取引
『やったぞ……!やった……!』
「か……ぁ………っ」
『ついに俺が……オリジナルだ……!』
影が笑う。
いや。
"それ"は最早、影ではない。
『……安心しろよ。お前の代わりに、俺が現実世界で生きてやる』
「…………」
『選択も。結果も。もう、お前には、必要ないんだ』
体が沈んでいく。
どこか、得たいの知れないものの中へ。
自分の意識の向こうへ、溶け出していく。
意識が、飛ぶ。
ああ。
俺はこのまま、殺される。
消える。
自分が、消えていく……。
その、時だった。
『それでいいのかイ?』
「!」
あの、声がした。
「!!」
敬壱はカッと目を見開いた。
覆い被さる自分の姿越しに見える、その姿。
なんとも不思議な、"ヤツ"がいた。
『それで終わり?本当ニ?』
「…………」
誰だお前は、と言おうとしたが、生憎、声が出ない。
『君がそう選ぶなら、仕方がないけどサ』
かぼちゃの頭……。まるでハロウィンのランタンだ。
『……諦めちゃウ?』
「…………」
『このまま、消えちゃうのかイ?』
「……!……、さ、せ、るか……っ」
敬壱は、ぐっと体に力を入れた。
消えて……消されてたまるかよ!
敬壱は右手をぎゅっと握りこんだ。
死ぬものか!
まだ死にたくない!
震える拳を目の前の"自分"に向かって振り上げる。
しかし。
『……ふん』
その手は、あっさりと払いのけられてしまった。
「!!」
『そんなもんで……逃げられるとでも思ってんのかよ』
「ーー!ぐああああああ!!」
"影"が敬壱の右腕をギリギリと締め上げた。
『往生際の悪いやつ……って、俺か』
影がクスクスと笑った。
どうしよう。
どうしたら、抜け出せる……?
待っているのは消滅だ。
「……っ、どうすれば、いいんだよお!!」
ーー簡単なことサ。
また、"ヤツ"だ。
『取引、しよウ』
「!?」
『そしたラ、"方法"をあげるヨ』
選択肢はない。
敬壱は、間髪入れずに答えた。
「わかったよ!!」
『…………』
「なんでも言うことを聞く!だから早く!!」
『……取引、成立だネ』
そう言うと、かぼちゃ頭は妖しく光り出した。
「…………!?」
目の前が、真っ白に染まる。
敬壱は思わず、目を閉じた。




