5 剣と魔法のファンタジー
なかなか、魔法がわからない。
「おーい、ミリィ、起きてー」
「……あと五分」
「起きないと襲っちゃうぞ〜」
「はい。何ですか?」
「……少しくらい襲わせろ」
「うーん、もう、朝か、今日の朝ご飯は何かなー」
「ごめんごめん、冗談だよぉ、置いてかないでぇ」
昨日はメリーが一晩中俺に話しかけてきて全く寝付けなかったのに、メリーの方は話終えるとすぐに寝てしまった。そのため、俺は寝不足気味になっているんだが、こいつは自覚しているんだろうか?
「ねー、ミリィ、今日ちょっと真面目に話したいことがあるからどっかで時間頂戴な」
「ん? 真面目な話? じゃあ、今日の夕飯のあとでいい?」
「うん、分かった、んじゃ、朝ご飯食べ行こ!」
「あいよ~」
真面目な話、ね。正直言ってこの手の話はろくなもんじゃないと相場が決まっている、どうせ、世界がどうのこうのといった話なのではないかと、だがあの神様のことだ、何を言ってくるかわかったもんじゃない。念のため、心しておくか。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「なぁ、ミリィ、お前、剣はやらないのか?」
そう言ってきたのは父であるロディだ。父は何故か前々から剣を教えたがっている。
「はぁ、父様……剣をやらせたいなら素直に言ってくださいよ」
「い、いや、それは、その」
だが、この男はへたれているのかなんなのか、無理強いはしてこない。だから、俺も助け舟を出すことにした。
「まぁ、僕も剣術を習得する事には損はないと思ってますから」
「えっ! 本当かい! い、いや、分かった、そこまで言うならいいだろう、俺がお前に、剣の稽古を付けてやろう!」
「あ、いえ、剣術は母様にお願いしたいのですが」
「……へ?」
「……え? 私?」
「えぇ、母様の方が強いでしょう?」
「まぁ、そうだけど、どうしてかしら?」
あ、やばい、これ隠してたっぽいな。母さんから威圧が放たれてる、これは迂闊に話せないな。
「どうして? とは?」
「なんで、私のほうが強いと思ったの? 普通はパパのほうが強いって思うと思ってたから」
「んー? なんていうか、父様より母様かなと思っただけで、特に根拠はないですね」
「そうなのかしら?」
「確かに、ママさんはパパさんより強く見えるよ!」
ナイスアシスト! だがウインクしてくるのはどうかと、母さんバッチリ見てたぞ……
だが今ので、威圧は消えたな、どちらにせよ、メリー様々っす。
ちなみに父さんの剣術能力は[剣術Ⅸ]だ。これだけでも十分チートだって思うが、母さんのと比べていまうと見劣りするというのだ。何せ母さんの剣術能力は能力進化して、[真刀術]になっていて、そこに称号「侍」を持っているのだ。
[真刀術]は剣術の進化能力で刀を主としていると得ることが出来る。さらに称号である「侍」の効果、刀を使う動作において大幅補正される、により格段に強くなっている。ちなみにこの「侍」だが[真刀術Ⅴ]を得ていることが取得条件で母さんは[真刀術Ⅶ]だった。これを見るともう父さんに勝ち目はないだろう。
「ロディ? ミリィたちはこう言ってるけどあなたが教えても十分なのよ?」
「あぁ……だが、僕とママじゃ明確な差があるのは事実だ。何かあったときのことを考えるとママにまあかせたほうがいいだろう」
「そうね、ロディ、良い子ね。よしよし」
「や、やめろよ! 子供たちの前で」
「あら、そうね、ごめんなさい、ついロディが愛しくて」
「アウラぁ」
「んんッ!! 二人とも?」
「「ごめんなさい、つい」」
結局父には魔法を教えてもらうということで方がついた。
父はオールラウンダーで魔法の方でも優秀なのだ。
そういった点では戦力は母より上なのかもしれない。それに、父の使う魔法はとても美しくて、初めて見せてもらったときには魔力がなくなって倒れるまで見せてもらったほど心を奪われたのも事実だ。だから魔法の方も問題ないだろうと二人は話してくれた。
俺も、そこでは問題ないだろうと考えているのだが、残念ながら、俺には一つだけ懸念要素があった。というもの、俺が取得した、[魔力感知]の能力であらゆる魔力を見ることが出来るのだが。
