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この異世界は優しすぎ!?  作者: 爈嚌祁 恵
19/57

19 冒険の心

「あ、レアリ」

「こんにちは、、ウナさん」

「どうも」


 どうやら、レアリとははソフィーナのことのようだが、ウナはソフィ……いや、レアリのことを知っているようであった。ただその態度から、ほかの精霊とは違いあまり仲が良さそうには見えない。本当になにがあったんだ?


「今日は何かのクエストですか?」

「あ、今日は僕の初クエなんですよ」

「初めての……薬草採取でしたら場所案内致しますが?」


 なんと、レアリは薬草が多く生えているところまで案内してくれるようだ、だが、残念ながら俺たちの目的はそこではないのだ。


「あぁ、いえ、僕らがギルドに行った時には草クエ取られちゃってて、今日は討伐クエストなんですよ」

「あらら、初めてで討伐クエストですか……ん? ですが、コボルトなら逆じゃないですか?」

「コボルト?」


 ん? コボルト? たしか、俺たちが討伐するのはゴブリンだったよな? と考えていると、その問にはウナが答えてくれた。


「ミリアスはEランク討伐を受けた」

「え? ……初めてなのにですか?」


 レアリはウナがそう端的に言ったのを聞くと驚いたような顔をした。


「はい、ギルドでは受けられると言われましたので」

「えぇ、まぁ、確かに、受けることは出来ますよ? ですが、普通は自分より上位のランクは受けませんからね」

「まぁ、Fランクもありましたがね」

「あ、なるほど! それで、ウナさんを連れているわけですね」


 すると、レアリは何かに納得がいったのかウナに向かって笑顔を向けた。


「あなたも仲間を見つけたのですね」


 ん? この子何か勘違いしてないか? そう思った矢先にウナがキチンと口を開いた。


「仲間は否定しない」

「そうでしょう」

「でも、レアリは勘違いしてる」

「ん? どういうことですか?」


 ん? ウナ? それだと俺も勘違いしていそうなんだが?


「ミリアスとはもはや家族」

「…………へ? え? はぇ?」


 いや、確かに、家族と言われればそうではないとは言いにくいのだが。それでも、今の言い方には悪意があるぞ。ほら、レアリがなんだか、勘違いして、顔を赤くしているじゃないか。


「レアリ、僕はただ、ウナの家の孤児院のようなところに住んでるだけだからね?」

「ふぇ? ……はっ! なるほど! あ、あぁ! なるほどです!」

「理解してもらえたなら何より」



「ですが、その部分を抜きにしても、確かにウナさんを連れてきますよね」


 森に入る前に準備をしていると、レアリがそんなことを言ってきた。俺にはその意味がわからなかったので、つい聞き返してしまった。


「ん? どういうこと?」

「あれ? まだ聞いてないんですか?」


 なんだ? ウナは何か隠しているのか? まぁ、でも、特に教えていないということは、知らないからといって、何かなるものではないのだろう。ただ、レアリからこのことを聞いてしまった為に興味を持ってしまった。


「ウナ?」

「わかった、教える」


 曰く、転生者には転生特典として、精霊の加護が与えられているようだ。その加護の効果で精霊たちとの契約がより強くなるらしい。契約が強くなれば、こちらは高度な魔法が使えるようになったり、精霊からの支援を受けることが出来るなど、メリットがさまざまあるようで、精霊の方も、そちらで何かしらのメリットはあるらしい。ただ、俺はそんな加護、ステータス欄で見たことはない。これはおそらく、メリーあたりが一枚噛んでいそうな気がする。これは勘だが、なんとなくそんな気がする。


 そして、ここに精霊が一人。


 ……いいことを思いついてしまった。


「なぁ、レアリ、僕と契約してみませんか?」

「え?」


 彼女の顔が一瞬戸惑いを浮かべ、その後、笑顔を向けた。


「ですから、先程もお伝えしたとおり、適性が違うのですよ」

「適性が違うから無理なのですか?」

「えぇ、他にもいくつ条件はありますが」

「じゃあ、尚更、僕と契約したほうがいいですね」

「それはどういう? …………」


 レアリは呆れ顔と困り顔を混ぜたかのような顔をしてこちらを少し睨んできた。


〔称号[大賢者]の干渉に成功しました〕

〔じゃあ、魔法適正とステータスだけ開示しよう〕

〔わかりました〕


(さて、この能力干渉にはどう出るかな?)


