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この異世界は優しすぎ!?  作者: 爈嚌祁 恵
3/57

3 歪んだ幻想

少し見にくい部分があります。

 水面から顔を出す時のような微睡んだ感覚から覚めた。


 初めに視界に映ったのは、見知らぬ天井と見知らぬ女性であった。


 その女性はじっと俺を見つめていて、俺も何故だかその女性から目が離せなかった。

 

 そうした状態がどれだけ続いたのかはわからない、しかし、その視線は急に真上から聞こえてきた声に反応して、俺へと向けていた視線をその声の主に向けてしまった。何故だか少し残念な気分になったが、あまり気にはとめず、俺自身も、その声の主へと視線を向ける。だがどうやら、俺はこの世界の言語が理解できていないようで、今も、二人のしている会話の内容が理解できない。二人の雰囲気からすると彼らは夫婦であるもかもしれない。



 さて、ここで重要な問題がわかった。



 俺は今、この二人に拘束されているのか、身動きがとれない状況にあり、下も向けない状態らしい。


 まぁ、確かに仕方のないことではあると思う。


 なんせ、高校の中で背は小さい方ではあったのだが、百六十五以上はあるであろう謎の人物が急に現れたら誰だってこうする。

 

 俺だったら殴る。


 ただ、この時点で俺は失敗したことがある。


 それは……意思疎通ができない状況での対処方法だ。


 おそらくさっきのじっと見ていた行為は念話などの何かしらの信号への反応を観測していたのかもしれない。だが、そうなると、何も知らなかったとは言え、おそらく、俺の対応は失敗であっただろう。何せただ見つめ合っていただけだったからな、大変な事態になってなければいいのだが……




 少し時間がたった。


 状況に変化はない。


 杞憂だったのだろうか? だが、俺の体は相変わらず身動きができないままだ。


 既に体感では五時間くらいは経っているのではないかと思う、あくまでもこの世界の時間が地球と同じなら、という条件があるとしてもだ。


 そんだけの間何もせず放置しておいて、あの夫婦は俺をどうするつもりなのだろうか?


 よもや、奴隷にでも売りさばくための準備をしているのでは!?


 いやいや、流石にそれはないだろう。


 ない、よね?



 そんな馬鹿なことを考えていると、真っ黒いものがのっそのっそと体を動かして近づいて来た。よく見てみるとそれが犬だということがわかった。にしても、この犬、めちゃくちゃでかくね!? 普通のより絶対大きいって!!



 俺がそう思うの無理はない。


 なぜならその犬は、俺の身長を優に超して、全長二.五メートル近くあるのではないかと思われる大きさだったからだ。


 さらに、その犬が近づくにつれてわかったことが一つ。


 この犬、犬じゃねぇ。



 だって犬にしては大きすぎるし!! いや、そこはまだ許容できた点なのかもしれないのだが、一番の問題はその顔部分だった。



 その顔には石をも砕きそうなほど鋭い牙の数々


 目つきも鋭い


 それでいて理性を宿している


 まるでオオカミのようだった。



 この生き物は魔物だとは思うが、こいつが野良の魔物とかだったら食べられるんじゃね? この家実は魔物屋敷なんじゃね?


 などと割と真面目に怯えていると、さっきの声の主の男が現れて、オオカミの首根っこを掴み、少し怒り気味になりながらそのオオカミを持っていった(・・・・・・)



 そう。



 持っていったのだ。


 あの巨体を。


 首を掴んで。


 片手で。



 つまり、今の男はあのオオカミより大きいのだ。


 どういうことだ? 混乱してきたぞ? とりあえず、一旦落ち着こう。


 深呼吸だ深呼吸



 ひ、ひ、ふぅ。



 なんかちがうが、まぁ、オーケー、整理しよう。


 なぁに簡単な計算だ、誰にでもできるはず。


 あっちでの俺の身長は百六十五だったはずだ。すると?



 まずオオカミ。



 こいつは見た感じで言うと俺の身長の一.五倍くらいだったと思う。


 そうすると全長大体二.五メートルくらいだったということになる。


 ここまでは問題ない。


 問題はあるが後回し、次だ次。



 声の主の男だ。



 この男は今のオオカミの首を片手で掴んでそのまま持っていった。


 ということは少なからずこのオオカミよる背が高いことになる。


 そして、さっきの女性の方も男よりは小さかったが大体同じくらいの身長だったことを思い出した。


 そのことから、それは予測の範囲を超え、確信へと至った。



 そう、俺は異世界に転移ではなく…………転生していたのだった。



 その事実に気がついたときにようやく気付いたことがもう一つ。それは視界の左隅にある[メニュー]という文字だ。半透明の文字だったので今まで気が付いていなかったのだが。現実当否にはちょうど良かった。


