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この異世界は優しすぎ!?  作者: 爈嚌祁 恵
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24 世界の価値

 俺はベルさんとの話を終え、部屋の扉の前で二ティに報告を受けていた。


〔高魔力検知。何かいますね〕

〔魔力? 探知にかかったのはそれだけ?〕

〔えぇ、形もなにもわかりません、認識阻害魔法でしょう〕


 扉の前にきてようやく探知できたと告げたニティは少し焦って……ないな。

 まぁ、深く気にしすぎるのも視野が狭くなるからな。冷静に行こう。

 扉の取手に手をかけ、慎重に開ける。


「お待ちしておりました、櫓実様」


 扉を開けてマズメに入ったのは男性。真っ黒いタキシードを着て、懐中時計を片手に持っている。そして、顔にはオペラの仮面を着けていた。


 一旦ドアを閉めた。


 オーケー状況を整理しよう。


 前に?男と名付けた奴がいたな。あいつはオペラ仮面は付けてなかった。ただふざけた野郎だったよな。


 それはいい、置いといて。


 じゃあ、あれは誰だ? 俺の名前を知っていた。ウナが情報を流した? まぁ、それはないだろう。あれでいて正義感は強いしな。じゃあ、何だ? 俺は知り合いに名前を流したことはない、最近でも酔った覚えもない。つまりあいつはこの世界の者ではない。とすると何のために俺に接触を? 考えても思いつかねぇ。取り敢えず戻るしかないか。


「あっははは、そうでしたか~! 確かにそれは災難でしたね~」

「そうなんですよ、ミリアスさんったら困りものでしょう?」

「ミリアスさんももう少し鋭くなってもらいたいですよぉ」

「仕方がない御人ですねぇ~ミリアスさんも~」


 部屋に入ると、いつの間にか戻ってきていたレアリとエルがいた。

 いつ戻ってきてたんだ……俺、扉の前にいたはずなのに……


〔さっき、ミリィが考え事をしてる間ですね〕

〔教えてくれても……〕

〔……意味なかったと思います〕

〔……はい。確かに〕


「あぁ~ミリアスさぁ~ん! 先程はどうしたのかと思いましたよ! お部屋にお戻りになるなり、すぐに顔を青くして出て行かれましたからぁ~! 体調の方は大丈夫のようにございますねぇ~! よかったよかったぁ~!」

「なにがよかったよかっただよ……」

「ミリアスさん、私出ていきますか?」

「できればお願いしたいところですが」

「いえ、それには及びませんよぉ~、っほい」


 オペラの男は軽快な口調とともに指を鳴らした。すると、それまで居たおれの部屋ではなく、何処かお城の応接間のような雰囲気漂わせている部屋のソファーの上に転移させられた。もちろん着地は飛行魔術でゆっくり着地したので、お尻に被害はない。


「なんのつもりですか?」


 ソファーの前にあった机のティーポットから紅茶のようなものを入れ、お菓子を進めてきたオペラ男にすこし強めの口調で言った。


「おやおやぁ~そんな怖い顔しないでくださいよぉ~、今回はあくまで、謝罪のためにお越しいただいたのですからぁ~」

「……謝罪、というなら、転移などしないでいただきたかったですね」

「ごもっともですね、その点に関しましてはお言葉もございません」


 あっさり、認めやがった。こういった人をおちょくる様な喋りをする奴は大抵、裏表があるんだよな。


「では、気分も落ち着いたところで、自己紹介といきましょうか」

「そっちはこっちのことよく知ってるくせにな」

「そうは言いましても形式美というものがございます故」

「ふん」

「……では失礼して、私、世界運営委員会異世界転生管理局局長を勤めております、蒔演(まきえ) 慎士(しんじ)と申します。以後お見知りおきを」


 日本人だった。まぁ、確かにそうかなぁ~とは思ってた。黒髪はこっちの世界では珍しいと聞くし、何より、タキシードにオペラの仮面なんて、見たこともないぞ。そんな彼が俺に謝罪、というと、何だ? 何かあったか? いや、ありすぎてどれが原因かわからないだけか。


「この度は誠に申し訳ございませんでした。私共の手違いで櫓実様をこの世界へと飛ばしてしまったことを、私共一同深くお詫び申し上げます。つきましては、私共より、ささやかながら特典を差し上げたいと思っております」


 ほう、そうきたか、実は大抵のものは手に入れてる俺だぞ? 喜べるようなものを貰わなければ特典の意味がないよな。


「……はどうでしょう?」


 ん? 今なんか聞き間違えたかな?


