3/10
優しい世界
コルトガバメント。
砂浜から拾い上げたそれを、敬壱はつつ、と指先で撫でた。
冷たく、固い。手の中には、確かな重さと、感触がある。
「……完璧、だ」
敬壱はふ、と満足そうに息をついた。
しかし勿論。敬壱は、銃など本物は見たことも、触ったこともない。
この銃も、本物とは実際には、かけ離れているのだろう。
彼が今、手に持っている銃。その感触は、敬壱がネットや資料を見て、感じたそのまま。
それがこの夢の世界で、しっかりと反映されている。
この銃もまた、彼の、夢なのだ。
この景色も。音や、匂い。感覚すらも。
全て、彼の頭のなかで形作られたものだ。
「…………」
敬壱は、拳銃を構えた。
遥か彼方、先の見えない水平線の、向こう側に。
「……っ」
軽く息を止め、そのまま、見よう見まねで、銃の引き金を、引いた。
数発撃って、敬壱は一旦ら手を止めた。
耳が痛い。手がじんじんと痺れていた。
「……すげえ」
銃はほぼ、パーフェクトに敬壱の夢に存在している。
この感覚。
現実世界では到底味わえない、経験。
「すげえ……すげえよ、これ!」
夢は、敬壱に優しい。
現実よりも。ずっと、ずっと。
「……本当かナ?」