 その文字に意識を向けていると、数秒後視界の一部を使い[メニュー]が表示された


――――――――――――――

[メニュー]

 ・マップ

 ・アイテム

 ・ステータス

 ・スキル

 ・ヘルプ

――――――――――――――


 その中の「アイテム」を見てると画面が切り替わり、『現在、ボックス内に所持しているものはありません』と表示された。その表示を見たところでさっきの男が帰ってきたので一度視線を外したら、また[メニュー]という表示で小さくなってしまった。

 だが、この時に俺は突然の睡魔に襲われ、目を閉じてしまった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 その木製のゆりかごでどことなく安心した様子で静かに眠る我が子姿を見てアウラ=エグノスはふと、ある疑問が頭に浮かんだ。


「ねぇ、ロディ?」

「ん? なんだい?」

「最近ミリィ、全然泣かなくなったと思わない?」

「え? そうかな? ……」


 ロディ=エグノスはこの子は我が息子ながら顔立ちは整っていて、将来きっとイケメンになるの違いない! と納得して頷いた。妻の話など耳を傾けていなかった……


「もう、ちゃんと聞いてよ!」

「ご、ごめん、ごめん」


 そんな心の声も漏らさず拾ってくる妻にはとてもじゃないが勝てる気がしない。そもそも、勝とうとも思はないけど。実力的にも……


「やっぱり、何か病気なのかしら?」

「生まれてから何日かは泣いてたんだろ?」

「えぇ、逆に言えば、その七日間しか泣かなかったのよ? 少し変だと思わない?」

「まぁ、確かになぁ、変と言われればそうなのかもしれんなぁ……よし! 今度医術師に見てもらいに行こうか」

「……えぇ? いいの? 高いんじゃなかったっけ? 医術師さんって」


 実はこの家の家計は相当大変なのだが、今のところはまだやっていけそうではあるが、そこのどこに医術師に支払うお金などあるはずもない、出産時も結果的には自身の掴み取った信用と説得術交渉術で何とかなったようなものだったが、こればっかりは別だ。


「あぁ、実は、知り合いに医術師の伝があってな」

「冒険者時代の? お仲間ですか?」

「あぁ、一時期いっしょに旅もしていたこともあるな」

「あら? 仲がよろしかったんですねぇ!」

「あぁ、そうだな、彼女、今どこで何してるんだろ」

「か? かの……じょ? ……」

「ん? あぁ、一流医術師のローレンだよ」

「ふーん?」

「へ? いやいや、彼女とはそんな関係じゃないさ! 彼女あの大戦で旦那さんをなくして、それで医術師になったぐらいだからね」

「まぁ、ロディと関係が全くこれっぽっちもないならいいのだけれど……?」

「うぐッ」

「まぁ、浮気性のロディーには手を出すなって方が無理よね」

「すいません」


 そんな会話を聞き耳を立てて聞いている人物が一人。彼である。その彼は木製のゆりかごに揺られながら早く言語理解したいなぁと考えていた。もちろん言語は理解していなかったが、そこに



 >能力[言語理解Ⅰ]を取得しました。



 お!?


 やっとか!?


 やっと来たのか!!

 

 てかやっぱりあったんだな能力システム!


 よし、なら、早速使うぞ! とその前に[メニュー]っと


――――――――――――――

[メニュー]

 ・マップ

 ・アイテム

 ・ステータス

 ・スキル

 ・ヘルプ

――――――――――――――


 と言うのも、前に見たときに気になったことがあった。


 それは、ここの[ヘルプ]なんだが……


――――――――――――――

[ヘルプ]

 ・ヘルプについて

 ・表示設定

 ・ワード検索

――――――――――――――


 ん? 表示設定? これは少し気になるな。もしかして今はヘルプ表示オフになってるのかな


――――――――――――――

[ヘルプ]>「表示設定」

 ・位置

 ・大きさ

 ・透明度

 ・言語設定

 ・切り替え

――――――――――――――


 おぉ、意外と設定できるんだな。だが今はオフになってるから切り替えてオンにしとこう。



 どわぁ!?