「ですから、この世界の半分を貴方の差し上げましょう、と言っているのですが」

「貴方実は魔王ですね?」

「いぃえ? 違いますよ?」

「いや! 世界の半分って! どこの魔王ですか!?」

「え、えぇ、と言っても、半分の土地を差し上げるわけではありませんよ?」


 ん? 土地をもらえるわけじゃない? それはどういう? 地位的な? 世界の半分を埋め尽くすほどの金とか? 物理的なことではないと申すか? 小僧


「……すごく失礼なことを考えていらっしゃるようですねぇ……」

「と言われましてもね」

「えぇ、ですから、話は最後まで聞いてください」


 世界の半分、と言っても、それは土地などの物理的なものではなく、この世界のシステムに関連することだそうだ、この世界はゲームのような者で、ステータスというものがあり、それを認識できるのは転移・転生者のみだけだそうだ。それと、この世界には転生者はただ一人、俺しかいないらしい。まぁ、それは別にどうでもいいや。んで、重要なのは。実はニティの持っている能力[干渉]にて、同じようなことができる。

 つまり、正直、いらない。システムとか、どうでもいいし、別に世界を思い通りに動かしたいわけでもない。



「その話を踏まえたうえで、その特典とやらは結構です。と答えます」


「…………それはまたどうして?」


「おや? わからないんですか?」


「えぇ、私共も全知ではございません故」


「そうですね、一つ理由を挙げるとするならば……それは、私にとってメリットがあるから、ですね」


「……は? それは、普通のことではないのですか?」


「えぇ、普通であれば嬉しいに越したことはありませんね」


「では、どうして?」


「ご自分で考えてくださいな」


「そ、そう、ですねぇ……デメリットが大きい?」


「デメリットが大きいんですねぇ~」


「こ、これはあくまで私の意見ですから」


「焦ってますね? そんなに私に特典を受け取らせたいんですか」


「そ、そんなことはありません」


「蒔演さん、いけませんよ、話しているときに注意を向けなければならないのは背後ですよっ!!」



 俺の後ろ、殺気を隠し、近づいて来ていたのは、アサシンだろうか? 魔力を消し、五感を強化していても気づかせない、その技術はこの世界ではとても脅威だろう。気がついたら、首が飛んでいた。とかもない話ではないのだろう。だが、それでも、俺には届かない。なんせ、熱源感知、予知、空間把握のそれらがあるのだ。どこに居ようと警戒している俺には死角はない。


〔警戒しているのはミリィではなく私ですけどね〕


 冷静なツッコミありがとう。


「こんな、刃物で、俺の首を落とせるとでも思っていたんですか」


 アサシンの後ろに回り込んだ俺は懐に隠してあったナイフをとり、軽く振ってみる。

 すると、振った先の壁に亀裂が入り込んだ。


「こ、これは、ちょっとやばかったかもしれませんね」


〔いいえ、ミリィ、これはあなたが身体強化した上での瞬速移動状態を切って居ないから起きたのですよ……〕


「……てへぺろ」


 周囲は驚愕していた。見た目十五歳と思われる少年が、組織一の隠密性を持ったアサシンに気付き、更には速度、腕力、どちらでも上回られているという事実に。どうしようもない恐怖を抱いているものも少なくないだろう。


