48 招集される人
投稿遅れて申し訳ございません。風邪ひいてしまい、寝込んでました。
ここまでの話を聞いて一度整理したいと切り出したミリアスは頭の中で情報を整理し、これまでのウナの行動とその理由を考える。
友達を殺されたウナは蛇龍に遭遇し、蛇龍は獣神の命令で涼妹の友人を殺し、更にはデパートの破壊行動にまで及んだ。と、そういうことらしい。
「その蛇龍が元凶か?」
そこまで整理して、やっと、疑問に思ったのはそれだ。
獣神が、涼妹が異世界転移予定だった店から抜け出したことに興味を持った。そして、理由は分からないが、涼妹に『絶望』を味合わせようとした。その手段として蛇龍を利用した。この流れにしては蛇龍の行動が早いように思えるのだが。
それもそうだが、そもそも何故、絶望なのだろうか?
考えれば考えるほど、不自然な点が多くなってしまう。結局はもう過ぎたことであるし、取り敢えずは情報の整理は出来た。取り敢えずはウナの説明を続けさせるのが賢明か。
「うん、取り敢えず、話を進めてくれ」
「わかった」
ウナはミリアスの指示に頷き、話を再開した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
涼妹は暫く、エンデュラークの話を聞き、自分が如何に弱い存在であるのかを再認識していた。
「まぁ、小娘、そう落ち込むでない。お主なら大丈夫じゃ」
私のことをよく知りもしない龍が巫山戯た事を抜かしているとしか思えなかった。
「そう睨むな、これでも我は悠里の記憶を持っているのだぞ?」
そうだった。こいつは私の大切な友達の記憶を喰らっているのだ。悠里の記憶の中にあった私を知っている。なんか、そう思うとまた、こいつが憎く思えてきた。
「睨むなと言うておろうに」
カッカッカッ、と笑う声がまた、私の気分を害するのだが、彼は気付いているのかいないのか、笑うのを止める様子はない。
しかし、先の私なら大丈夫とは、どういう意味なのだろうか?
私に何かエンデュラークが自信を持てるほど力があるとは到底思えない。今の私には、こいつを倒すことも獣神に一矢報いることもどちらも叶わないのだ。その差を埋める方法があるなら手を出すが、そんなの私は思いつきもしない。どうすることも出来ないだろう。
「さて、涼妹よ、今一度自分の置かれている立場を考えてみよ」
蛇龍エンデュラークは涼妹に指示をだす。涼妹には意味があるのかないのか、分かりはしないが、整理するだけしてみる。
「私は服屋から追い出されて、殺人鬼の目の前に投げ出された」
「その通りなんじゃが、なんか、こう、もっと……普通に言えんのか」
「大体あってる」
涼妹の押しに負けたのか、エンディラークは肩を落とした。
「まぁ、よい、その殺人鬼から、お主に忠告じゃ」
呟いた途端、一呼吸おいてエンデュラークは涼妹に向き直る。
彼女に一声掛ける前に一度、殺気を込めて睨む。
涼妹はそれだけで、全身から汗を流し、膝が笑い、腰が抜けてしまう。
その先に待つものは――
――死。
ただただ単純に濃厚な恐怖の感情を纏った視線。
エンデュラークの殺気に当てられ、涼妹は呼吸の仕方を忘れた。
その死は語る。
「 には関わるな、奴は我でも止められん」
恐怖からか、言葉を発することは出来なかったが、私には彼が何といったのか聞き取れなかった。
強いて言えば、テンション高めで『満開』と言っていたような気がしないでもない。
兎に角、聞いたことのない名前でよく分からないものだったが『満開』には関わらないようにすることを心から誓った。もし、その人に会ってしまっても、こんなにテンション高めで『満開』なんて言いたくないし。この人に出会わないことを心から願った。
その後は蛇龍によって店の中へ戻されただけだ。
戻り方が独特ではあったが、単純に巨大アナコンダが追っかけてくる絵面を想像してもらえれば十分でしょう。
店の中へ戻ると、数人が起きており、寝たままの人に声を掛けていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
男は、レジから商品棚の奥、何もない真っ白な空間を眺めていた。
彼は一番最初に目を覚ました。目を覚ました時自分は寝ていて、商品と思われる洋服が自分の上に被さっているのを確認した。そして彼は、目を覚ましてからも全く微動だにしなかった。二番目の女が目を覚まして、数人に声を掛けている間、彼は既に意識もあり、身体も動かせる状態にあった。しかし、彼が何故、そうしなかったのかは分からない。ただ、だるかったのか、状況についていけていないだけだったのか。結果彼は何もしなかった。女が他の人に声を掛け、自分には声を掛けず、店の外へ行った時も彼は何もしなかった。しようとすら思わなかった。
声を掛けても起きる気配はない者が多数。それは女の調べで得た情報だ。しかし、ここがどこであるのか、それまで何をしていたのか、一切の記憶がない。自分が誰なのかも思い出せない。
典型的な記憶損失かと思った。しかし、そうではないらしい。思い出そうとすると、思い出す気力がなくなる。つまりは、思い出そうとすればするだけ、面倒くさいという思いが強くなるのだ。だから、思い出せない。しかし、今は思い出す必要もないか、とも思っている始末だ。
そして、そんなことを考えている内に何か大きなものが擦れる音がした。
「うわぁぁッ!! アナコンダだァ!!」
「おい、待て、女の子が追いかけられてるぞ!! おい、こっち来んな!!」
「いや、寧ろ此処だけが安全なのでは?」
いつの間にか時間が経っていた。しかも、なんか凄い状況らしい。
最初に気が付いたのは大柄の男店員、そいつが叫んだ、その声を聞いて後の二人が各々の意見を言った。
「よし」
そして、最後に発言した賢そうな青年は女の子目掛けて叫んだ。
「此処は安全だ、そいつは入って来ない!!」
どうして、ここが安全だと確信しているんだ?