 表情は変えず、ただ冷静に彼女を見つめていると、彼女の顔が驚愕のそれへと変わっていった。

 おそらく、今まで、このような干渉系能力には触れてこなかったのだろう。確かに、[干渉]とは随分チートな気がする。俺もビビる。


「っ貴方は、何者ですか?」

「ただの冒険者ですが?」

「そうでしょうとも」


 この表情いいな。自身のサディスティックな部分が刺激される。あ、いや、そんなことより。


「どうしますか?」


 催促のお声を掛けて見ると、彼女は意外とすぐに音を上げた。


「……いいでしょう」

「本当ですか!」

「えぇ、ですが、今日の契約はあくまで、仮契約です! 今日一日は契約に応じますが、本契約に移るかどうかは今日この一日で判断させていただきます!」


 なるほど、確かに、出会って間もない人間、しかも、異世界人に、契約してください! と頼まれても、俺なら、ご丁寧のお帰りいただく。おそらく、彼女も、そんなところを今日一日で見極めようということだろう。納得である。


「わかりました。そうしましょう」

「では、一応仮契約とはいえ、魔力はいただきますよ?」

「どうぞ」


 総答えた瞬間、身体から魔力が抜ける脱力感を感じた。これがまた、意外と気持ちいいのだ。だが、その気持ち良さも、ほんの数瞬。いつの間にか終わっていた。


「ステータスは偽りではないのですね」

「えぇ、そのように思えますが」

「仮契約した今なら、貴方の力の片鱗が理解できます。おそらく私が束になっても貴方には意味のないことなのでしょうね」

「いえいえ、何を言っているんですか? 私だって、無敵じゃないですし、第一にあなたより貧弱な人間ですよ?」

「それこそ、冗談ですね」


 まぁ、確かに、俺には[不老不死]があるから、意味のないことといえば嘘になる。ここは素直に認めるとしよう。


「えぇ、まぁ、意味はないでしょうね。ですが、私の服は無敵ではないのですよ。傷を受ければ、社会的に死にます」

「ま、まぁ、確かに」

「そうでしょう」


 ということで、取り敢えずは、一息が付けそうだ。


 休憩を挟んで、俺たちは森の中へと入ることにした。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 森に入り、とりあえずの進行方向を決めることにした。

 

 休憩中に確認した、地図ではこの森の中央より、南側に大きなゴブリンの巣が確認できているようで、こちらは今の俺たちではっ無理だろうとのことであった。となると、北側か東側かの選択になりそうだただ、東側は街から離れてしまうので、遠慮したいところではある。

 となると、北側しか残っていないが、ここで少し問題が。


〔ここより北北東の位置にて、戦闘が起こっています〕


 ここよりってことは、大体、北側のあたりなのだが、底に向かうというのはちょっと気が引けるというものだ。


〔戦闘は魔物同士ですね〕

〔ん? 魔物同士?〕

〔えぇ〕


 となるとあれか、イベントか。魔物が魔物に襲われてるとか完全にイベントじゃん。一対多の蹂躙戦なのだろう。


〔そうですね。ある魔物一匹に他三十匹です〕

〔おうふ、それはどうも、詰みというやつでは?〕


 まぁ、なんだかんだで、二ティとは仲が良い。少なくとも自分はそう思っている。その二ティが大きな爆弾をニコニコの笑顔で抱えていたとしてもだ。取り敢えず状況説明カモーン。


〔個体名:デッド・スライムがゴブリン、トレント軍にて、奮闘しております〕

〔わかりやすい説明をどうも〕


 要は、スライムが、ゴブリンとトレントに攻撃されてるっぽい。しかも奮闘、というくらいだから、相当なものだ。この世界ではスライムは弱くないのか?


〔そうですね。個体によりますが、あのスライムでしたら、数で押し切られてしまうでしょう〕


 そうなのか、ここで見捨てると、なんとなくだが、悔しい。自分に負けた気がするのだろうか。


〔スライムの種族は女で、今は女体に擬態しておりますね〕

〔!?〕


 これはこうしちゃいられない。すぐに向かおう。そういうことで、二人に提案だ!!