どうにも俺の魔力だけが見えなかったのだ。
ステータス上ではちゃんとあるのだが、いざ視認しようとすると見えないのだ。ただ単にスキルの効果に自分が含まれいていないだけということならいいのだが、これが転生者特有の症状だということになると少々問題が出てくる。実際にいくつかの本にはそういった類のことが書かれていたので、その点においての不安は拭えない。ただ、どうにかなるものでもないとしたら、考えるだけ無駄だとも言える、逆にどうにかできるなら、どうにかしたいとも思うけど。
>能力[予測Ⅰ]を取得しました。
>能力[思考加速Ⅳ]が[思考加速Ⅴ]に上がりました。
ん? 予測? そうすると今の考えが正しいということか? いやでも、あくまで予測の範囲でというわけなのかな? よくわからないがスキルが手に入って嬉しい。ということにしておこう。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
さて、今俺は書斎にいる。
何をしているかと言うと、考えたことの論理付けをするためにいくつか本を読もうと思ったからだ。あの考えが正しいとなると俺は未来永劫魔法は使えないということになりかねないからな。先代の転生者たちが何か著作でもしてくれていると嬉しいんだが、今のところそれらしきものは見つかっていない、というか、この家にそんなのあったら呆れを通り越して恐怖だがな。
案の定、それらしき本は見当たらなかった。だからといって収穫がなかったわけじゃない、その理由が
>能力[速読]を取得しました。
>能力[速読]が[言語理解Ⅰ]に統合されました。
>能力「言語理解Ⅰ」が[言語理解Ⅱ]に上がりました。
>条件クリアを確認しました。
>称号『読書家』を取得しました。
『読書家』本から得られる情報が多くなる。
効果はイマイチなのだが、あって損するものではないので、収穫はあったと言ってもいいだろう。実際さっき読んだ本をもう一度読んでみたのだが、先程より読む速度は上がり、情報も多く理解できた。所謂便利スキルというやつだろうと考えることにした。
「ん、そろそろ時間だ」
「あぁ、パパさんとこ行く?」
「そうしよう」
隣で神話の本を読んでいたメリーに声をかけ、書斎を出る。
ちなみにこの世界の時間は太陽と月を基準にしていて一日が36時間であるとわかった。日が昇った頃を0時として、月と交代する頃を18時、また日が昇るまでを36時とした、ちょうど円の角度と同じなので分かりやすい、加えて一ヶ月は六十日、一年は六ヶ月、時間以下の単位は同じだった。だが一月の名前を順に青、赤、緑、黄、黒、白としているのは面白いと思った。俺の誕生日である昨日は黒の17日といった感じだ。
そして今は18時、日本時間だと10時ぐらいだ。逆の計算は楽なんだが、こっちの時間を日本時間に直すのは些か手間がかかるのだ。
父さんは今日ちょうど非番で休みなので、魔法を教えてもらいに行くところだ。
「父さん、いますか? ミリアスです」
「あぁ、今ちょっと手げ離せないんだ、空いてるから入ってきていいぞー」
そう、叫ぶ声が聞こえたので、ドアを開けてはいると、そこは研究者のようなゴチャゴチャした部屋ではなく、整理整頓の行き届いた、清潔感のある空間になっていた。きちんと並べられた、本棚に、反対側には魔法の研究にでも使うのか、実験器具と思われるものが置かれていて、部屋の中央にはソファーが一つと机、あと、黒板の板のようなものが置かれていた。そして隣につながった扉から父さんが本をいくつか持ってきて、机に置き……
「じゃあ、始めようか」
と言って魔法の授業は始まった。はずがない。
「いや、なんですこの状況は」
だからといってそんな状況に飲まれる俺では無い。
メガネをかけて見た目理知的になっている父さんに状況説明を求めた。
隣のメリーもうんうんと首を振っている。かわいい。じゃなくてだ。
「いや、説明も何も授業の準備をしていただけだよ? 俺が真面目なのがそんなに珍しいか?」
「いえ、そういうわけではなく、いきなり授業をとか言われてもまずは状況説明をしてほしいと」