俺は考えた。考えて、考えて、考えている内に、考えたことにしてしまった。面倒になったのだ。
>能力「思考放棄」を獲得しました。
頭にアナウンスが直接響いてきた。
普段から音をシャットアウトしていた為、彼にとっては凄い大音量となったアナウンスに嫌悪感を抱いた。
これうざいな、消えてくれないかな。
>アナウンスの停止を致しますか?
停止出来るなら是非。
アナウンスしてるのは君の勝手だし、俺、命令してないから。
>停止いたしました。これが最後のアナウンスになります。ご利用ありがとうございました。
はいはい、さよなら。
何処のATMだよ……。
それよりもここはどこだろう。
「君! 大丈夫かい? ここは安全だ。あいつは来ていない」
俺に言っているわけでは……ないな。あの女か。最初に目が覚めていた女。外から戻って来たのか。どれだけ時間がたったんだろう? ん? それよりあの女、心なしか顔がやつれてないか? 気のせいか。気のせいだな。
「君たち、気が……付いたん、だね…私、最初に……起きてたの」
走ってきたからだろう。だいぶ息が切れていて、言葉の端々が途切れている。
そして、最初に起きたのは、俺だがな。
「あぁ、そういえば、君確か、ここに来てたよね。相当悩んでたのを覚えているよ」
大柄な男店員はそう言った。しかし、こいつが本当に覚えていたのか疑わしいな、というか逆に覚えているのも違う意味で疑わしいな。この店員は信用ならんやつだな。ちなみにあの女も信用ならんな。なぜなら、あの女俺たちを何のためらいもなく置いていったからな。信用ならんというか、頼りにならん。おそらく、頭の回転が良くないのだろうと思われる。
「それよりも、そこ、どいてもらえますか?」
「あ、あぁ、すまない」
女は立ち上がり、歩き出した。そして、立ち止まった。俺の前で。
それは、女を下から見上げる絵面であり、つまり――
「水色んぅ――」
顔を踏まれた。
なぜだ、俺はただ、寝ていただけなのに。こいつが寄ってきて、俺の顔の真横に立ち止まるから見えただけなのに。
「やっぱり、起きてたんでしょ?」
俺が起きてたことに気が付いていたのか。
「あぁ」
「なんで、声掛けなかったの?」
「だるかった」
主な理由はそれだけだ。ただただ面倒くさかった。
「貴方、今日は一人で来たの?」
「? いや」
そうだ。今日は妹の服を見に来たんだ。あいつは何処に行ったんだ? 店の中にはいないようだが……
「連れはこの店の中に?」
「いや」
ここに居ないとなると……もしかして
「そう、ごめんなさい」
それはなんのための謝罪なんだ。
「なぜ?」
「貴方達の連れを殺したの」
「……」
女は衝撃的なことを言った。この外の世界を知らない、箱入り娘のような少女が人を殺したと。しかも、貴方達のと言ったことから何人も殺したのだと告げているようなものだ。だが、おそらく、その殺しは彼女の意思とは無関係だったのだろう。表情が違う。そもそも、殺しを謝るというのは意味がわからなnしな。もしかしたら、殺し、とも言えるものではないのかもしれない。関係はあったとしても、この子の所為ではないのだろうか。
「そうか」
それだけしか言えなかった。これから一生、妹には会うことが出来ないのか…… 涙は溢れてこなかった。なぜなら、殺したと言った時、彼女の目が虚ろになったのを俺は見た。それだけ、辛い思いをした事だろう。頭では理解していても、感情が事実を許さない。
「うん」
だから、涙は俺の頭に上で流さないでくれ。
女は涙を流しながら、崩れるように、座り込んでしまった。
「はぁ……」
ほんとに面倒。面倒だな……
上半身を起き上がらせ、女の目線に合わせる。
「おい、お前が、どれだけ、辛い思いをしてきたかは、俺にはわからない。知る必要もないだろう。ただ、泣くのは後五分だ。待ってやるから、その間は何もかも忘れて、泣くことだけに専念しろ……いいな?」
彼がそう言ったのと同時に女は声を出して泣き始めた。
ただ。しがみついて、涙と鼻水を服に付けてきたのは、一生覚えていてやるからな。
「な、なぁ、その子、今、殺した、とか言ってたよな……?」
大柄の男店員がこっちを見ながら、そんな質問をしてきた。
まずいな。コイツ目がおかしくなってやがる。なんだ? 外に家族でもいたか……?
