アルバム
「!」
突然、目が覚めた。
「…………」
カーテンの隙間から射し込む光に目をしばたたかせながら、敬壱は不思議に思った。
何故突然、夢から醒めたのだろうか。
夢の世界から戻るには、いつもなら、ある儀式があるのだ。
そういえば、何か……と敬壱が思い出しかけたところで、部屋の扉の向こう側から声がした。
「敬壱!敬壱ー?」
やらたに大きな声。薄いドアが無遠慮に叩かれる。
「ねえ敬壱!起きてるー?」
「んー……」
敬壱は仕方なしに返事をした。
「起きてるよ」
「あら!珍しいこともあるもんだわね」
さんざん大声で呼び掛けておいてそれか、と敬壱は少しうんざりした。
「で?……何か用なの、母さん」
相手は、敬壱の母だった。
「あんたに手紙が来てるのよ」
「……手紙?」
自分宛の手紙など、いつぶりであろうか。まだぼんやりした頭で思い返したが、とんと心当たりがなかった。
「何かの案内よ。……えーと。あら!同窓会の案内だって」
「…………」
敬壱の背中に、嫌な汗が伝う。
「西森高校平成19年度卒業生、だって。あんた何組だったっけ?」
敬壱の返事を聞くでもなく、母親はバタバタとスリッパをはたたかせながら、敬壱の部屋の前から消えていった。
「…………」
敬壱はベッドから起きかけの中途半端な体勢のまま、まんじりともせず部屋の片隅をじっと見ていた。
敬壱が見ていたのは部屋の隅の、狭いクローゼットだった。
その奥に雑に仕舞われている、敬壱の、高校の卒業アルバム。
ただの一度もろくに開くこと無く。とにかく視界に入らないよう無意識にそこに投げ込んであった。
「…………」
ざざ……、と浮かび上がってくる何か。
「……っ」
圭壱は布団を掴むと、起こしかけていた体を再びベッドへと戻した。