「あぁ、そういうことか、んじゃ、今目の前にあるこの板は脳に直接書き込める板だ、そしてこっちが」
「はい!?」
「なんだ、大きな声出して」
「いや、それはこっちのセリフですよ、なんですかこの板は!?」
「魔道具だ」
「そうですか……なんて言うと思いました? 魔道具だからってなんでも許されると思はないでください!」
「俺のオリジナる魔道具だ、元になった原本もあるんだが、それを改造したレプリカだ心配はないぞ」
「そんなことはどうでもいいんです」
「まっ、細かいことは気にせず、魔法をお勉強しようぜ! なっ、メリーちゃん!」
「うん! そうだね、パパさん!!」
「くぅ……いいね、その熱意、ミリィも見習ってもらいたいぜ」
メリーのそれは熱意というか、この人面白いなぁ、というからかいからだということを知っている俺は、イマイチ共感できずにいたが、それもこのふたりの前では誤差に過ぎなかった。
「よし! まずは魔法というものについてふたりの知っていることを教えてくれ」
「魔法ですか、僕は簡易的に、魔力をもとにして事象を引き起こすということくらいしか」
「私もだいたいそんな感じ」
「うん、そうか、なら二人はまだまだレベル一の雑魚だな」
魔法っていうのはそんな簡単なものじゃないとは思っていたがレベル一か結構この世界の魔法は奥が深いのかもしれないな。
「というのは?」
「なんだ、もっと反応してくれよ……まぁ、そうだな、お前が言っていることは全て正解だが、魔法を説明するにはまったく足りてないっていうことだな」
「ですよね」
「あぁ、そもそも、魔法というのは人の手によって作られた道具なんだ、自分ではできないことをこの魔法という道具を使って成し遂げていると思ったほうが良い、んで、魔力というのはその道具に使われるエネルギーというわけだ」
「だから、魔力が多ければ多いほど性能もいい、つまり威力や精密性が上がると?」
「そういうことだ、んで、肝心の魔力なんだが、これが 子供には難しくてな、下知識として覚えておいてくれるといいんだ」
「ん? それはなぜです?」
「ん? いや、何、単に[魔力感知]のスキルが習得しにくいってだけだ」
え? 何あのスキルそんなに取得しにくいものなの? あ、待てよ? 父さんは習得っていってたか、つまり俺は取得してるってだけだから、元はだれかのスキルだったのかも? そうなると持ち主に悪いなぁ、まぁ、誰かわからないからいっか。とりあえず持ってることは伝えておこう。
「あ、そのスキル持ってます」
「うん、私もー」
当然メリーも持ってた、ていうか、なんか、いま取得したっぽい。何そのチート、ずるい。でも可愛いから許す。
「へ? え? 持ってんの? マジで? じゃあ、俺が今まとってる魔力の色は?」
「赤の魔力ですね」
「ミリィは……出てないね」
「うん? ……ホントだ、通してないのか」
「通す?」
「あぁ、魔力は裏の心臓で作られていて、そこで作った魔力を貯めておくと身体に悪いから、なるべく早いうちに身体中に流す必要があるんだ」
「それをしないとどうなるんです?」
「ま、最悪死ぬな」
「そうですか、僕は死ぬんですね」
「いやいや、そのために俺がいるんだから、よし! そうだな、じゃあ今日は身体に魔力を通す儀式をしよう! メリーちゃんはちゃんと通ってるみたいだから今日は補助をよろしく!」
「うん、わかった!」
「んじゃ、準備してくる、ここで待ってろよ!」
そう言って、父は隣の部屋へ行ってしまった。
そして、件のメリーは俺が話をしている間に魔力を通したっぽいな、ニヤニヤ顔で俺を見つめていた。
だが、かわいいは正義!!
「はぁ、何されるんだろ、俺」
取り敢えず、何も怒りませんようにっ!
「それ、フラグじゃない?」
こんにちは、爈嚌祁 恵です。
突然ですが、だれか僕に魔法を教えてください。魔術でも可です。
という冗談はさておき、今回も読んでいただきありがとうございました。
読みにくい点や、この表記はダメだという点もございましたらお気軽におもうしつけください。
この調子で投稿していきますが、次回もよろしくお願いいたします。
誤字・脱字などがありましたら、お手数なのですが、報告の方よろしくお願い致します。