「二人共。ゴブリンと戦っているという、魔物を見つけたよ」

「ゴブリン?」

「魔物?」

「そうです、スライムが、女体に擬態して、剣やら、魔法やらを打っているようだよ」

「す、スライムですか」

「そんなのいるの?」


 早速、二人からは歌以外の目である。案外自分が信頼されていないのが、如実に感じられて、心が、存外傷ついた。


「て、敵の数はどれほどなのですか?」

「えぇ、今は三十匹ほどですね」

「三十匹!?」

「それに対して、こちらはスライムを入れて、四人です。まぁ、正直、なんとかなるかなぁ、とは考えています」

「それは根拠に基づきますか?」

「大丈夫です」

「そうですか」


 とはいえ、あまり、気を油断できるわけでは無い。何せ、数が多いのだから、こちらは連携をとっていくしかないだろう。


「どうですか?」

「ついてく」


 一番に声を上げたのはさすがだろう、ウナだった。あぁ、元々、そうだろうとは思ってはいたけどな、そして、続くのはソフィーナことレアリ。


「わかりました。行きましょう」


 彼女もまた、ついてきてくれるそうだ。彼女がいれば心強い。万が一の時はウナを連れて逃げてもらおう。精霊だし、高レベルだし、なんら問題はないはずだ。


「ありがとう、じゃあ、ひとまず、作戦を」


 そうして、目的のゴブリンの方へいく道すがらに、作戦会議を済ませた。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 近くまでいくと件のスライムが発しているのか、可愛らしい声が聞こえてきた。


「たぁっ! やぁっ! もうっ! こんなに多いなんて聞いてないよぉ!!」


 などと、愚痴をこぼしながらも、魔法を詠唱し、片手剣を振り回したりなんかしている。

 文字にしてしまえば単純なように思えるが、これが意外と大変なのだ。故に魔法剣士というのは上位職である。

 そんな彼女の見た目は、とても愛らしい。

 背の高さはおそらく百三十かそこらではないかと思われ、そんな彼女の肌は白く、ただ、異様なまでのしろさではなく、人の肌と大差ないようである。髪は水色であり、これが、ロングをまとめずストレートだ。その髪は長く、彼女の腰辺りまできていた。

 驚いたことに彼女は服を着ていたのだ。人間と同じように。

 その衣服はゴブリン達の攻撃で、ところどころ破けている。そこから見える彼女の肌はスライムなのだからつくりものなのだろうとは思うが、なんとも言えない感じがした。

 ただ、そんな思考をしているうちにもゴブリン達は行動しているのだ。


 目の前の花園より、目の前の敵だ。集中しろ。


 敵の数は、ゴブリンが仲間を呼んだのか。少しずつ増えて来ている。いまは大体四十といったところだろうか。

 やはり、大半はゴブリンが占めており、トレントなんかはあまりいないようだ。


「よし、じゃあ、ウナは左、俺は右、レアりはトレントの足止めを!」


 勢いよく飛び出し、後ろの二人に指示を飛ばす。

 自分はまともな戦闘はこれが初めてだというのに、何故、指揮を取っているのだろうか? 甚だ疑問である。

 それでもすぐさま、答えてくれる二人であった。


「わかった」

「はいっ!」


 ウナにたんだ左側は魔法などをあまり使わないとされている、近接系のソルジャーやナイトなどのゴブリンが多かったので、そちらは任せることにした。そして、この中で、一番レベルの高いレアりにはトレントの面倒を見てもらう。こちらも、彼女からすれば朝飯前、といったところだろう。

 そして、一番の問題。右にいるのが……


「グオォォォァアア」


――――――――――――――――――

【ステータス】

 ゴブリン・ジェネラル 将軍 34 Lv42

 ・体力:324

 ・筋力:345

 ・魔力:176

 ・耐性:576

 ・敏捷:123


【スキル】

 [独自能力(オリジナルスキル)統帥(ジェネラる)


 [剣術Ⅹ][武術Ⅴ][身体強化Ⅲ]

 [強力][強固]


【称号】

剣士(ソードマン)』『武士(サムライ)』『統率者(スベルモノ)

――――――――――――――――――


 意外とこの勝負、負けるかもしれない。

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