 実際には声重あげれてないがすごい声出た。いやオンにした瞬間に視界いっぱいにHELPってでるとは予想だにしてなかった。

 とりあえず、位置はメニューに合わせて左上。大きさもメニューを参考にし、自分としては不透明度三九%が一番ちょうど良かったからそうして、言語は日本語とあったからそれにしておく。


――――――――――――――

[ヘルプ]>[ヘルプについて]

 全ての鑑定結果においてヘルプを参照することができるようになる。

 メニューの表示機能にも対応している。

――――――――――――――


 まぁ、分かり切ってたことだけど大体ヘルプって感じだな、RPGゲームとかでよくあるのと一緒に考えておけば大丈夫だろう。

 最後まで取っておいたステータスかなり気になるところではあるな。よし、なら、早速見てみよう


――――――――――――――

[ステータス]

ミリアス=エグノス(空綺麗 櫓実) 乳児 0歳 Lv0

 ・体力:15

 ・筋力:11

 ・魔力:8

 ・耐性:8

 ・敏捷:4


[スキル]

固有能力(ユニークスキル)交換(チェンジ)Ⅰ]

[天恵:成長(アグメンタム)

[天呪:不滅(ネバーエンド)Ⅳ]

神術(マヌアート)魔眼(リグメンド)


[気配感知Ⅲ][魔力感知Ⅲ][気配遮断Ⅱ][思考加速Ⅳ]

[並列思考Ⅰ][演算処理Ⅱ][空間把握Ⅲ]

[言語理解Ⅰ][メニュー][ヘルプ]


【称号】

『転生者』

――――――――――――――


 おぉう、そうか


 乳児かそうだよな


 わかってるって


 んで、なに?


 ステータスは……



 紙だね。


 紙。


 この世界に紙があるのかは知らないけど。


 俺、破れそうだなぁ。



 んで、肝心の能力が……


 まぁ、俺がいま取得できているのはこんなもんだけだ。スキルを得るにはそのスキルに沿った条件が必要でその条件を達成した時にスキルが得られる仕組みになっているらしい、ヘルプ参照。



 俺は体が動かない間ずっと考え事をしていたために思考系の能力が結構上がってるっぽい。

 逆にからだはまだ成長できずに低いままだ。ヘルプによるとステータスは筋トレとかでも上がるようなので、これからは筋トレを習慣にしてどうにかステータス向上させたいと思う。もちろん身体が動かせるようになったらだけどな。


 とりあえず、今は自分のスキルの理解に努めよう。


 んでは通常能力(ノーマルスキル)から


――――――――――――――


 ・[気配感知:物質から発せられる特殊な気配を感じ取る]


 ・[魔力感知:あらゆるものから発せられる魔力を感じ取る]


 ・[気配遮断:自身から発せられる特殊な気配を抑える]


 ・[思考加速:物事を考える速度を早くめる]


 ・[並列思考:並列して物事を考えられる]


 ・[演算処理:脳の処理がより効率化される]


 ・[空間把握:空間の認識がより鮮明になる]


 ・[言語理解:より多くの言語を理解すること出来る]


――――――――――――――


 うん、さっぱり。なに特殊な気配って、慣れか? 慣れなのか? まぁいいか。


 次! 特典能力(スキル)


――――――――――――――


 ・[メニュー:称号『転生者』の特典。探知、アイテムボックス、鑑定の機能をひとつにまとめたものを表示できるようになる]


 ・[ヘルプ:称号『転生者』の特典。検索、索引、引用の機能をひとまとめにしたもの]


 ・[自己治癒力:自動で体力が回復する。1秒ごとにLv×10]


 ・[治癒:自身の治癒力分の体力を回復させる。治癒力×Lv×10]


 ・[不老不死(ノー・デッド・ライフ):このスキルを持つ者は成長しない。その効果で一生死ぬことはない。老化もしない]


 ・[楽園(エデン):このスキルの効果範囲内にいる場合、魂が死ぬことはない。効果範囲Lv×10m]


――――――――――――――


 見なかったことにしようと思う。


 最後だ! 特殊能力(レアスキル)


――――――――――――――


 ・[固有能力:交換:指定した対象と指定した対象を交換する]


 ・[天恵:成長:LvUPによる成長率の上昇、取得経験値率の上昇、成長速度5倍]


 ・[天呪:不滅:このスキルを持ち死んだものは魂ごと消滅する。自動取得能力Lv1「自己治癒力Ⅹ」2「治癒Ⅹ」3「不老不死」4「楽園Ⅹ」]


――――――――――――――


 俺は思った。


 あいつらマジでなにしてくれてんの? と。


 俺が死ぬときに会えるとするなら一発くらい殴ってもいいよね。


 まぁ、死ねないんだけどさ。



 あの時、勝手に決めていいなんて言わないで、そこそこで使える能力にしていたらと思うと、今から過去に戻って自分を殴ってやりたいわ。ちくしょう……



 まぁ、ウジウジしてても始まらないし、とりあえず行動開始だな!!



 あ、そういや、なにもできないから俺のステータスみてたんだったわ…………ガクッ

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