってそれを思い出したとかそんな感じの。
「なるほど、なんとなく的をいているわけですな」
「そうなの?」
「さぁ?」
「どっちだよ」
「僕の口からは何も」
「そうかい」
まぁ、教えてくれるわけもないよな。
「んだが、魔法が使えないとなると、どうするんだ?」
「あぁ、それなんだけどね? 魔法が使えないっていうのはそうなんだけど、君は魔術なら使えるんだよ」
「はい? 魔術? 魔法と何が違うの?」
「えっとね~、魔術は書道で、魔法は書写って感じ? ほら、小学生の時とかあったでしょ?」
「書写の授業か、あれ苦手だったなぁ」
「まぁ、それはいいとして、魔術っていうのは魔法の元となってもので、魔法より扱うのは難しいんだけど、それができれば魔法と同じようなことを再現することはできる、というか慣れれば魔術しか使わないと思う」
「あぁ、つまり魔法はほんとにただの道具でしかなかったと?」
「そんな感じかな? 大体合ってる」
「んで? それも俺にどうしろと?」
「私が教えるから、見て覚えて」
このお方は何を言っているのかね? 前提知識なしで、未知を既知にしろとおっしゃっているのですね、わかります。
無理難題を突きつけられて、俺は詰みを味わっているということだろう。よかろう、ならばこうじゃ。
「無理」
「却下します」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
おれの全力の逃げが却下されてから、数日がったった、使える魔術はまだない。
一方だは剣の修練も同時進行で行っていて、こっちは順調にスキルレベルが上がっていた。
「フッ、はぁ!!」
「甘い!!」
上がったといっても、まだまだ、母さんには遠く及ばない、今だ、一本も取れる気配はないが。
「ミリィは成長が早くていいわね、これが若さってやつかしら」
「いえ、母様、僕なんかはまだまだですよ」
「その年でこれだけ動ければ十分天才よ」
「そうですが、僕が目指すのは母様ですから」
うちの息子は頭がいい。
ロディより私のほうが強いと見抜いていたり、覚えも早い。
それはもう、子供とは思えないほどに。
だけど、そのおかげで、時折見せるミリィの子供っぽさが何よりも愛おしく感じる。
その息子が必死になって剣を振るっている姿に私もつい厳しくしてしまって。
まだ三歳だというのに、辛い思いをさせてしまっているのではないかと思わずにはいられない。
「そろそろ、休憩にしましょうか」
「はぁ、はぁ、わかり、ました」
この頃ミリィは積極的になった気がするのよね。
それもメリーちゃんのおかげなのかしらね?
ミリィは多分メリーちゃんのことが好きよね。
それで、メリーちゃんの方もミリィが好きよね。
これはもう将来結婚ルートだわ、いいわねぇ、青春ね。
「そうだわ、ミリィ、剣術スキルは取得したかしら?」
「ん? はい、おかげさまで習得できましたが?」
「あら、早いわ、天才ね」
「そう、ですか、そうですよね」
ん? あらら? 俯いちゃった? もしかして嬉しかったのかしら? うふふ、やっぱり、まだまだ子供ね♪ 幼いうちはそうでなくちゃね!
一方のその時のミリィは……
「(言えない、剣術のスキルはそろそろカンストしそうだなんて……死んでも言えない)」
ふたりの心情をすかしているメリーは木陰で、腹を抱えて転がっているのだが、それに気付けるものは誰もいなかった。
「(ちょーおもしろーい! わははっはは、ふふふふ)」
トラブルもあり、少し投稿が遅れてしまいました。申し訳ないです。




