34 世界の在り方
「エルさん! ウナさん!」
私たちがレザードマンを相手に無双していると、それを察したかのように遠くからこちらへ一直線に高魔力の何かが向かって来ているのを探知した。
「うん、何か来る……」
「すごい魔力量ですぅ……?」
二人にも既に探知できているようであった。かなりの速さでさらには魔力をダダ漏れでこちらに近づいてきているので、気が付かないわけがない。
「桁違いですね……」
「ミリィよりも? ……ですかね?」
「どうでしょうか…………五分五分といったように思えます」
「ミリアスさんも相当ですぅ」
確かに、ミリアスさんの魔力はそこがしれません。何か回復手段のようなものでもあるのでしょうか。
「ふん……羽虫共が……」
「っ!? あぁっ!?」
「「レアリさんっ!?」」
一瞬だった。目の前の何かがここについたと思ったら、次の瞬間には私は魔属性の圧力に押しつぶされていた。ですが、ターゲットが私で良かった。この魔力量で魔属性に適性のない二人にあてられていたらと考えると……恐ろしい方ですね。
「うぐっ…………はぁ……はぁ……すいません。油断しました」
「ほう。貴様、魔属性に適性があったか……なら」
そいつは刀をもっていた。大きな刀を。おそらくミリアスさんの知識の中にあった太刀というものだろう。彼の衣装は確か、袴、というものであったと思う。紫色を主にして白で模様も描かれている、西洋の方ではこのような民族衣装も見たことがありますね。ですが、この男、どうにも……
私の思考はそこで止まった。袴のそいつが二人に向かって高魔力を放つ準備をし始めたからだ。
「っ!! エルっ! ウナっ! 逃げっ」
「「っ!?」」
そいつから紫色の何かが放たれた。ただ、その何かが高圧縮された魔力だと気付いた頃には既に二人はその魔力に包まれていた。
「エルさん! ウナさん! 大丈夫ですか!?」
「? あれ……?」
「うにゅ……?」
「「なんともない」」
「よかった……」
安心した。二人は無傷で、ステータスにも異常は見られなかった。しかし、何故? 私はダメージを食らったというのに二人は? その疑問に応えたのは魔力を放った張本人である袴の男だった。
「ふむ? そっちは魔族か?」
成程、ウナは転生者、エルは元魔物、二人共元が魔術に関した種族だから彼の攻撃には体制があるのですね……
「もしかして、私、足手纏い?」
「大丈夫です。レアリさん、カバーいけます」
全然、嬉しくないフォローですよ。ウナさん。
「ふん。まぁいい、死ね邪魔だ」
「ちょ、話もなしですか! 御二方共」
「……おk」
「行きますぅ!」
エルはスライム状態にはならずに[生成]で創った双剣、もちろん元はリザードマンの鋼鉄剣、で袴の男を狙った。
ウナは適属性の氷魔法で遠距離から。
レアリは魔術で援護兼袴男の注意を引くために牽制を。
驚くことに袴の男はその全てを受けた。全て。エルが放った斬撃も、ウナの氷魔法も、レアリの魔術も全て。
「ふっ、こんなものか……」
袴の男はもっていた太刀をおき。闇火魔術行使した。
「混魔術ですか!?」
混魔術、ミリアスが今だに苦戦している魔術のランクだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ふっ!」
アモンの双剣がグランの腹へと吸い込まれる。
「おらぁ!」
対してグランの大剣はアモンの頭部へ吸い込まれる。
「「ぬぅ!」」
どちらの剣も重みは同じ、力量は同じだと言えよう。
「はぁ……はぁ……」
「ふぅ……ふぅ……」
「早く倒れろよ……」
「お前がな……」
「「うおぉぉぉ!!」」
両者の力は拮抗していた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「マニョールといったか?」
リャンは焦っていた。
「えぇ…………」
それは自分の力に自信をモテないからだ。
「何故、攻撃してこないのだ……」
敵の力量がわからず。
「叶わぬと、分かっていとも、願わくば、されどこころの、すたれさといい」
ましてや、敵の思考が読めないこの状況に。
「? 訳のわからぬことを」
「っほっほっほ! 焦ってますかな?」
「っこっちは本気で首獲りにいってんだ気ィ抜いてんなよ?」
俺がマニョールの後ろに回り込んでも……
「……おっほっほっほ」
「っ!?」
次の瞬間には立ち位置が元に戻されてしまう。
「本気ってのぁこういう事を言うんだよ」
「ぐぅっ!?」
下手な動きをすればこのように、反撃が返ってくる。
「っほっほっほ! 一撃でこの有様でしょう? ですから! 私は攻撃はいたしませんよ! おっほっほっほ」
その一撃も俺の速度でギリギリ躱せる程度の一撃になっている。
「……くっそ野郎ぉ!!」
だからリャンは焦っていた。
「ほーっほっほっほぉ!!」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ミリアス様ぁ!? まだですかなぁ!?」
「あぁ! もうすぐだ!!」
グリードはしびれを切らしていた。いや、グリードというよりも……
「うぁ……あたし……もう……駄目……」
アルのほうがであった。離れつつあった手が今、完全に離れた。