「んで、さっきの話に戻りますが」

「は、はい」

「わたし、その特典貰うかと思います」

「…………はい? ですが先程は」

「あぁ、あれはただ単に、その特典についてどんな危険性があるのか知りたかっただけですよ」

「……え? 私共は何も」

「あぁ、知らないんですか、俺、ある程度は心を読めるんですよ」

「…………え」

「はい、そういうわけです」

「こ、ここはどこですか?」

「日本の東京の地下千五百mの位置にある管理局の応接間ですね」

「……」

「殺せますかね?」

「無理でしょう、貴方は強すぎる。武力だけでなく、知力がある」

「これでも、俺は不死ですから、武力とか、知力とか関係ないらしいですよ?」

「いいえ、それはこのせかいでは」

「ちゃんと通用しますよ、呪いは本人にしか解けませんから」



 ――そうして俺は世界の半分を手に入れた。



 もとの部屋に戻り、蒔演さんに話しかけられた


「あぁ、そうでした、これを……私はこれで失礼しますね、では」

「あぁ、はい」

「時間は三秒くらいしかたってないのでご心配なく~」


 渡されたのは彼の持つ懐中時計だ、銀色の星のレリーフが刻まれた時計だそうだ、どの世界でも、二十四時間対応らしい。しかも、時間は正確だから、めちゃくちゃ便利である。

 しかし、時を止めたりはできないようである。懐中時計だぞ! なんで止められないんだ! 


 そういえば最近能力成長のログが出てきてないよな。


〔私が管理しているので、お知らせしなくてもいいかと〕

〔なるほど、それならいいか〕


 という訳で、特典の確認。


 ――――――――――――――――――

【ステータス】

 ミリアス=エグノス(空綺麗 櫓実) 少年 15歳 Lv45

 ・体力:7875

 ・筋力:7335

 ・魔力:7290

 ・耐性:6840

 ・敏捷:7425


【スキル】

 [固有能力(ユニークスキル)交換(チェンジ)Ⅲ]

 [天恵:成長(アグメンタム)

 [天呪:不滅(ネバーエンド)Ⅳ]

 [神術(マヌアート)心眼(コルディソクルス)


 [探知Ⅷ][遮断Ⅷ][武術Ⅳ][投擲Ⅳ]

 [五感超強化Ⅱ][身体超強化Ⅳ][瞬速移動Ⅳ]

 [高速思考Ⅶ][並列思考Ⅹ][並列意思Ⅲ]

 [空間把握Ⅹ][立体機動Ⅷ][高速演算Ⅷ]

 [追跡Ⅶ][推理Ⅵ][予知Ⅵ][演舞Ⅴ]

 [交渉Ⅴ][脅迫Ⅳ][読心Ⅴ][賢者Ⅴ]

 [治療Ⅶ][治癒Ⅹ][自己治癒力Ⅹ][楽園(エデン)Ⅹ]

 [魔法適性:魔][式神][従魔]

 [持続][豪力][強靭][金剛][瞬速]

 [禁忌Ⅶ][聖域Ⅶ][永眠Ⅹ][覚醒Ⅹ]

 [言語理解Ⅹ][礼儀作法Ⅹ][不老不死(ノー・デッド・ライフ)

 [干渉][メニュー][ヘルプ][概念]


【称号】

『転生者』『読書家』『魔術師』『受神』

能力収集者(スキルコレクター)』『称号収集者(ネームコレクター)』『舞踏家』

傍観者(スタンダー)』『全知』『探偵』『心解者(ココロヲミルモノ)

睡眠之王(ハル)』『永眠の支配者』『覚醒の支配者』

賢明者(カシコキモノ)』『急成長』『強者』『ゴブリン殺し(ゴブリンスレイヤー)


【特典】

〈世界の懐中時計〉〈世界の権能〉

 ――――――――――――――――――


 あれ? 禁忌とか聖域ってこんなに高かったっけ? 


 覚えていないので取り敢えず、今日は寝ることにした。


「あ、二人共、ベッド使っていいよ、俺は布団があるから」

「え? あれ? マスクさんは?」

「ふぇ? いなくなっちゃいました?」

「か、帰ったよ」

「「そうですかぁ」」


 なんだかんだで、蒔演さんはよくわからないひとだったな。掴みどころのない正確というかなんというか、まぁ、そんなことより、今日は疲れたし、さっさと布団を敷いて寝よう。

蒔「……(そんなことって)」


ア「……(俺のナイフあんな切れるはずない)」


悲しみを抱え人は成長するものだ。あ、櫓実は除いて

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