女を抱えている状態で、身動きの取れない彼らに男店員は少しづつ近づいていた。
「残念ながら、俺の前での悪行を見逃すことは出来ないぜ……」
声が聞こえたと思うと男店員の目の前に見知らぬ男が立ちふさがった。
制服を着ている青年だ。スキンヘッドで、背の低い男だ。確か、学校で見かけた。
泣いている女と自分を守るかのように背を向け、男店員にガン飛ばしている。
「あぁ? ハゲにチビ? ぷッ笑わせてぇのか?」
男店員。なぜ、そんな台詞を……明らかに、雑魚キャラの言いそうな事だよな。
「あぁ? てめぇ、今、なんつった?」
「ハゲチビだろ? 聞こえなかったか? もう一度言ってやろうか?」
男店員が煽り、青年が怒った。
事実だけを述べるとそうなのだが、結果をみるとそうとは思えない。
男店員は宙を舞い。商品棚をグチャグチャにした。
単純に、青年が男店員の胸ぐらを掴み、大外刈りの要領で足を掛け、宙に浮いた店員を腕力任せに投げ飛ばしたのだ。
女くらいしかない青年と体格のいい大人の男店員では身長差がかなりあった筈なのに、その差を感じさせないかのように軽く投げ飛ばした。
「ふぅ……」
青年は気が済んだのか、わざとらしく額を拭う仕草をしている。汗なんてかいてないだろうに。
「大丈夫か?」
そいつは軽い笑顔で問いかけてきた。
「大丈夫もなにも、そいつまだ、なにもしてないだろうに……」
「そ、それは……そうだ! コイツなんもしてない!! いやしかし、俺のこと馬鹿にしたし……ま、いいや」
指摘されて初めて思い至ったのか、頭を抱え、考え込んで、すぐに、思考放棄した。こいつにもさっきのアナウンス出てるんじゃなかろうか?
「うぉっ? なんだこれ? 気持ち悪ぃ」
ほら。多分思考放棄のアナウンスだろう。ん? そういえば、俺はアナウンス切ったんだっけ? おーい。聞こえてるかー?
……。
反応なし。停止したから、この声にも反応しないのかね。まぁ、ないならないでいいけど……
まぁ、それよりも、この女だ。
「おい、お前、そろそろいいだろう?」
「うぐっ、ぐすっ、あと、ひっく、一分二〇秒……」
は? こいつ数えていやがったのか? んなアホな……
一応、五分って言っちまったからな、素直に待つか。
「んじゃ、寝るか……」
「おいおい、えっと、名前なんだっけ? そこの制服の野郎、えっと確か同じクラスにいたよな!!」
いねぇよ。
「確か、名前は……エビ。じゃなかったか?」
「ちげぇよ!!」
明らかに違うだろう!! せめて漢字ならわかるが、それだと、魚介類になっちまうじゃねぇか。
……いや、しかし、俺の名前って……なんだっけ? さっきから思い出そうとすると靄がかかったかのようになって思い出せないんだよな。
「なぁ、俺の名前って――」
いいか。別に、誰と仲良くするわけじゃあるまいし……
「ん? なんだよ? タコだろ?」
さっきと変わってるし。
海の幸から抜け出せないのか? というか、もしかして、俺の名前って海系の名前だったのだろうか? うん。言われてみるとそんな気がしないでもない。
と考え事をしている間に女は泣き止んでおり、立ち上がっていた。
「さて、そろそろ、なのかな……」
彼女がそう呟き、その意味を考えようとしたところで、天井が白く輝きだした。
何気に今日から四月ですね……
次は水曜日に投稿致します。