「うぉぁぁ!? アルぅ!? ミ、ミリアス様ぁ!!」
グリードは間一髪アルの手首を掴みなんとかミリアスの身体にしがみついた
〔ミリィ? この術式だと、身体に触れている必用はありませんよ?〕
〔あ……〕
〔はぁ……ミリィ……〕
「グリードさん! 手ぇ離しても落ねぇぞぉ!!」
「な、なんと……」
恐る恐るといった様子でミリアスから離れた。もちろん、何かあったら大変なので、ミリアスの真上に。
「ホ、ホントだ……」
そんな状態の中でアルが起きてしまった。
「親父てめぇ!! はっ!? 高いっ!? きゅ~」
一瞬。起きて叫んで気絶。その間約三秒。
「アルぅ!?」
「さて、そろそろだぞ!!」
一方では親子でバタバタ。もう一方では前方だけに意識を向けている。
「アルっ!! しっかりしろ!」
「はっ!! 生きてる! てか、浮いてるっ!? って高い!? きゅ~」
「アルぅ!!!!!」
〔この親子も……〕
「はぁ、もう着くぞ、着地の準備っ!?」
着地の準備に入ったときのことだった。
急にミリアスの魔術が妨害された。というよりかは、魔力のない空間が突如として生まれた。
〔ニティっ!! チッ!〕
魔力生命体である二ティはこの魔力のない空間では活動できない。つまり、俺の能力にも制限が付く。この空間の中ではおれは不死ではなくなるということだ。
「「っ!!」」
つまり、このままじゃ死ぬ。
「「「あああぁぁぁァァァァ」」」
「落ちたな」
さて、少し叫んだら冷静になれた。
このあとの状況をどう打開すれば良いか考えなくてはならない……
「あああぁぁぁぁ」
「きゃぁぁぁぁぁ」
取り敢えずこの二人をクッションにでもするか?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
(おい! どうすんだよ! あいつら落ちてんじゃねぇか!)
男は遠くの空を真っ逆さまに落ちていく三つの影を目で追っていた。
(仕方ないじゃん! 間違えて創った空間だよ!? 私のせいじゃないよ!)
女は声を潜めて、言い訳をしていた。
(百パーセントお前のせいだよ!)
(うぅ、どうしよ)
(どうしよって……)
「あ、そうか」
女は何かを閃いたかのように声を発して、気持ちの悪くなるような笑顔を浮かべた。
「おい、何を? ちょっ!?」
女は男を持ち上げると、やり投げの要領で抱えた。
「なにをしていらっしゃるのですかな?」
「何って……砲台のポーズ?」
「何故に?」
「投げるために?」
「……」
「……」
「俺を?」
「俺を」
「おい!? 何投げようとしてんだよ!?」
この女、あろう事か、あの非魔力空間におれを 投げ込んで解決させようとしているのだ。
「いやな? 俺が行っても何も解決しないからね……?」
「じゃあ、お前の存在意義ないじゃん!」
「そこまで言うっ!?」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
〔第一回。ぼっち会議ぃ〕
〔いぇーい〕
〔ドンドン〕
〔パフパフ〕
さて、どうしたものか、魔術は使えない。能力は制限が付く。この絶望的な状況。取り敢えず、自分のステータスだけでも
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【ステータス】
ミリアス=エグノス(空綺麗 櫓実) 少年 15歳 Lv60
・体力:10560
・筋力:9840
・魔力:9780
・耐性:9180
・敏捷:9960
【スキル】
[固有能力:交換Ⅲ]
[天恵:成長]
[天呪:不滅Ⅳ]
[神術:心眼]
[探知Ⅸ][遮断Ⅷ][武術Ⅵ][投擲Ⅴ]
[五感超強化Ⅳ][身体超強化Ⅴ]NEW[闘気Ⅰ]
[瞬速移動Ⅳ][魔力回復Ⅱ][体力回復Ⅰ]
[高速思考Ⅶ][並列思考Ⅹ][並列意思Ⅲ]
[空間把握Ⅹ][立体機動Ⅷ][高速演算Ⅷ]
[追跡Ⅶ][推理Ⅵ][予知Ⅵ][演舞Ⅴ]
[交渉Ⅴ][脅迫Ⅳ][読心Ⅴ][賢者Ⅴ]
[治療Ⅶ]NEW[再生][楽園Ⅹ]
[魔法適性:魔][式神][従魔]NEW[五力]
[禁忌Ⅶ][聖域Ⅶ][永眠Ⅹ][覚醒Ⅹ]
[言語理解Ⅹ][礼儀作法Ⅹ][不老不死]
[干渉][メニュー][ヘルプ][概念]
【称号】
『転生者』『読書家』『魔術師』『受神』
『能力収集者』『称号収集者』『舞踏家』
『傍観者』『全知』『探偵』『心解者』
『睡眠之王』『永眠の支配者』『覚醒の支配者』
『賢明者』『急成長』『強者』『ゴブリン殺し』
【特典】
〈世界の懐中時計〉〈世界の権能〉
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うん。特典の権能でなんとかできる?
―〈世界の権能〉を使用しますか?
あ、はい。使ってみる。
―〈世界の権能〉を使用しました。世界の書き換えを実行致します。
うん? あれ? なんか雲行きが……
―〈世界の権能〉世界の書き換えに成功しました。
どゆこと。これ? どうしたらいいの……
―〈世界の権能〉書き換えた世界の説明を行います。
あ、はい。え? はい。
ちょっと雲行きが怪しくなってきた?
もうどうしようもないね。