手
「…………?」
敬壱は目を開けた。
目の前には相変わらず、自分の顔があった。
しかし、なんだろう。
なにかが違う。
そうだ。
さっきまでの痛みが、どこにもない。
「……?」
敬壱は首を捩って今捕まれているはずの右手を見た。
しかし。
敬壱の、右手はどこにもなかった。
「……!?」
影も不審な顔をしていた。
顔が掴んでいるのはどうみても。
「……青い……ぬいぐるみ……?」
ぬいぐるみの手、だった。
まさか……?
敬壱は恐る恐る、右手を握りしめた。
もぎゅ……
ぬいぐるみの手が、拳を作った。
「ーー???」
もぎゅ、もぎゅ、と何度か握って開いてを繰り返す。
そして、確信した。
「これ……俺の手か!?」
『きしししし』
かぼちゃ頭が不気味な声で笑った。
『これが方法サ』
「はあ!?」
『あとは君次第だヨ』
ほら、戦いたまえよ、とばかりにかぼちゃ頭が手を仰いだ。
「何……言って……」
状況が読めない。そして未だピンチなことに変わりはないのだが……。
「!?」
ブン、と風を切る音がした。
『…………』
影の拳が飛んでくる。
「ひっ!」
それは顔面に。
直撃、した。
しかし。
「…………」
痛く、ない……?
敬壱は目をぱちくりさせた。
拳が顔にめり込んだ感触はあった。
しかし、もぎゅ、という音がしただけで。敬壱にはなんのダメージもなかった。
『???』
影も何が起きているのかわかっていない様子だ。
『サア!今のうちダ!』
かぼちゃ頭の声にハッとする。
「くっ……このおっ!!」
『!』
敬壱は力任せに影を引き離し、影の下から這い出た。
「っ……!」
とにかく、逃げねば!
敬壱は走り出した。




